最近、医師不足に対して「臨床研修制度がその元凶である」という論調がとても強いように思います。確かに、臨床研修制度はその「引き金」の一つになったのかもしれませんが、その根本的な要因は、厚労省の「医師養成の抑制」であることは明らかです。OECD平均と比較して、人口1000人あたりの医師数は、2人とその平均3人を大きく下回っています。医師の養成は少なくとも10年を要するものであり、医師数は少なくとも10年後の日本の医療の現状を踏まえて、検討されるべきです。厚労省の予測でも、2030年には、日本の75歳以上の人口は、2200万人と予測しており、現状より1000万人増えるわけです。その医療を担うために医師がどれだけ必要か、医療内容がどのように変化するのか、などの視点です。高齢者の人口の増大は医療の需要を喚起し、かつ、その密度もとても高いものになります。当面、厚労省は医学部定員を600人ほど増やす方針を決定したそうですが、この程度の増員では、焼け石に水といった感じではないでしょうか。
もともと、この新臨床研修制度は、それまでの大学を中心としたストレート研修の矛盾を改善するために行われた制度です。それまでは、主として各科の医局に入局し、ある部分のみたけている専門医を養成する制度でした。それが、縦割り型の医療の弊害を生み、common diseaseにも対応できないという医師を養成してきました。これらを改善するために、新診療研修制度が発足したわけです。
この制度は、プログラム主義に偏ったきらいはありますが、医師の研修の場をいっきに変えることになります。総合的な臨床能力を養成するためには、大学病院が、もっとも「ふさわしくない」と、研修医から烙印をおされたわけです。それによって、大学に残る研修医は激減しました。
もう一度、ストレート研修的な研修プログラムを認めよう、大学病院に回帰させようというのは、全く、新臨床研修制度を準備してきたプロセスを踏みにじるものです。
この間、「臨床研修制度が医師不足の元凶である」という論議が多いわりには、どのような医師を養成してきたのかという中身の論議がほとんどみあたりません。私が勤務する病院も、研修医を受け入れていますが、ある部分に長けている研修医の養成には時間がかかるが、総合的という点では、私たちの時代と違って、立派な医師に成長しています。
現時点で必要なのは、どのような医師を養成してきたのかという中身の評価ではないでしょうか。この評価は、そう短時間に評価できるものではありませんが、臨床研修医を多く受け入れている臨研病院の責務と考えます。