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2006.08.25 13:00 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  たける  | 推薦数 : 0

延命措置を考える

以下は6月12日から16日にかけて読売新聞の「医療ルネッサンス」で連載された記事です。

延命措置を考える
 [1]ルールなく揺れる判断(2006年6月12日)
 [2]選択肢 十分な説明を(2006年6月13日)
 [3]事前の意思 どう生かす(2006年6月14日)
 [4]1人で1回で決めない(2006年6月15日)
 [5]判断託せる代理人契約(2006年6月16日)
それ受けて、その後、書かれた記事です。
 延命の中止・差し控え…医師苦悩、重い裁量(2006年7月31日)


今週は最初の連載の反響が連載されています。
「延命 最期の選択」の反響
 (1)墓前「これでよかったよね」(2006年8月18日)
 (2)治療を決めた兄と絶縁(2006年8月21日)
 (3)治療希望したのに…(2006年8月22日)
 (4)意思表示に公正証書も(2006年8月23日)
 (5)経済的負担のしかかる(2006年8月24日)


実際には、その場になってみないと分からない、というのが結論になると思ます。
みんなで話し合うコトは必要ですが、ヒトそれぞれの価値観には違いがあり、マニュアル化なんてとってもムリです。
日本では宗教的背景がなくなりつつあるので、この先はもっと苦労するかもしれませんネ (^_^;;
いずれにしても、みんなが納得できるためには、もう少し時間的なゆとりがないと出来ませんよネ。


さて、オトナだって、こんなにタイヘンなんですが・・・
そんなコトはたまにしかないけど、コドモの場合は徹底的に考え得るできる限りの事を実施するのがほとんどです。
最近の事例では昨年の春に経験しましたが、担当医も家族も疲れ果てて、最期はお互いの話し合いを重ねながら、あうんの呼吸で・・・

ボク達のチカラではどうにもならないコトってあるんですよね。


↓続きは最初から6つの記事の全文です

【延命措置を考える】

[1]ルールなく揺れる判断 
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060612ik01.htm

 「母は、自宅で最期を迎えたいと望んでいました」

 地方都市の救急病院で、30歳代後半の医師Aさんに、80歳代の女性患者の長男は、こう訴えた。数年前の祝日のことだ。

 患者はその日、自宅で倒れ、近くの診療所に運ばれた。意識はなく、呼吸も弱い。脳障害とみられ、医師は人工呼吸器を装着し、病院に搬送した。そこで診療したのがAさんだった。

 病院に着いた時、自発呼吸はなく、瞳孔も開いていた。CT画像では、小脳から出血があり、脳幹を圧迫していた。脳幹は、呼吸や心拍などをつかさどる神経が集まる。治療のすべは、なかった。

 「長くて2、3日です」

 Aさんのこの言葉を聞いた長男は、急きょ家族会議を開き、母を自宅でみとろうと決めたのだ。

 自宅に戻っても、家族が人工呼吸器を管理することはできない。医師が自宅まで同行し、人工呼吸の処置を打ち切ることになる。

 Aさんは、そう説明し、「無理して動かさず、病院でみとりましょう」と説得した。それでも長男は「母の思いをかなえたい。家族の総意です」と譲らなかった。

 結局、Aさんが自宅まで同行し、患者を布団に寝かせ、呼吸器を外した。家族が静かに見守る中、10分後、心臓が止まった。

 患者は必ずしも延命措置をし続けることを望んでいない。回復の望みがなければ、延命措置は苦痛になるだけではないか——Aさんは、医学生時代に祖父を亡くし、そう思うようになったという。認知症で食べられなくなった祖父は、「暴れるから」と手足を縛られ、たくさんの管につながれて最期を迎えた。

 延命措置に関するルールがなく、「医師が罪に問われないためには、措置を続けるべきかもしれない。でも、最期の迎え方は人それぞれで、尊重すべきではないでしょうか」とAさんは言う。

 母を自宅でみとった長男ら家族には感謝された。ただ、この日は休日で院長がおらず、後輩の当直医と2人で、患者を帰宅させる判断をした。透明性や慎重さに欠けた、との思いも残り、後に院内などの医師に意見を求めた。

 「一度始めた処置は中止出来ない、と言い切り、家族の思いを押しとどめるべきだった」との批判の一方、「本人の望み通りにし、家族にも感謝されたのだから、医師が悩む必要はない」との声もあった。

 今年3月、富山県・射水市民病院で延命措置を巡る問題が発覚し、ルール作りを求める声が高まっている。延命措置は、どうあるべきかを考える。

 射水市民病院問題 2000〜05年に、同病院に入院中の末期のがん患者ら7人の人工呼吸器が取り外され、死亡した。同病院は「患者は50〜90歳代で、主治医の外科部長(50)が取り外しを判断した」と発表、「倫理上問題」とした。
(2006年6月12日  読売新聞)

[2]選択肢 十分な説明を 
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060613ik01.htm

 東京都北区の白岩清さん(67)は今年3月、母たまさんをみとった。アルツハイマー病を発症して10年、95歳だった。

 昨年12月、たまさんは肺炎を起こし、寝たきりになった。肺炎や骨折で歩けなくなると、アルツハイマー病の場合、特に急速に全身が衰える。

 「いずれ食べられなくなる日が来ます」

 主治医の東京ふれあい医療生協梶原診療所の平原佐斗司(さとし)さんは、白岩さん夫妻にそう切り出した。

 かつては食べられなくなった時点で寿命を迎えたが、今は様々な栄養・水分補給の方法がある。

 平原さんは、食べられなくなった場合、〈1〉栄養補給の措置はしない〈2〉胃に直接管を入れる胃ろうか、鼻からの管で栄養液を補給する(経管栄養)〈3〉皮下注射か腕の血管からの点滴〈4〉首筋や足の付け根の太い静脈からの特別な点滴(中心静脈栄養)——の4通りの方法を説明した。

 〈2〉と〈4〉は食事と同じエネルギーを取ることができ、栄養補給の効果は高い。ただ、胃ろうを作る時に腹膜炎を起こす、栄養液が逆流して気管に入り肺炎を起こす、など合併症で苦痛になる場合もある。

 一方、〈3〉の点滴や皮下注射で補給できる栄養はわずかだが、副作用は少ない。

 夫妻は、ミキサーにかけた食事やゼリーを少量ずつたまさんに食べさせつつ、「その時」に向け、話し合った。

 今年3月、食べ物やたんがのどにたまり、息苦しくなるたまさんを見て、「いよいよ」と覚悟した。

 「呼びかけに反応する母に、何もしないのはむごいが、苦痛を強いる処置も避けたい」と、皮下注射による栄養補給を選んだ。おなかや背中の皮膚に針を刺して行う。

 1週間後、たまさんは息を引き取った。持病の慢性腎不全の症状が急激に悪化したことが原因だったが、「眠るように安らかな顔だった」(清さん)という。

 アルツハイマー病や加齢による衰弱では、ゆっくり全身の状態が悪化する。

 平原さんは「死が避けられず、差し迫っている患者さんにとっては、1日でも長く延命することが最も重要とは限りません。白岩さん夫妻のように、なるべく苦痛を与えない点を重視した措置を望む方もいます。大切なのは、患者や家族が十分に説明を受け、考えて選ぶことです」と話す。

 だが、病院や介護施設では、食べられなくなったら、経管栄養を導入するのが一般的で、ほかの選択肢を示されることは少ない。延命措置を始める際は、病状や、治療しないことも含めた措置の選択肢について十分な説明が求められる。

 経管栄養を始める際の説明 厚生労働省研究班が昨年度まとめた調査では、入院して経管栄養をしている寝たきり高齢者の家族で、措置の開始時に「経管栄養以外の選択肢を示された」と回答したのは15%だった。開始について全く説明を受けていなかったケースもあった。

 経管栄養を始める際の説明 厚生労働省研究班が昨年度まとめた調査では、入院して経管栄養をしている寝たきり高齢者の家族で、措置の開始時に「経管栄養以外の選択肢を示された」と回答したのは15%だった。開始について全く説明を受けていなかったケースもあった。
(2006年6月13日  読売新聞)

[3]事前の意思 どう生かす
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060614ik01.htm

 「孝子が来ましたよ」 昨年5月、東京都の上原孝子さん(80)は、入院中の義姉(91)の耳元で呼びかけた。反応はない。2週間前に脳出血で倒れた義姉は、再出血を起こしていた。

 「意識が戻るかどうかわかりません。覚悟してください」と医師。鼻には栄養を入れる管、腕にも薬の点滴用の針が刺された。

 数日後、義姉の両手にはミトンがかぶせられ、上からひもで縛られていた。管を引き抜いたので、動かせないようにしたという。

 義姉は生け花の師範として活躍していた。ずっと独身だが、自宅には常に弟子が出入りし、にぎやかに暮らしていた。

 もう一度、お花のけいこが出来るなら、措置に伴う痛みも我慢できるだろうけれど……。「私なら、こういう処置は望まないと思いました。ただ、義姉の気持ちがわからず、つらかった」

 その後、義姉は脳出血を繰り返し、寝たきりだ。

 上原さんは、ボランティアや趣味に忙しい毎日を送る。それでも、突然病に倒れる可能性も考える。

 長年のかかりつけ医、大友英一さん(東京・浴風会病院長)に相談し、文書で延命措置を望まない意思を示すことにした。

 「人工呼吸器を着けない」などと書こうかとも思ったが、単なる延命が目的の措置か、救命に必要なのかは、医師が診療を尽くして判断することだと思った。

 何度も書き直し、8月、ようやくまとまったのは、「私は主治医が延命処置と考えた治療を受ける希望はありません」という一文だった。署名、押印し、「延命処置拒否文書在中」と書いた封筒に入れた。文書は6通作った。自分と4人の子どもに各1通、残る1通は大友さんに渡し、カルテに挟んでもらった。

 上原さんは「無益な治療で苦しい思いをしないだけでなく、子どもたちにも『母の気持ちがわからない』とつらい思いをさせたくない。文書を書き上げ、ほっとしました」と話す。

 延命措置に関する事前の意思表示について、日本尊厳死協会が「不治で死期が迫っていると診断されたら、死期を引き延ばすだけの延命措置は一切断る」などと記した文書を作り、11万人が登録。医療機関でも末期患者が文書を作れるようにしている例もある。

 大友さんは「意識もなく、管につながれている高齢者は増えている。延命措置について事前に意思表示できるよう制度化することが必要だ」と話す。

 ただ、事前の意思表示には「実際に病気になれば、考えが変わるかもしれない」「緊急時の撤回が難しい」との懸念もある。患者の意思をどう生かすか。慎重な議論が求められる。

 書面による事前の意思表示 2003年の厚生労働省検討会の調査では、死期が迫り、本人の意思が確かめられない時、文書による事前の意思表示に従って治療方針を決めることに、国民の59%が賛成、前回調査(98年)より11ポイント増えた。このうち、事前の意思表示の法制化に賛成したのは12ポイント減の37%だった。
(2006年6月14日  読売新聞)

[4]1人で1回で決めない
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060615ik01.htm


 今月9日、川崎市の川崎協同病院(佐々木秀樹院長)のナースステーションに、医師や看護師、薬剤師ら20人が集まった。週1回の症例検討会だ。

 「家族から、『本人と話し合い、心肺蘇生(そせい)法は一切しないよう変更してほしい』と申し出があり、新たな確認文書を作りました」

 40代の末期がん患者について、看護師が報告した。主治医らが先日、患者と家族に「治癒は難しい」と説明、心肺が停止した時には人工呼吸器装着や心臓マッサージなど蘇生措置を行うかどうか聞いた。家族は「あらゆる手を尽くしてほしい」と強く望み、その旨を確認文書にし、患者と家族が署名していた。

 だがその後、「蘇生措置はしないで」と考えが変わったのだ。外科医長の和田浄史さんは「家族も、何が本人のためかをよく考えたのだろう。一度確認しただけで済ませたり、無理に家族を説得したりせず、患者や家族の思いを何度もくんでほしい」と呼びかけた。

 同病院では98年、入院患者が、呼吸器内科の主治医に気管内の管を抜かれ、筋弛緩(しかん)剤を投与され死亡する事件が起きた。

 2002年の公表後、病院の内部調査で、患者の意思に基づく行為でなかったうえ、週2回のはずの呼吸器内科の症例検討会がほとんど実施されておらず、日常的に主治医が1人で治療方針を決めていた、などの問題点が浮かんだ。

 医師の暴走をどうくい止めるか——病院は再発防止に取り組み始めた。各診療科で週1回は症例検討会を開き、病状や治療方針を医師、看護師らチーム全員で確認することを徹底した。

 倫理委員会も設立し、終末期医療や蘇生をしない指示に関する指針を作成した。延命措置や蘇生法の差し控えは、患者の意思に基づく決定を原則とし、医師や看護師らと話し合い、同意書にまとめる。

 弁護士や宗教者ら外部委員を交えた委員会は、同意書の有効性や、現場の問題を審議する。がん患者の家族が「蘇生措置は希望しないが、本人に告知しないでほしい」と求めている、などの事例も話し合った。

 倫理委員で薬局長の穴沢咲知さんは「『1人で決めない、1回で決めない』ことが原則。それが次第に浸透してきた」と話す。

 今年3月、富山県射水市民病院で発覚した問題も、患者の意思を確認せず、主治医が独断で人工呼吸器を外した、とされる。同病院関係者は「医師の説明で、患者や家族に『無駄な措置』と思わせるかどうか、誘導できる。密室の危うさが問題を招いた」とみる。

 延命措置について患者の意思を尊重するには、複数の「目」が欠かせない。

川崎協同病院事件 亡くなったのは、気管支ぜんそくの発作で意識不明になった入院患者(当時58歳)。殺人罪に問われた主治医に、横浜地裁は昨春、〈1〉治療を尽くしたといえない〈2〉本人の同意がない〈3〉家族へ十分説明せず誤解を招いた——などとして有罪判決を下した。控訴審で、主治医は「殺意はなかった」と無罪を主張している。
(2006年6月15日  読売新聞)

[5]判断託せる代理人契約
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060616ik03.htm


 延命措置を行うかどうか本人の意思がわからない場合、判断は家族の意向に左右されるのが現状だ。

 関東地方のケアマネジャーB子さん(52)は13年前、あごのがんで夫(当時44歳)を亡くした。

 「もう治らない」と医師に告げられた。だが当時、子どもは幼く、「どんな姿でも父親です」と、出来る限りの延命治療を求めた。

 夫は薬や栄養を入れる何本もの管につながれ、のどに穴を開け、話せなくなった。ある時、B子さんを見て顔をゆがめたことが忘れられない。「『まだ(治療を)やるのか』と訴えたのでしょう。夫がいなくなる恐怖に耐えられない自分のエゴで、苦しみを与えてしまった」と振り返る。

 逆に家族の一存で措置が打ち切られる場合もある。

 東京都内の勤務医は2003年、肺炎で入院した男性(当時64歳)が急変、唯一の身寄りの妹を呼んだ。

 男性は意識がなく、血圧も低下、回復の見込みはない。腎臓が悪く、血液中の老廃物を除去する人工透析を週3回行っており、翌日が予定日だった。透析を行うと、さらに血圧が下がって死亡の危険がある一方、実施しない場合も数日で死に至る可能性があった。

 病状を説明し、今後の措置について尋ねると、妹は「透析も、心肺停止時の蘇生(そせい)も希望しません」とあっさり決めた。

 医師は「妹の態度から、患者との冷え切った関係がうかがえた」と振り返る。

 家族が患者の思いを代弁するとは限らない。家族間の意見の対立もある。

 患者の権利に詳しい福岡市の弁護士、池永満さんは「病院はトラブル防止のため、延命措置について家族の同意をとるが、家族が患者に代わり治療を決める法的根拠はない」と指摘する。

 そこで池永さんは、高血圧や脳梗塞(こうそく)患者数人と、今後、病状の進行や急変で意思表示できなくなった時、「代理人」として、治療を本人に代わって判断する民法上の委任契約を結んだ。

 患者は身寄りがない、家族との不和などの事情を抱える。池永さんは、こまめに連絡をとって病状を把握、治療への考えを聞く。米国などでは、こうした代理人契約が広がりつつある。

 池永さんは「民法に基づく契約は家族や知人とも結べるが、病院側は『後に他の親族と裁判ざたにならないか』などと心配し、受け入れない可能性も高い。患者が治療を選ぶ権利も含め、法的な枠組みを整える必要がある」と話す。

 死期が迫ったら、最期をどう迎えるか。その意思を医療者や家族はどう判断するか。議論を深めることが大切だ。(中島久美子)


 延命措置に関する海外の代理人制度 米国やオーストラリアの一部などで法制化されている。患者が希望すれば、事前に指定した家族や友人、弁護士ら「医療事項代理人」が、医師から説明を受け、意思表示できない患者の意思を推測し、延命措置の開始や拒否、中断を判断する。
(2006年6月16日  読売新聞)

【延命の中止・差し控え…医師苦悩、重い裁量】
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20060731ik09.htm

「一人で判断」46%…本紙調査240病院回答
 回復の見込みのない末期患者に対し、56%の病院が延命措置の中止や差し控えを行っていたとの本紙調査で、終末期医療について明確な指針がないまま、最期を迎えようとしている患者の医療が医師の裁量にゆだねられている実態が浮かび上がった。

適法性の認識
 「装着した人工呼吸器を取り外すことはある。措置を続けることで植物状態の患者をつくってはいけない、と思うから」(関東・公立病院副院長)

 「患者の苦痛を除くのが医療。延命措置が苦痛を与えることもあり、措置の差し控えは問題ない」(東北・公的病院長)

 「後に刑事事件になったり、家族ともめたりするので、呼吸器は絶対に外さない」(北海道・公立病院長)

 240病院が回答した本紙調査では、延命措置の中止・差し控えの是非を巡って、医師たちの意見は大きく割れ、医療現場の混乱ぶりがうかがえた。

 その要因は、延命措置の中止・差し控えの適法性に対する認識の違いにある。「法的に問題がある」「法的に問題はあるが、医療行為としては問題ない」がそれぞれ26%、「法的にも医療行為としても問題ない」20%と回答が分散。「患者によって異なり、問題があるとも、ないとも言えない」という答えも目立った。

 「法的に問題」とした病院の大半は、延命措置のあり方を規定する法律など統一ルールがないことを根拠に挙げ、ほとんどが「延命措置の中止・差し控えはしていない」とした。「回復が見込めない患者に行う措置に疑問を感じつつも、続けざるを得ない」と悩みを訴える声もあった。

 一方、中止・差し控えを行ったのは、「医療行為として問題なし」とした病院が中心だった。

決定の透明性
 延命措置を中止する条件などを定めた病院独自の指針を設けているのは、21病院(9%)にとどまり、明確な指針を持たないまま、医師の裁量で措置の中止や差し控えが行われている現状が浮かび上がった。

 人工呼吸器の取り外し問題が起きた富山県・射水市民病院は、主治医の外科部長がほぼ独りで取り外しを決めていたとして問題視している。今回の調査でも「医師が単独で決めた」との回答は46%に上った。

 2002〜04年に厚生労働省の終末期医療に関する検討会委員を務めた定山渓病院(札幌市)の中川翼院長は「延命措置を決定する過程の透明性を確保する体制整備が必要だ」と指摘する。

 今回の調査でも、射水市民病院の問題を受け、「院内の指針を年内か近いうちに作成する」とした病院は36を数えた。ただ、「国の指針がない中では、独自の指針は作れない」との声も少なくなかった。

 イギリスやドイツ、オランダでは、法律家や倫理学者を交えた院内や地域医師会などの委員会が、延命措置の中止に関する医学的判断や手続きが適正かどうかをチェックしている。

 甲斐克則・早稲田大教授(刑法・医事法)は「終末期の問題にも対応できるよう倫理委員会を整備し、積極的に活用すべきだ。一つの病院の倫理委が、地域の他の病院の審査を担当する方法もある」と話す。

意思の確認
 延命措置を巡っては、患者本人や家族の意思をどう反映するかが重要だ。1995年の東海大安楽死事件の判決は、延命措置を中止した医師の刑事責任が問われない条件の一つに、「患者の意思か、家族による患者の意思の推定がある」ことを挙げた。

 だが、今回の調査でも、患者の意思をくみ取ることの困難さがうかがえる。

 高齢者が入院する療養型の病院では、多くが認知症などで本人の意思を確認できず、「家族の意思で決めるが、延命措置を望む家族の希望と、回復見込みのない患者の病状との乖離(かいり)の大きさに悩むことはある」(近畿・私立病院長)という。

 救急患者が緊急治療で一命をとりとめたものの回復が見込めない場合、関東の公立病院副院長は「措置を中止するかどうかの決断を家族に求めるのは酷。家族との『あうん』の呼吸で決める」と語る。

 独自の指針を持つ病院の約4割は、患者の容体が安定している時に、本人や家族に文書で意向を確認する「事前指示書」などを採用していた。

 東海大安楽死事件 東海大学病院(神奈川県)の医師が1991年、末期がん患者に塩化カリウムなどの薬剤を注射し、死亡させた。横浜地裁は医師に殺人罪で有罪判決をくだし、確定した。判決は延命措置の中止が罪に問われない3条件を示した。

終末医療、72%「全国ルール必要」…厚労省、年内めどに指針
 射水市民病院の問題を機に、厚生労働省は年内をめどに、終末期医療に関する指針を作る方針だ。患者や家族の同意の取り方や、倫理委員会など複数の関係者による承認といった、延命措置の中止・差し控えを決める上で必要な手続きを盛り込むことにしている。

 今回の調査で、72%の病院が、終末期医療について社会的合意を得たり、患者・家族に説明したりするため「全国的な統一ルールが必要」と主張したが、その枠組みは、個々の患者の事情などに応じて適切な措置がとれるよう、法制化より緩やかな「指針」を望む声が多かった。

 学会レベルでも、日本救急医学会や日本集中治療医学会、全国約2100病院が加盟する全日本病院協会も同様の指針作りを進めている。


ルールなき現場戸惑いくっきり
 今回の調査の分析などに協力した国立保健医療科学院・林謙治次長(厚生労働省の終末期医療に関する研究班長)の話「法的・倫理的な問題を抱えながら、自らの裁量で延命措置の選択をしなくてはならない医療現場の戸惑い、苦悩が読みとれた。それが終末期医療に関する統一ルールを求める声の大きさになったのだろう。ルール作りの大切さとともに、国民が『死』をどう受け止めるか議論する必要を感じた」
(2006年7月31日  読売新聞)


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