―山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
智に働けば角(かど)が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。
―夏目漱石「草枕」より
漱石流に言えば、医者も天職と思えば尊いか!?
ところで、漢方医学はものごとを絶対的ではなく、相対的に捉え、全体との調和をとる―中庸を良しとする考えのようです。
そして全体の捉え方の一つとして、陰陽説があります。
太陽のあたる明るい・暑い・熱のある・代謝の活発な状態を陽と。対して、太陽のあたらない暗い・冷たい・代謝の低下した状態を陰とする考え方です。
特に、純粋に純陰のものかつ純陽のものも無いとしています。
例えば男女では男性の中に女性ホルモンが、女性の中に男性ホルモンがあるようにです。極端にならぬように、バランスをとるように考える。
古人は陰と陽が結ばれて人が生まれ、陰と陽との調和が破れて病気となり、陰と陽とが分離すると死ぬと考えました。
程々に、ですね。
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