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今年の日本における麻疹流行の総括です。
 2007-05-26 麻疹 大流行ってホント?
 2007-05-27 麻疹の誤診
 2007-05-29 麻疹流行の情報操作
 2007-05-30 麻疹は悲惨

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この春から夏にかけて診療所へ「日本でハシカが大流行してると聞いたんですが、一時帰国の際に大丈夫でしょうか?」というような問い合わせが何件かありました。国立感染症研究所感染症情報センターの流行調査の結果をみてみると5〜10年前のほうが患者数が多いので、その旨を説明していました。
麻疹流行ー1
グラフの横軸は週数(1月1日を第1週として12月31日を53週)、縦軸は一つの医療機関で1週間に診断された患者数です。今年の患者数は太線であり、過去10年間で3番目に少ない患者数です。
 
かつて日本では麻疹(はしか)は命定めの病気と言われていました。また、英語圏では麻疹(measles)は悲惨(miserable)と同じ語源と言われているように、とても重症化する病気のひとつで、その伝染力と病原性はインフルエンザよりはるかに強いのです。インフルエンザに罹患して死亡または後遺障害が残る割合は数万人に1人ですが、麻疹では1000人に1人程度です。しかもインフルエンザに対してはウイルスに作用する有効な治療薬がありますが、麻疹に対しては症状を抑えるような治療しかないので、充分な対策が必要なのです。麻疹への対策としてはワクチン接種が唯一有効な方法であり、日本国内では1966年から任意接種(有料)が導入され、1978年からは定期接種(無料)となっています。
 
日本国内における麻疹患者数はかつてより減少していますが、いまだに継続的に発症が報告されていて、充分にコントロールをされているとは言い難い状況です。最近の予防接種政策の進展により乳幼児の発生数は減少してきましたが、近年は成人での発症が問題となっているため、対応策が考えられていたところでした。そんな中で、今年の春から夏にかけて、15歳以上の麻疹患者が過去10年間で最大の流行を記録したので厚生労働省と報道機関は麻疹流行についての情報を発信したようです。
麻疹流行ー2
世界的には麻疹の制圧から集団発生の予防、排除にむけ目標が設定され、さらにはウイルスの根絶に関する議論がなされているなか、日本国内のこのような状況は決して好ましい状況とは言えません。
日本国内の麻疹患者発生をまとめると、次の様な特徴となります。
1) 年間患者数はこの10年間で明らかに減少しているものの、いまだに持続的な麻疹患者発生している。
2) 近年患者数増加傾向にある年齢群は、定期接種対象年齢を超えた群(特に成人麻疹の増加)であり、とくに20歳代前半での増加が目立つ。
3) これらの患者の多くは麻疹ワクチン未接種者であるが、接種を実施していた患者も含まれている。
 
かつては予防接種を実施すれば、一生涯にわたり予防効果があるといわれていましたが、近年ではそうではないことが明らかになってきています。
ワクチン接種者が発症しない理由としては、流行地域に在住している場合には、ウイルスに接触することで症状は出現しないけれど、免疫力を保持あるいは高める効果が期待できると考えられているからなのです。流行が頻繁におきない地域では麻疹の流行から流行までの間隔が長くなり、ワクチン接種者の免疫力が低下する傾向が見られます。また、麻疹ワクチン接種後に免疫を獲得できなかった数%の人についても流行に接することなく成人に至ることが考えられます。そのため、長く流行がない地域に麻疹ウイルスの浸入が生じた際には、年長者に麻疹の集団発生が認められることは、南北アメリカ大陸における麻疹排除に向かう歴史のなかで既に観察されてきたことなのです。麻疹ワクチン導入以降、接種率が上昇し患者数はまだまだ多いとはいえ数十年前に比べると減少傾向にある日本国内の状態において、年長児及び成人麻疹の増加の傾向が今後、認められることは十分に予想し得ることだったのです。
この春からの首都圏における麻疹流行は日本国内において麻疹制圧期の出口が見えてきたということの表れでもあるのです。
 
日本国内の麻疹の現状は、まだ麻疹制圧期を脱している状態ではなく、国内の状況の改善はもとより、国際的に見ても適切な麻疹対策をとることが重要です。
そのために今後とるべき対策として、
1) 1歳児を中心とした低年齢層での流行を減らすために、ワクチンの接種時期は生後12-15か月を標準とし、感受性者の減少をはかる。
2) 予防接種機会の増加をはかる(複数回接種の実施、日本では2006年より2回接種となりました)。
3) 麻疹と同様に風疹や流行性耳下腺炎についても同じ傾向がみられることから、英国においては成人に対するMMRの追加接種も有効であると考えられます。
 
また、すでに免疫がある人がワクチンを再接種したとしても、それによって副反応が強くなることや既に獲得されている免疫に特別問題が生じることはありませんので、心配はいりません。免疫がより強固なものになることが期待されます。
 
  予防接種情報:国立感染症研究所感染情報センター
   http://idsc.nih.go.jp/vaccine/vaccine-j.html
 
 
 
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