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嘉山先生の講演
山形大医学部の嘉山孝正・医学部長が2月4日、大学医学部の危機、医療崩壊に関する講演をされたそうです。医師数、医療費の問題から、独立行政法人のワナから、医師の給与に至るまで、重要なポイントが語られています。
CBニュースより
大学医学部の危機山形大・嘉山医学部長
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/20486.html
この講演で使われたスライドはこちら
http://lohasmedical.jp/news/pdf/kayama1.pdf
講演内容は以下の通り
山形大の嘉山孝正医学部長は2月4日、文部科学省が全国の大学病院の院長らを集めた「国公私立大学医学部長会議」で、「大学医学部の危機正しい情報の共有」と題して講演し、「大学がやらなければならない教育、研究、高度先進医療が全部危機にひんしている。大学人として、きちんと意見を言わなければならない」と述べ、医療現場から意見を発信していく必要性を訴えた。嘉山氏の講演の模様をお伝えする。(新井裕充)
■教育、研究、高度先進医療が危機に
先生方、時間を頂きましてありがとうございます。今、いろんなことで日本の制度が疲労していると思いますが、一番大事なのは、先生方も含めてわれわれが正しい情報を持っていないことだと思います。 で、きょうは(予定の説明時間が)5分なんですけども、ちょっとお時間を頂きましてエビデンスだけを。 先程、(文科省の)新木(一弘・医学教育)課長が(エビデンスの重要性を)おっしゃったが、エビデンスだけを述べますので、これを先生方がどのように感じるのか、現場に帰ってから教授の先生方にお伝えください。
(スライド2)まず、大学がやらなければならないことは、教育と研究と高度先進医療なんですけども、これが全部、危機にひんしているのではないかと、わたしは考えています。 もちろん、先生方には「釈迦に説法」ですが、要するに、「われわれのロジスティックスが完全に崩壊している」ということを述べたいわけです。 医師の定員増の時に、舛添(要一・厚生労働)大臣が「お金を用意します」ということをおっしゃったわけですが、なぜ文部科学省が、例えば北大の学部長が、あの時、定員増がなかったわけですよね。
※ 医学部の定員増に関する北大医学部長の見解は、北大広報誌のPDFをご覧ください。
http://www.med.hokudai.ac.jp/ko-ho/pdf/2008-10-n37.pdf
(定員増に必要な教員の)人件費がなかったということはですね、いいですか、この(スライド4の)昭和31年にできた大学設置基準で、(720人までの)学生数に対する教官の数が(140人と)決められているわけですよね。 その後、教官の数が少しずつ増えたので、元に(医学部の入学定員を最高だった1981年の8360人に)戻しても、文科省としては「純増できない」ということがあるんですよね。 (舛添厚労相が設置した厚労省の)安心と希望の(医療確保)ビジョン会議で、われわれが「150人」と出したのは、これ(教員数)を変えない限り、文部科学省は財務省に何も言えないと思います。
従って、昭和31年の教育内容と今では全然違うので、これを150人に変えることによって初めて、純増の、教官数が増えます。これを変えない限り、絶対に駄目だと思います。 それから、(大学)病院の方もですね、高度先進医療をやっているといっても、教官数が減少してきている。 これ(スライド5は)、全国の「国立大学附属病院長会議」で出した資料ですけれども、千葉大学(医学部附属病院長)の河野(陽一)先生が記者会見しましたが、今まで5060円ぐらいでやっていたものを、30円でやらなきゃいけない。
国立大学病院は、こういう状況になっています。これは結局、文部(科学)省が悪いわけではないし、厚生(労働)省が悪いわけでもないし、実際はまあ、いろんな問題があるでしょう。(説明の)最後に結論を出しますけれども。
■国立大学の借入金は1兆円
あと、先生方、これ(スライド6)を見て驚かれると思うのですが、国立大学の借入金は現在1兆円。 これは、国大協(社団法人・国立大学協会)の資料です。ただ、法学部とか人文学部とかは借金はしませんから。 1兆円です。医学部がある国立大学は今、1兆円の借金があります。東大に至っては679億円。一番少ないのは大分大学で、53億9459万8000円。
ちなみに、うち(山形大)は126億あります。 内訳は、先生方の手元にある資料(スライド7)を見ていただきたいのですが、これもね、非常に不思議なんですよ。 国民のためにわれわれが教育しているのに、借金を何で国家公務員が返さなきゃいけないんですか? こんな不思議なことをやっている、制度をやってる国はないんですよ。これも文部(科学)省が悪いわけじゃなくて、多分財務省が。
その次にですね、これ(スライド8)です。借金だけじゃなくて、医学教育の危機です。 これは、清水(孝雄)東大医学部長から頂いたものですが、あの東大ですら、昨年(2007年)基礎系に行ったのは1人です。その前(06年)はゼロですよ。 先程、田原(克志)さん(厚労省医政局医事課医師臨床研修推進室長)が来てましたけれども、「卒後研修制度が
」なんて言ってましたけれども、わたしはもう、医療の崩壊どころじゃなくて、日本の医学、医療すべてが崩壊するんじゃないかと、非常に危機感を持っています。なぜならば、大学に(研修医が)戻らないからですね。いろんな制度的なミスがあったと思います。
で、これ(スライド9)が従来、われわれが育ってきた生涯教育ですね。これは大学がやっていたわけですけども、今や大学に人が戻って来なくなったというわけです。 それで、これ(スライド10)も、よーく考えると、非常に、僕ら不思議な人生を送っているわけですね。 一般の社会人でしたら、6年間の高等教育を受けて、その後に勤めて
。何でわれわれが「日々雇用」なんですか? わたしは32歳で助手になりましたが、32歳まで「日々雇用」で
。普通の社会では考えられないことですよ。
ここにお座りの文部(科学)省の方々は最初から公務員ですから、「日々雇用」ではなくて
(会場、笑)。 われわれは「ニート」というか、「フリーター」なんですね。30歳ぐらいまで。 こーんなことはね、あり得ないですよ。これを国民は何も知らない。退職金も切られる。人生設計は全く不安定。 で、「社会人学教育」の不在。一生懸命、研究と教育と高度先進医療をやっているわけですけれども、これで今の若い子どもたちが大学に集まるとはとても思えないですね。もちろん、志が高い人はいます。 でも、制度というのは、標準的な人が「そこを選びたいな」と思うのが制度だと思いますので、極端に志の高い人だけの制度をつくっても意味はないと思います。この辺もですね、先生方、後輩のキャリアパスをそろそろまじめに考えなきゃいけない時だと思います。
■医学部教授の時給は1690円
実際、われわれが何をやってきたかと言うと(スライド11を見ながら)、日本のある聖路加(国際病院)の有名な人は「日本の医学教育が悪い」と言いますが、実際には世界でナンバーワンの役割を持っているんですね。 ところが、その人たちの処遇っていうのは、これ(スライド12)、後でじっくり見ておいてください。高校の校長先生の方が、大学の教授より(給与が)高いです。
それから次はですね、これ(スライド13)は、大学(国立大学法人)と国立病院(機構)と公的病院の給与(比較)です。 これ、子どもたちがみんな知っちゃってるんですよ。こういうことを先生方も頭に入れておいてください。 あと、「一般勤務医の生涯所得は一流企業の社員以下」(スライド14)という数字が出ております。これは、わたしがつくったんじゃなくて、週刊東洋経済に出てますので。
あと、時間単位(スライド15)ですと、もっとひどいんですね。大学教授は4566円。 これは文科系の教授です。医学部の教授は1690円。とんでもない環境に置かれているということです。 これは、そもそもですね、これ(スライド16)が原因です。国内総生産(GDP)に占める公財政支出(学校教育費)の割合がですね、ビリから3、4番なんですよ。その前はビリから2番だったんです。
これは、文部(科学)省はなかなか声高に言えないので、わたしが徳永(保・高等教育)局長の代わりに言っているようなものですけど。 26位に上がったように見えますが、GDPが下がったからです。財務省が何と言おうと、これがエビデンスです。 もっと恐ろしいことにですね、(スライド17の)赤い部分、親が(教育費を)出しているんです。親が。
日本は明治以来、教育にはお金を掛けていないんです。教育と医療には。 これほどひどいっていうことを、先生方、エビデンスとして知っていただきたいと思います。 さらに、次の(スライド18)は奨学金です。 「メディカルスクール構想」なんて言っていますけど、「グラント」と「ローン」に分けると、つまり奨学金を「供与」と「貸与」に分けますと、日本はですね、(スライド19を見ながら)真っ赤っ赤です。
日本だけです。真っ赤っ赤。全部返さなきゃいけないんです。 例えば、ベルギーとか、「公的資金なので、返さなくていいよ」という奨学金制度になっています。 こういうことも先生方、「メディカルスクール」とかお考えになるときに、事実として頭に入れていただきたいと思います。 次はですね、これ(スライド20)、やっぱり医療費ですね。
ですから、われわれは、医学部は今、何が一番大変かと言うと、制度的に完全に疲弊させられて。 (新医師臨床)研修制度が一番大きいとは思うんですが、大学の教育がちゃんとしていないとかいろいろなことをいわれますが、高等教育費が世界で下から3番目、医療費が下から何番目。 こういう中で、世界一の医療をわれわれが頑張ってやってきたんですけども、もはや制度設計を完全に変えないと、大学の医学部そのものが崩壊しちゃうんじゃないかと思います。
事実、ある西側の国立大学のきれいな港町のある大学の教授はですね、「もう教授なんてやってらんない」と、大都会の教授がそういうことを思ってるんですね。 こうなってくるともう、基礎研究も崩壊します。そうすると完全に日本は、医学、医療、バイオの面で、最低国になっちゃうんじゃないかと。 わたしが言ってるのは10年後です。今はわれわれが支えていますけど、10年後にはそうなりかねない。10年後に直しても、また50年ぐらいかかりますよ。ですから、今われわれが立たなければいけないと思います。
■情報開示が基本
そのための一つ(の方法)として、これ(スライド21、22)は情報公開です。 今まで注射がいくらだったのか全然分からないので、ただ「注射」としてまとめてやっていたんですけども、情報を出した方がいいと思います。 うち(山形大)では、4月1日から全部やりますけど、ここ(スライド23)にあるように、「カイトリル錠」がいくらだの、「ツムラ」がいくらだとか。ただ、先生方はご存じかどうか分かりませんが、心臓マッサージ、あの心臓マッサージの医療費と、普通の町でやっているマッサージでは、大体、2倍から3倍、心臓マッサージの方が安いんですよ(会場、笑)。
そういうことが国民に分かるので、これはきちんと情報開示した方がいいと思います。情報開示することが、われわれの一番の基本だと思います。 それで最後にですね、これ(スライド24)は2年前に、東京大学の安田講堂で、南原繁先生の言葉というのを立花隆さんがやりました。 先生方ご存じのように、南原先生は東京大学の戦後の最初の総長です。 (06年)8月15日に、これをやったわけですけども、石坂公成先生はアレルギーの世界的な権威ですね。佐々木毅先生は、その時の東大の総長です。鴨下重彦先生もいらっしゃいます。
何をやったかと言うと、南原先生は時の総理大臣の吉田茂先生に「曲学阿世の徒」と言われたんですね。 「曲学阿世」の使い方を吉田茂首相は間違ったと思うんですが、「曲学阿世」というのは、実は「御用学者」という意味です。「御用学者」と言ったわけではないんですよ。 要するに、「言質をろうして世間を混乱させる男だ」と、吉田茂さんは言ったんです。
ということは、何が言いたいかというとですね、大学人は唯一オピニオンを出せる人間なんですね。 当時、戦後の時代でも、東京大学の総長はきちんと社会に対してオピニオンを出していたということであります。 きょうも、「上意下達」のような会をさせられていますが(会場、笑)、えー(会場、笑)、だって、質問もさせないんだ、厚生(労働)省。 あれ(新医師臨床研修制度の見直しなど)、質問なんかいっくらでもありますよ(会場、笑)。 (スライド25)われわれはですね、きちんと、大学人として、(文科省の)徳永局長がおっしゃっていたように、「独立」「自律」ということであれば、意見をきちっと言っていかないと。 他の産業の方々がわれわれを助けるようなことは絶対にやってくれませんので。われわれの後輩のため、あるいは国民のためにですね、医療、医学を守っていく必要があると思って、きょう、このようなデータを出させていただきました。どうもありがとうございました。(会場、大きな拍手)
更新:2009/02/06 09:07 キャリアブレイン
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この際、嘉山先生の書かれたMTproの記事も要チェック!
2009年1月20日掲載
キーパーソン・嘉山孝正氏に医療界の話題を聞く(上)
低レベルの医療・福祉・教育費を引き上げ,先進国の仲間入りを
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0901/090107.html
医療財源,ドクターフィー,国立循環器病センターにおける補助人工心臓の治験,医療事故調査,病気腎移植など,医療における問題をどう考えればよいのか。厚生労働省(厚労省)に医学部定員の1.5倍増を提案,実際に国策に反映させるなど,慧眼と行動力で注目を集めている山形大学医学部長の嘉山孝正氏に見解を聞き,2回に分けて紹介する。
第2次補正予算案が衆議院本会議で可決
昨年(2008年),医療従事者たちから発せられた医療費抑制策の問題点を指摘する声は,地域の医療崩壊を目の当たりにしている国民にも届き,各地で医療を守る運動が芽生えている。
そうしたなか,今年(2009年)1月13日,衆議院本会議で政府与党の示した第2次補正予算案が可決,参議院に送られた。
参議院で採否が決定しない場合,2月12日に法案は自動的に成立する。また参議院で野党が採決に応じない場合でも,憲法60条には衆議院の優越が定められており,3月14日以降に衆議院で再可決が可能となる。
つまり,この後衆議院内に大きな変動がなければ,政府の第2次補正予算に基づき2009年度の国家予算は動き出すことになるわけだ。
確かに,第2補正予算案では,厚生労働省(厚労省)の各研究会などで医療従事者たちから指摘された問題を踏まえ,さまざまな財政措置が新設,あるいはすでに設けられている項目の一部でも増額されるようだが,果たして日本の医療費はこの予算案で足りるのか。
医療費を含めた社会保障費の改善を閣議決定すべき
嘉山氏は財務省の書類(財務省ホームページ参照)を見て「増額は評価できるが,まだまだ足りない。国民総生産(GDP)に占める医療費の比率は,経済協力開発機構(OECD)加盟30か国中,現在21位(2007年)だが,少なくとも平均並みまで上げる必要がある」と言う。
また,国家予算に占める教育費について日本はさらに低く,先進諸国としては最低レベルだと指摘。医学部教官は医療と学生の教育,さらには医師の指導まで行っている現状があり不当に低額だとし「このままでは,医学部教授を目指す医師がいなくなる」と憂慮する。
同氏は「現在の医療崩壊と称される状況を招くに至った原因は,厚労省というよりも経済財政諮問会議,財務省の失政だった」と振り返り,「例えば高等教育費は,2兆円増額しないとOECDの平均にも達しない」という。
財務省では第2次補正予算案の文面に「徹底した無駄の削減」などとうたいながら,予算に2兆円規模の定額給付金の支給などを盛り込んでいる。
同氏は「国民が求めているのは厚労省の医療のビジョンでも示されているが安心と安全だ。今は医療や福祉など,社会のセーフティーネットの部分に不安を感じているから国民は安心してお金を使えていない状況がある。内需拡大と称して定額給付金のようなバラマキを行うよりも,医療や福祉に2兆円を使うほうが国民,有権者の安心につながり内需拡大をもたらすのではないか」と首をひねる。
また「こうした低額の社会福祉費社会のもとで被害をもっとも受けるのは,医療を受ける国民だ」とし,「医療費を含めた社会福祉費の増額を改めて閣議決定すべき」との見解を示した。
国のミスリードに,ドクターフィーなどのアイデアで対策
新しい臨床研修制度の問題では,大学医局の医師派遣機能を著しく低下させ,地域医療に大きなダメージを与えていることが指摘されている。福島県立大野病院事件のように,ハイリスクな患者の治療に対しては刑事訴追がなされたり,また民事訴訟が起きたりすることも問題となり,そうした診療科では勤務医や志望者か減少している。
ただし,嘉山氏は厚労省による医療費抑制策や文部科学省の国立大学運営費交付金削減策,社会の変化に対し,医学部長として手をこまねいて悲嘆していたわけではない。
例えば,山形大学の給与規定では純粋な宿日直手当てが1万4,000円であったのを2005年4月に1万円に見直すなどし,その浮いた分を(1)オンコール手当て6,000円/回,(2)時間外救急診療従事手当(救急部)8時間1万4,000円/回・16時間2万8,000円/回,(3)緊急時診療従事調整手当5,000円/回など,ハイリスク患者の治療に当たる医師への手当てとして捻出した。
同氏は「国立大学法人で原資が低額なため,手当てが十分とはとても言えないが,予算配分で大学本部や文系の学部とは激論も交わし納得してもらい,現場を見て学部長として取り組めることをやった」と言う。
また,診療報酬の見直しがあっても,増額分が医療施設内の赤字補填に使われることも多く「周産期医療や救急医療など,実際に処遇改善課題となっている,診療に当たる医療従事者の手当てが篤くならないのでは意味がない。ドクターフィーについても考えて欲しい」と舛添要一厚生労働大臣も指摘している。
ドクターフィーやインセンティブという考えについても嘉山氏は同大ですでに導入・実践済みだ。
2006年7月からは,診療従事特別手当,緊急時診療従事調整手当,医療機関における残業代未払い問題などでも,超過勤務手当て15時間に相当する額を診療従事教員に,また医員にも診療従事調整手当て1万円を新設するなど改善策を講じている。
また,現在どのような手術がハイリスクであるか,という定義がとくにないため,原資なども勘案したうえで保険点数3万5,000点以上のものをハイリスク手術とみなし,通常勤務時間外,休日に手術・麻酔に従事した医師に対し,10分の1を,執刀医,第一助手,第二助手,麻酔指導医,第一麻酔医,第二麻酔医に分配し支給している。
産科医療については,通常勤務時間内外に関わらず昨年6月から分娩業務に従事した産科婦人科医に9,0001万円/回を支給している。
スチューデントドクター制度で,医学生に高い意識と誇りを
新しい臨床研修制度が議論にあがったとき,嘉山氏は勤務医の偏在問題が発生することを予見。パンドラの箱を開けることになると警鐘を鳴らし,強く反対した経緯があった。
「地域医療の崩壊では,派遣医師の引き揚げなど各医療施設から大学病院が恨まれ,批判の的にされてしまった」と言う。しかし,多くの大学病院では,研修医のマッチングに非常に苦慮し,勤務医不足に悩んでいるのが実態だ。
一方で,先述のような同大学病院における熱心な取り組みの数々を医学生はきちんと見て取っているようだ。
同大では,文部科学省の科学研究費に対する応募において一流大学の指標である採択率20%を超え,平成20年度グローバルCOEプログラム(文部科学省ホームページ参照)も獲得しており研究の評価も高い。こうした努力もあって臨床研修のマッチングでも東北の大学病院のなかでは山形大学病院が一番研修医として残る率が高いという。
さらに,1月から同大ではスチューデントドクター制度を開始する。
これは,臨床実習前の大学4年生次に受ける共用試験の合格者を「スチューデントドクター」として認定し,指導医の監督を受けながら実際の診療を行うというものだ。
このことで,現在は医学部卒業後の初期研修時のスーパーローテートで行っているような教育を前倒しすることが可能になる。
同氏は「早い時期から学生の自覚や責任感を高め,医学の質の向上につながることが期待される」という。
官僚の天下りと国公立病院の勤務医不足の原因に共通点
また,国立循環器病センターなど6つの国立高度医療センターの独立行政法人化法案が昨年12月に可決されたが,この点については官僚の天下り先となり,高度医療研究の自律的なあり方に影響も出るのでは,という危惧の声もある。
嘉山氏は,官僚の天下り問題と大学病院・自治体病院の勤務医不足の問題には共通点があると指摘する。
それは,国家公務員の給与の問題なのだという。
同氏は出身高校の同窓会に参加したエピソードを紹介。
出席してみると,同じように能力の高かった人物でも,大学卒業後に選んだ進路で,民間企業と国家公務員とでは収入に大きな差があることが分かり,「大学病院教授でも自治体病院の勤務医でも国家公務員上級職(現1種)でも公という大義のため大きな責任を負い,中高年になっても激務をこなしている一方で収入が民間に比べ相対的に低いと思う」との感想を語った。
そのうえで「給料の高いところ,激務でないところ,訴訟リスクの少ないところを選ぶことは人間としては当たり前の感覚ではないか」とし,「医師だけでなく厳しい労働環境にある公務員全体の給与を上げ,そうした人材の流出を避けるべきだ」と強調した。
また,医療安全調査委員会(医療事故調査委員会)の問題では,厚生労働省の検討会で,日本麻酔科学会,日本産科婦人科学会,日本救急医学会,全日本病院協会の代表者とともに全国医学部長病院長会議の大学病院の医療事故対策に関する委員会委員長として出席した。医療安全調査に第三者と称しながら利益相反のある国の組織が当たることや,事故調査の判断が刑事罰につながることの問題点を厳しく追及している。
次回はこの医療安全調査委員会問題,それに関連して国立循環器病センターの治験で取り沙汰されている問題などを中心に同氏の見解を紹介する。(下に続く)
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長くなりました...。
とりあえず、(下)の方は、URLにとどめます。
2009年1月21日掲載
キーパーソン・嘉山孝正氏に医療界の話題を聞く(下)
医療の問題では,科学的判断こそが患者の権利を守る
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0901/090108.html
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私が嘉山先生にシンパシーを感じるのは、まさに『正論』だからだと思う。大学に対して、最近は特に若手?から厳しい意見が出ているのは事実。大学に多々問題が合ったのも事実。しかし、大学抜きの医学教育などありえない。大学人が誇りを持って働ける環境を作らなければ、『教育と研究と高度先進医療』の先は闇である。こんな重要なことを、すべて民間に任せるなど、とんでもないということは、いろんな病院を巡った先生方なら、きっと理解されると思う。
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