・私とカドミウムとの「出会い」は,中学校の図書館で読んだ萩野昇著『イタイイタイ病との闘い』でした.どれだけ理解していたか,定かでありませんが,カドミウムと言えばイタイイタイ病と刻印されました.また,大学時代公害の勉強をしていて,四大公害裁判の一つとしてイタイイタイ病があり,中学時代を思い出した記憶があります.(ついでに,中学時代,別に読んだ公害関係の本の中に,自動車公害の項があり,ラルフネーダーという人物を知りました.その後アメリカ大統領選に出るなんてびっくり)
・カドミウムの曝露の仕方は,吸入(ヒュームと粉塵)と経口です.健康障害として,金属熱や肺水腫,肺気腫,肺癌,腎障害,骨軟化症等があります.
・今回カドミウムを取り上げたのは,三つ言いたいことがあるからです.
・三つのうち,一番めに書きたく、一番言いたい事は,金属熱についてです.以前どこかの記事でインフルエンザの鑑別診断として金属熱も考えましょうと書いたと思います.金属熱でこれは注意しないといけないと後から気づいたことがあるので,今回この記事を書きます.例によって私の愛用の医学書院医学大辞典から.(青色が引用)
金属ヒューム熱[metal-fume fever]
金属の小粒子を吸入することにより生ずる急性発熱性疾患であり,酸化亜鉛,銅,カドムウム,鉄,マグネシウム,マンガンなど種々の金属酸化物に暴露することにより生じる.
と言うことですが,これに続く以下のような記載が問題なのです.
症状は,暴露4~8時間後に生じ,発熱,倦怠感,筋肉痛,頭痛を起こし,白血球数は上昇する.通常,24時間~36時間以内に,症状は自然軽快する.
・この記載で問題なのは,症状は自然軽快すると書かれていますが,これは金属熱の代表的な亜鉛によるもの(亜鉛熱zinc-fume fever)についていえることで,カドミウムに関しては言えません.『中毒百科 改訂第2版』(内藤裕史著,南江堂,2001年)には以下のような記載があります.
亜鉛熱の症状は,似てはいるが,発症後12~24時間で完全になくなるのに対し,カドミウムの場合は,次第に増悪,肺水腫,肺炎にいたる.死亡は7日目くらい,致死率は15%位である.
また,『産業医学実践講座』(日本産業衛生学会近畿地方会編集,南江堂,2002年)コラムに「銀鑞熔接作業による急性カドミウムヒューム中毒」と言うのがあって,以下のように報告されています.
64歳の男性.1992年9月,本人の所有する約60坪の工場の隅で,局所及び全体換気を全く行わず,また,防塵マスクも着用せずにアセチレンガスを用いて銀ろう熔接の作業を行っていたが,その際に発生したCdヒュームに約1時間曝露した.曝露後5日目より意識混濁状態となり,高度の肺水腫にようる肺換気能障害に陥った.25日間人工呼吸器を挿菅し(ママ),意識清明となったのは曝露後40日目であった.
以上述べましたように,同じ金属熱といっても予後が大分違うので注意が必要です.
ところで,「銀ろう」(類義語:ろう接)って分かりますか?分からない人は調べましょう.
・2番目に言いたいことは,カドミウム暴露で肺気腫をおこすと言うことです.COPDの原因イコール即タバコという単純思考はやめましょう.
・3番目に言いたいことは,カドミウムは発癌物質であり,肺癌を診たらカドミウム暴露も聴きましょう.
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