・標題の本は,中谷巌という政府の委員会の中枢部にもいた経済学者が書かれたものです.(集英社インターナショナル.2008年12月20日第一刷)出版されてすぐ読みたかったのですが,何せ368ページあるので,なかなか読み出せず,今回東京への行き帰りの「のぞみ」の中で読めました.帯には「構造改革の急先鋒であった著者が記す「懺悔の書」」となっています.私は,ある一つのことがこの中に記載されているかどうか確認したくて買いましたが,それは,さておいて,面白い.そして,私が日頃考えていること/行っていることが,的外れでないという確認にもなりました.(この本が,全て正しいと言うわけではないというのは,重々承知.ただ,自分以外の物差しで確認したかった)
・面白いところ,紹介したいところが,いっぱいありすぎて,困るのですが,若干紹介.
基本的にこの本は,アンチ・グローバル資本主義/市場経済万能主義の書です.まえがきで,「グローバル資本」を「モンスター」と書いています.これは,マルクス・エンゲルスの共産党宣言の出だし部分のパロディー(オマージュ?)ですね.そして,終章の標題が,「今こそ「モンスター」に鎖を」となっております.
実は,私近代経済学を「うさんくさいも」のと思っておりました.この本から引用すると:
経済学における最も重要な前提の一つは,「完全競争」という考えである.「完全競争」とは以下の四つの条件が同時に満たされている状態のことである.
①経済主体の多様性
②財の同質性
③情報の完全性
④企業の参入・退出の自由性
以上引用終わり
私,この前提条件をもとに組み立てられる経済学というモノが「うさんくさい」と以前より思っていました.特に③なんか,あり得ないと思っていました.そして,この本の筆者もそれを認めています.(引用「現実にはほとんど充足されることがない.」)あと,筆者は,厚生経済学の紹介をしており,その仮定である「公正な政治」に言及し,「もっともらしい欺瞞」あるいは「虚妄」がある,と述べています.他のページでは,近代経済学の前提となっている様々な仮説の「うさんくささ」という表現もあります.だいたい,ここらを読んでみると,経済学のド素人の私の考えも間違っていなかったと思うのでした.そもそも,いかに緻密な論理や難しい数式を用いても,誤った前提の元に展開された議論は,間違いでしょう.
・長くなるので,も一つだけ引用して,今日はここまでとします.
・・・日本がすでに世界有数の貧困大国になていることは,動かしがたい事実である.・・・それにもかかわらず多くの良識ある日本人が,わが国の「惨状」を正しく認識していないーこのことこそが実は大きな問題なのではないだろうか.
だが,このような認識の差,パーセプション・ギャップが起きるのは,ある意味,仕方がないことなのだ.
格差社会の怖いところは,社会が格差によって分断されてしまうと,もはや分断の実態そのものが「見えないもの」になってしまうことにある.
以上引用したことは,以前ご紹介した湯浅誠著『反貧困』という本の中にあった,「富める者と貧しい者が両極端に分化した不平等な私たちの社会は,いとも不思議な眼鏡を生み出し,経済的に上位にある者の目には,貧しい人々の姿はほとんど映らない仕組みになっている.貧困層のほうから富裕層を,たとえばテレビとか雑誌の表紙とかで,簡単に見ることができるのに,富裕層が貧困層を見ることはめったにない.たとえどこか公共の場所で見かけたとしても,自分が何を見ているのかを自覚することはほとんどない」という著述と合致しますね.わたしは,時々当院の職員さんに,自分たちの労働条件と,他の労働者も同じだと思ってはいけない.当院はまだ,恵まれているということ(実際労働局から「ファミリー・フレンドリー企業表彰」をもらっている)を認識していないといけない,と言っていますが,どれだけ分かってくれているやら.
今日は当直です.重症の患者さんが,搬入されませんように.
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我々がどう考えようが、資本主義で大もうけをたくらむ連中は(一時バブル崩壊で減っても)次から次へと出てきます。
彼らと対峙するよりも、彼らとギブアンドテイクに持ち込むことが現実的だと思います。
ビル・ゲイツも自分の愚かさに気づき、今では何億ドルもの基金を恵まれない人たちのために作っています。
少なくとも食糧もエネルギーも外貨を稼いで外貨で外国から輸入しなければならないこの国は。
当直お疲れ様です。モンスターが来ないことを祈っています。
>Paul Carpenterさま、コメントありがとうございます。
この本に書いていましたが、近江商人の「三方よし」=売り手よし、買い手よし、世間よしとなればよいと思います。
当直でモンスターは来ませんでしたが、朝一心肺停止で起こされました。
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