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医療関係者の間で、救急、産科、小児科をはじめとする医療体制の崩壊が叫ばれて久しいですが、最終的な被害者は、重い病気で苦しむ患者さんとその家族です。
医療関係者とて、いつ何時自分自身が患者やその家族の立場になるかわかりません。特に過労死寸前の労働環境では。
重い病気を抱える人とそのご家族は、まるで迷える子羊のようです。
どこへ行ったらよいのかわからない。
行った先で、「冷たく」あしらわれる。
みてもらえない。
様々の病気で、そういう状況になってきているようです。
なぜだ。
医者のくせに、ちゃんとみんかい!
怒りが医師に向かう気持ちはよくわかります。
しかし、考えてみてください。八百屋で魚を求めても、望むような新鮮な魚は手に入りません。
どこによい魚屋があるのか、今や医療者ですら自分の分野をはずれるとよくわかりません。
専門医が不足しています。
産科だけでなく、色々な病院で、専門外来が次々に閉鎖されています。
某三次救命救急センターでは、正月早々、所長自ら当直です。
専門医にとって、勉強を続けるモチベーションを維持するのは、精神的、体力的にますます大変なことになりつつあります。
プライマリーケア医も不足しています。日本のプライマリーケア医は、専門医のバーンアウト組や高齢のドクターが多いのです。
(失礼なことを言ってすみません。私もそのうちお仲間になるかも・・・)
多くの先生方は、もともとプライマリーケアが専門ではありません。
個人の努力で何とか持っているシステムですから、その先生がいなくなれば、変わってしまいます。
プライマリーケアに高度な医療を求めても、それは無理です。
幅広く、かつ専門的になんて、不可能です。
個人の能力には限界があります。
コンビニで、シャネルを求めても、扱ってはいないでしょう。
なんでないんだ、といっても、ないものはないのです。
めったに出ないものをそろえたら、コンビにはつぶれてしまいます。
それを要求されているのが、医療機関です。
その証拠に、三次救急は、いずこも大赤字です。
日常診療でも、問診(患者さんのお話をよく聴くこと)は、一般の方が思っている以上にはるかに重要です。昔は、血液検査や画像診断なんてなかったのです。検査をすれば自動的に病名が出るわけではないのです。
しかし、年々削られてきた一回数百円の診療報酬で、何時間もかかる問診をおこなったら、病院や診療所はスタッフの人件費も出ずにつぶれてしまいます。
それに、じっと順番を待っている、他の患者さんはどうしますか。
それを無理やりやれといわれているのです。
わが国は本来かけるべき人件費を無視した診療報酬体系なのです。
金はださないが、やることはやれといわれるのです。
これは、プロフェッショナルに対する扱いではありません。
安い医療費で、それでもなんとか現場の努力で世界一の医療水準を維持してきました。
モラルが高く、なんでもきちんとしなければ気がすまない、日本人のよいところです。
しかし、「骨太の方針」で、さらに医療費が削られました。
もうむりです。需要がどんどん増えているのに、総額を削減しているのです。
桶の短い側板から、水がじゃあじゃあこぼれます。 命がなくなれば、経済活動も、文化的活動も、不可能です。
道路を作っても、通る人がいなくなります。
外国から国を守っても、皆国内の姥捨て山で死んでいきます。
本当は、99匹の元気な羊をほうっておいても、一匹の迷える子羊を助けにいくべきなのです。
「人は、たとえ全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何の得があろうか。自分の命を買い戻すのに、どんな代価を支払えようか。」(マルコによる福音書8:36-37)
まず、なにが大切か。 この国のリーダーの方たちによく考えていただきたいのです。
厚労省の試案では、今年度から産科、小児科の診療報酬を手厚くするそうです。
一見けっこうなことですが、診療報酬の伸びは0.38%。ということは、他の、かろうじてなんとか頑張っている分野を削るわけですね。
これでは、明らかに共倒れです。
外科はどうなる、内科救急はどうなる、産科と同じく無報酬のオンコールで休日夜昼なく緊急カテーテルに駆り出されているわが循環器科の同胞はどうなる?
それでも、なおかつ診療報酬の中からお金を出させて巨額のコンピュータシステムを導入させ、IT化も促進するのだそうです。
いったいどうやったら可能なのですか。
魔法の杖を一振りすれば、ITを買うお金が沸いてくるのですか。
受験戦争を勝ち抜いてきた賢い人たちの作文とは到底思えません。
欺瞞に満ちた、実効性のない、建前だけの作文にすぎません。
小学生が考えてもわかります。
ブログでぶつぶつ言っていても始まりません。有効かどうかはわかりませんが、皆さん、首相官邸や、厚労省のホームページに行って、「ご意見」を記入してみませんか。
徒労に終わるかもしれません。気は重いですが、何か行動を起こさなければ。
キーワードは、「現場からのフィードバック」です。
大本営を動かさなければ。
ホームページで「意見を聞く」というのが、ポーズだけではないことを祈ります。
それとも、日本はこれからどんどん奈落の底へ落ちていくのでしょうか。
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週明け早々暗くなってしまいました。すみません。
厳しい状況の中でも職業人としての自己実現の喜びはもちたいものです。
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コメント
コメント一覧
先生の論文に関する記事を読ませて頂いてから先生のこのブログを時々拝見させて頂くようになり、楽しく読ませて頂いています。
この国の行政組織というのは、本当に「大本営」から一歩も抜け出せていないように思います。医療行政・教育行政・年金行政など、どれをとっても惨憺たる現状です。先の大戦や金融行政のように、最後は「外圧」頼みなのでしょうか?
コメントありがとうございます。
ある工学系の先生が、「日本は成熟期から今やどんどん負の方向へ向かっているので、何をやってもムダですよ。時代の流れです。」と話されていました。
私は、個人的には日本人は真面目なので、なんとか負のスパイラルから脱出できる可能性はないのかと思っているのですが。甘いかもしれません。
病識のない人たちがいちばん怖いです。
いつから、きりぎりすばかりの国になってしまったのでしょうか。
かといって日本に学会で来られたときに知らん振りしてホテルに置き去りには出来ません。
私の家族も家族ぐるみで親切にされたからです。もてなすために自宅にお招きして 部屋を見たときのボスの顔ったら・・・
コメントありがとうございます。
私も留学時、アパートを借りるとき事務所で職業をきかれ、何も知らなかった私は、cardiologistといったら、びっくりされました。突然もみ手して、どうぞどうぞという感じになりました。
米国の循環器医は収入の桁が違ったのです。
収入はともかく、せめてQOLが欲しいですね。
日本の勤務医は、かなりベテランになってもレジデントのような暮らしです。
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