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8月21日に読売新聞に掲載された記事です。
積極的延命か 安らかな最期か…小さな命の終末期医療
割れる対応 親と医師悩み深く
前回の記事(延命措置を考える)で、コドモの場合は、親の意向が大きく関わるのですが、新生児の場合には、問題は非常に複雑化します。
とくに、出産前まで「順調ですよ〜♪」なんて言われていた場合には、目も当てられません (>_<)
コレばかりは経験してみないコトには理解できないと思います。(←ボクの場合は医者としてですよ)
最近は、周産期センターや、小児医療センターが整備され、命に関わるような重症なコドモは産婦人科や一般小児科から「丸投げ」されてしまう事が増えているようで、このような深刻な状況を経験できない小児科医が増えているのではないでしょうか?
病名が同じでも、合併症や症状や出産前の情報、親の考え方や家族背景など、それぞれ異なるので、対応は様々です。
医者が治療に消極的な事もありますが、親が治療を拒否する場合もあります。
(命が助かっても障害が予想されるなら死んだ方がましだという考え)
治療継続の有無ついて「そんなコトをオレ独りで決めてイイのかよ〜」などと心の中で思った事もあります。
親は冷静にはなれないし、コドモが意思表示をできないだけに、とても難しい問題だと思います。
マニュアル化なんてとってもムリなんじゃないでしょうか?(前の記事でも書いたか・・・)
そんななかで、
> 病気ごとの「治療」指針ではなく、「話し合い」の指針となったのは、
> 「病名だけで治療するかしないかが機械的に決められては困る」との
> 判断からだ。指針では、同じ病気でも病状の重さなどによって個別に
> 対応する必要があることを強調した。
> 子供の利益を最優先に、親と医師、看護師、臨床心理士ら多くの職種
> のスタッフが取り組むことを求めた。
ゆっくりと時間をかけて、個々のケースに対応できるようにしたいものです。
↓続きは記事の全文です
積極的延命か 安らかな最期か…小さな命の終末期医療
割れる対応 親と医師悩み深く
(図)
保育器が並ぶ新生児集中治療室(埼玉医大総合医療センターで)
人工呼吸器など延命措置の中止・差し控えについて、読売新聞の全国調査で56%の病院が「経験がある」と回答したが、この問題は末期がん患者や高齢者だけでなく、回復が見込めない重病の小児の場合も深刻だ。延命措置について、小さな命の声なき声をどう受け止めるか。親や医師らは重い決断を迫られている。(医療情報部 田村良彦、科学部 瀬畠義孝)
腕の中で
生まれてくる子供の心臓には、重大な障害があることが、超音波診断でわかった。胎児の全身状態が良ければ手術も可能だが、肺などにいくつもの合併症が重なり、その望みもない。現代の医療でも、救う手立てがなかった。
東日本の産科専門医療機関。「生まれても、おそらく数日の命」と医師は告げた。出産前から両親と話し合いを重ね、生後は栄養など最小限の点滴だけにとどめ、それ以上の延命措置はしないことになった。
人工呼吸器なども装着せず、両親はわが子が亡くなるまで、抱っこしたりして過ごした。「短くても、子供と家族が触れあえる時間を持つことができたのが、せめてもの救い」と医師は振り返る。
呼吸器外さず
一方、積極的に延命措置が行われる場合もある。
関東地方の小児病院では、悪性の脳幹腫瘍(しゅよう)にかかった幼児の親に、「このままでは窒息状態で亡くなる」と説明し、人工呼吸器を着ける。
どんな治療でも余命1年以内といわれる深刻な病。「子供が苦しんだり、痛がったりすることはしないで」と治療中止を求める親もいる。だが、「機械で呼吸を助けているので、着けない方が苦しい」と説得し、呼吸器は決して外さない。
「親の満足と、子供の利益は同じではない。見ている親がつらいからといって、延命措置を中止することはできない」と院長。しかし、管につながれ、顔もむくんだ末期の子の姿を見ると、「本当にこれでよいのかと悩むことがある」と心情を吐露する。
年間3000人
先天性疾患などのため、全国で年3000人余の乳幼児が、生後1年未満で亡くなる。医療の進歩などで20年前の3分の1に減ったとはいえ、助けられない命は今も少なくない。新生児集中治療室に1年以上、入院を余儀なくされている子供も100人を超えるとの調査もある。
回復の見込みがない子供への延命措置をどこまで行うか。医療機関の対応は分かれているのが現状だ。
「人工呼吸、水分補給、体温保持の三つは、どんな場合でも行う」(中部地方の小児病院)など、人工呼吸器の取り外しはしないのが一般的とみられる一方、呼吸器の取り外しを認める病院もある。
淀川キリスト教病院(大阪市)は、死が避けられない場合、病院の倫理委員会の承認などを条件に、人工呼吸器を含む延命措置の中止も可能、とした院内指針を定めている。船戸正久小児科部長は「過剰な延命措置を中止し、安らかにみとる選択肢があってもよいのではないか」と話す。
船戸部長が2002年、新生児集中治療室のある111医療機関の看護責任者に行ったアンケートでも、手術や人工透析をしないなど、「延命措置の差し控え・中止の経験がある」との回答は85%に上った。「家族が延命治療の中止を希望した場合はどう感じるか」の問いには、「そうした選択を認めても良い」「子供の状態による」との答えがともに7割前後。医療側の思いも揺れ動く。
新生児集中治療室
1000グラム未満の超低体重児や、重い病気をもって生まれた新生児を管理する。1999年の国の調査では312施設、2357床。新生児3人に対し看護師が常時1人以上など医療保険上の施設基準がある。
“声なき声”代弁する難しさ
家族とスタッフ 話し合いの指針
延命措置は、成人なら患者の意思をどう尊重するかが治療選択のカギを握るのに対し、子供、特に新生児は意思表示ができない。さらに「必ずしも親が患者(子供)の最善の利益の代弁者とは限らない」とされる点にも、新生児の延命措置の難しさがある。
田村正徳・埼玉医大総合医療センター小児科教授を班長とする厚生労働省研究班は2004年、「重い疾患を持つ新生児の家族と医療スタッフの話し合いの指針」を作成した。
病気ごとの「治療」指針ではなく、「話し合い」の指針となったのは、「病名だけで治療するかしないかが機械的に決められては困る」(田村教授)との判断からだ。
指針では、同じ病気でも病状の重さなどによって個別に対応する必要があることを強調した。子供の利益を最優先に、親と医師、看護師、臨床心理士ら多くの職種のスタッフが取り組むことを求めた。
医療現場では「具体的な治療指針ではないので、あまり意味がない」という冷めた見方もある一方、「母親の気持ちをよく知る産科の看護師が話し合いに加わるなど、指針の導入で医療スタッフの意識が変わってきた」と評価する声もある。ただ、この指針は、延命措置の中止・差し控えをした際の法的な責任を免除するものではない。
米国やカナダなどでも、小児科学会が、延命治療の中止の際は、医療者や家族が協力して意思決定する、との指針を定めている。
患者の親の立場で指針作成に加わった「18トリソミーの会」代表の桜井浩子さんは、「同じ病気でも、病院によって治療方針が異なる点も問題」と指摘する。
18トリソミーは年間数百人と見られる染色体異常による病気で、心臓などに重い障害を持つことが多い。同会の調査では、39%の親が「延命措置を行わない、と説明された」のに対し、「できる限り治療すると説明された」は32%。十分な説明もないまま、治療の差し控えの方針が示されることも少なくない。
「医療者は、親に対し、子供のために一緒に頑張ろうという姿勢を示してほしい」と話す。
重い疾患を持つ新生児の医療をめぐる話し合いの指針(抜粋)
→治療方針の決定は、「子供の最善の利益」に基づくものでなければならない。
→治療方針の決定過程においては、父母と医療スタッフとが十分な話し合いを持たなければならない。
→医療スタッフは、父母に子供の医療に関する正確な情報を速やかに提供し、わかりやすく説明しなければならない。
→生命維持治療の差し控えや中止を検討する際は、子供の治療にかかわる、できるだけ多くの医療スタッフが意見を交換するべきである。
→生命維持治療の差し控えや中止を検討する際は、父母との十分な話し合いが必要であり、医師だけでなくその他の医療スタッフが同席したうえで父母の気持ちを聞き、意思を確認する。
(2006年8月21日 読売新聞)
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