・私は,月に2回産業医学科という外来を行っています.そこでは主にじん肺と振動障害の患者さんを診ています.付いてくれる看護師さんや事務の人に分かりやすい産業医学に関するパンフレットを作ろう,作ろうと思ってできていません.(固有のスタッフはおらず,全て掛け持ちの方達なので)→ボチボチ,このブログで下書きをしていきます.まずは,頸肩腕障害について.(ここでは,職業性)
・職業性頸肩腕障害(その筋では,頸腕=ケイワンと略され,何も知らない人は,格闘技K1と間違う)の詳しい定義・診断基準・病像は,以下の雑誌に述べられています.
日本産業衛生学雑誌 2007年 第49巻 第2号 A13~A32頁
・まずは,その定義(日本産業衛生学会頸肩腕障害研究会による)
頸肩腕障害は, 作業態様に関わる負荷が上肢系の筋骨格系組織に作用することにより生ずる機能的または器質的障害である.
何とも,あっさりして,分かったような分からないような定義です.(私の主観)そのため,これに続いて,用語の解説が長く続きます.以下一部抜粋です.
1)頸肩腕障害は,上肢系作業関連筋骨格系障害(別称,上肢系作業関連運動器障害) に該当する. 即ち, 作業態様に関わる負荷が上肢系の筋骨格系組織に作用することがその発生や增悪の一要因となる多要因性の障害である.
2)用語
(1) 「作業」 は賃労働における作業を主とするが, それ以外の作業をも含む.例えば, 自宅でのコンピュータ作業,家事, 日曜大工なども含む.
(2)「作業態様」は作業の方法(やり方)を意味する.「作業態様」には作業者の上肢系における,反復動作・力の発揮一偏った姿勢(肢位) ・拘束された姿勢(肢位)などの項目が含まれる. これらの「作業態様」は作業の持続,作業と休息の比率,回復時間の不足などの「時間的要因」と密接に結びついて,生体への「作業態様に関わる負荷」を形成する.「作業態様に関わる負荷」とは,「作業態様」に「時間的要因」が結合した結果としての負荷である. 「作業態様」 はすでにその定義の一部に時間的な特性を含むが, さらに作業の速度や持続時間の長さ, 作業と休息の比率, 回復時間の不足などの「時間的要因」と結びつくことで「作業態様に関わる負荷」を形成する.「時間的要因」は負荷による生体影響の蓄積的過程を左右するため, 障害の発症上必須な要因である.
(3) 「作業態様に関わる負荷」およびその影響を変容し, 障害の発症や遷延化などに関与する要因としては,寒冷・騒音などの作業環境要因,作業編成・ストレス等を含む心理社会的要因などが挙げられる.一方,体力・健康状態などの個人的な要因によって作業要因の影響の大きさが変化する場合もある.
(4)「上肢系」とは後頭部,頸部,肩甲帯,上背部,前胸部,上腕,前腕,手,手指などを含む部位である.
(5)「筋骨格系組識」とは筋, 確, 確鞘,靭帯,骨,関節,神経などの組織を意味する.
(6)「生ずる」には, (障害が)「発生すること」および「増悪すること」が含まれる.
(7) 「頸肩腕障害」の表記については, 頸肩腕症候群による名称や頸肩腕障害研究会において 「頸」 が使用されてきた経緯および関連する行政上の文書において 「頸」が使用されている状況を考慮し,「頸」の文字を使用する.ただし,略字である「頚」を使用した場合においても,本障害に関する定義の概念は同一であり, 略字の使用を否定するものではない.
3) 本障害は作業関連性のある上肢系筋骨格系障害のすべての非特異的障害および特異的障害を含む. 「非特異的筋骨格系障害」 については補足説明および病像の文書において詳述する. また,「特異的筋骨格系障害」とは「特定の限定された部位の障害で, 独立した臨床疾患としての診断病名を有する筋骨格系障害」 を意味する.
すなわち,頸肩腕障害(上肢系作業関連筋骨格系障害)には, 少なくとも以下に例示する多様な障害が含まれる.
非特異的障害
特異的障害 (以下の諸障害を含む)
肩腱板症候群,肩関節周囲炎,上腕骨上顆炎(外側と内側), 肘部の尺骨神経圧迫 (肘部管症候群), 橈骨神経の圧迫(橈骨管症候群),前腕・手関節部の屈筋・伸筋の腱周囲炎や腱鞘炎,de Quervain病,手根管症候群,手関節部の尺骨神経圧迫(Guyon管症候群),上肢関節(肘,手関節, CMC関節,PIP関節,DIP関節,IP関節)の変形性関節症,胸郭出口症候群,頚椎症,局所性ジストニア など
但し, 以上に例示されていない障害も今後の研究により本障害に含まれる可能性がある.
なお,振動障害のうち,肘や上肢全般の筋骨格系障書を頸肩腕障書に含める.
4) 線維筋痛症候群, 慢性疲労症候群の作業関連性についての判断を現時点では留保する. 但し, 就労者が線維筋痛症候群や, 慢性疲労症候群との診断を受けた場合であっても, 作業関連筋骨格系障害の存在を即座に否定するべきではない.
5)本障害の表記法を「頸肩腕障害(非特異的障害,特異的障害に該当する疾患名の列記)」の形式とする.すなわち,頸肩腕障害に包含される障害のうち, 対象者について該当する障害を括弧内に列記する.
例 頸肩腕障害(de Quervain病,手根管症候群).
非特異的障害と特異的障害が併存する場合は, 例えば 「頸肩腕障害(非特異的障害,手根管症候群)」の様に表記する.
また,非特異的障害のみの場合は「頸肩腕障害(非特異的障害)」 とするが, 括弧を記載しない 「頸肩腕障害」 の表記でも良いこととする.
・長い引用となりましたが,上記青字の所の疾病は,業務上疾病(いわゆる労災)となり得ると考えてよいものだということです.(と,日本産業衛生学会頸肩腕障害は考えている)
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>Paul Carpenterさま、ご質問ありがとうございます。
VDT障害を単純化すると、眼、筋骨格系、メンタルの三つの障害といえます。頸肩腕障害は、VDTによる筋骨格系障害の一つの形態と思われます。オーバラップというか、そのものというか...
VDTによって起こった頸肩腕障害も、他の仕事でおこったものも、補償は変わらないと思うのですが、その原因で補償に差があるというのは、私、寡聞にしてぞんじませんです。
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