Doctor Takechan
More プロフィール

Search

Calendar

<< 2008/12 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

新着コメント

新着トラックバック

< かわいそうな話 | メイン | 日本丸の行方は?、そして医療は?、ウチは... >






ブログ928htm

さらにかわいそうな話



 Mさんは、認知症が進み、ケアハウスで暮らす70台の男性患者さん。

Mさんは、もう、ほとんど話すこともできません。10年ほど前は、よたよた歩いて、いつも笑顔で冗談のような話をするのが好きでした。

 そのMさんは、次第に歩けなくなり、認知症も進んできました。とても元気な奥様もさすがに在宅での介護に限界を感じられ、数年前にご主人(患者さん)を施設へ入所させました。奥様は、毎日のようにご主人の元へ通い、食べさせたり、手引き歩行をさせたり、トイレへ連れて行ったり,おむつを替えたり、とても一生懸命お世話をなさっていました。

 ところが、その元気な奥様は2年ほど前、私のところへご主人を連れてきて、処方をもらって帰られたあと、突然倒れ、その3日後に亡くなられました。くも膜下出血でした。



 ひとり残されたMさんを介護することになったのは、奥様の親族でした。

奥様ほど一生懸命介護、ってのは、さすがに無理ですが、それでも毎月タクシーで患者さんを私のところに連れてきて、精一杯の愛情を注いでおられました。



 でも、ことしは厳しい夏の暑さが影響したのでしょうか、Mさんは食欲がおち、やせてきて、元気もなくなりました。Mさんは、少し前までは、私がクリニックで声をかけると、とにかくすごく嬉しそうな笑顔を作ってくれていました。ほとんど発語はないものの、お顔はスゴく嬉しそうなのが印象的だったんです。しかし、その笑顔すらなく、硬い表情で立たせることも大変な様子になってしまいました。

 食べなければやせて体力は無くなり、徐々に弱って行くでしょう。鼻からチューブを入れるか、胃ろうを作るか、判断の難しいところです。



 奥様の親族はいろいろ相談された上で、PEG(胃ろう)を作ってもらおうという結論をだされました。そして、私からある病院へお願いして、胃ろう作成の準備をしました。



ところが、ここで大問題が生じました。

 ケアハウス側が、ちょっとまってほしいと言い出したのです。

 ケアハウスでは、誰でも胃ろうの管理をできるわけではありません。看護師が注入をしなければなりませんが、その体制に不備があり、胃ろうを作った患者さんが入所する部屋の数には制限があります。ですから、Mさんが胃ろうを作るために一旦退所して、病院に入院して胃ろうを作ったとしても、戻る部屋をすぐには用意できないというわけです。



 慌てたMさんの親族は、いろんなところに受け入れてくれる施設がないか、探しまわりました。しかし、いつ部屋が空くか分からない、という返事ばかり...

 親族は、自宅にMさんを引き取るのはとても無理だと嘆き...

 結局、当面は胃ろうをあきらめ、できるだけ口から食べてもらうように努力する、という話になってしまいました...。

 親族は、何とかもってくれたら...と泣きそうになっていました...。



     ーー==============−−



 脳の機能が落ちて、あるいは体力が低下して、嚥下能力が落ちると、無理に食べさせることはできません。肺炎のキケンがあるからです。でも、栄養は入れなければなりません。となると、長期的には胃ろうが望ましいと思うわけです。やはり、24時間鼻からチューブってのは、できれば避けたいところです。

 ですが、今の医療介護制度では、それすら難しくなりつつあるのです。Mさんは、もしかしたら涼しくなって、食欲が戻る可能性もないではありません。ですが、このまま次第にやせ衰えて行くかもしれないのです。

 それがわかっていても、必要な処置(胃ろう)が行えないなんて...



 ある訪問看護のベテランさんは、こう言います。

ケアハウスではなかなか看護師を確保できないので、胃ろうは敬遠されています。チューブ栄養は看護師がやらなければならないからです。

すると、療養病棟を探して入れてもらうしかないのですが、政府の療養病棟削減計画の影響もあって、以前より入るのに時間がかかります。

いっぽうで、胃ろうを作成する側の病院(多くは総合病院)では、あまり患者さんを長く置いておくわけにはまいりません。平均在院日数を減らすという大命題が存在するからです。となると、引き受ける病院も、そのあとのいわゆる後送施設を確保しない限り、安易に胃ろうを作るわけにもいかなくなります。



 患者さんにとってはこの1週間、2週間が勝負かもしれないのに、部屋の都合は何ヶ月先になるか分からない...

 これで患者さんが死ぬことだってありうるのに...です。



 いよいよ、国民は、
制度によって殺されるかもしれない国に生きることになったのですね。さあ、あなたはどうやって生き延びますか?

認知症は餓死して死んだらいいんですか!?



 そういえば、銚子市立病院もついに廃院になりましたね。

 地元民の不安がどれほど大きいか...



固定リンク | コメント (13) | トラックバック (0)

トラックバック

この記事のトラックバック URL

http://blog.m3.com/DrTakechan/20081001/1/trackback

コメント

コメント一覧

お疲れ様です。。。
家族のことを思い出しました(T_T)
死の選択ですね。昨日の○ののテレビを少しだけ見ました。
議員さんは自分の老後は安泰だと思っている人が結構居ることに「脳天気なのね。。。」と思いながら消しました。見るだけムダでしたわ。。自分さえ良ければ・・・の象徴ですねー。
written by yoshikka / 2008.10.01 07:40
yoshikaさん、辛いことを思い出させたのならごめんなさい...
 でも、今の医療崩壊がさらに進むと、もっともっとかわいそうな話が増えていくことは間違いないので、あえて書かせて頂きました。

で、yoshikaさんは元気戻ってきましたか?
とまとさんも頑張ってるみたいですね。
あの銚子じゃ...あ、いや、あの調子じゃ、ほんとに京都まで観光されるかもしれないっす...。
 
それにしても、代表質問、自民党、ほんとにおかしくなってきてません?
細田の代表質問なんか、本人は異常にhighな感じでしたが、私はどっちらけもいいとこでしたよ。
いつのまにか政権交代しちゃったのかな?
written by Doctor Takechan / 2008.10.01 20:36
頬の痩けた細田さん、「鬼気迫る物」がありましたね。

そこまで自民を正当化しなきゃ、自分もあぶないの?ってくらいに。

細川政権以来の事をブツブツ言ってたけど。

戦後55体制以来、日本的民主主義を作ってきた、「おんぶにだっこ自民政権」に反して、細川政権がはじめて「政治の構造改革」をもたらした?くらいなのに・・・善きに付け、悪しきに付け・・・。

それが、紆余曲折して自民、いや「自民系」に戻ってきて、「やっぱり自民が」と勘違いの小泉政権があって・・・。(皆、熱中してましたねぇ。)
郵政で国民だまして、水面下の氷山の様なたくさんの「改悪」を行って。
(まだだまされっぱなしの人が多いみたいですが。)
(あんときゃ、なんで元運輸会社社長で、その会社は今でも身内がやってる、◯たぬきさんが反対なんだろうって思いましたが。今思えば、水面下のおっきな物がみえてた?いや、彼も今で81、定年案に反対してたか・・・?今度は比例で出るそうだが、落ちれば引退だろうなぁ。)

ま、気合いを入れてくれるのは、ありがたいですが・・・。
「空回り」政権、「空回り」内閣なんだね。なんだかなぁ。

さ、仕事仕事・・・・。仕事しなくっちゃ・・・。

written by どくたけ / 2008.10.01 23:22
いやはや,細田のいちゃもんは...狂気に近いものがありましたね
 総理に対する代表質問なんて、この際、ど〜でもいい!、って感じ

もう、まったくわけわからん、むちゃくちゃの国会とでもいうか
 これで審議ってできるんでしょうか

なお、私は麻生って、マジ下品と感じました...。
 医療も介護も年金も興味なし
  また財界のためのばらまき政策ですか..
弱者は放置プレーのえじきです..
  これ,ほっといたら、ほんま、どえらいことになりまっせ
     さっさと選挙しておくんなはれ..
written by Doctor Takechan / 2008.10.02 00:39
官僚派と官僚たちの最後の抵抗でしょう。

与党の上げ潮派と野党の気概ある政治家達が結集することを切に望みます。
written by Paul Carpenter / 2008.10.02 09:03
認知症高齢者の人工栄養の問題は、深くて広いと思います。

祖父母は、人工栄養をしませんでした。
祖父は誤嚥窒息で、祖母は経口摂取量減少のまま消え入るように亡くなりました。
本人たちが人工栄養を希望していなかったこと、医療者でもある伯父や父ら子供たちが全員それを尊重したこと、祖父は在宅を支える家族とスタッフに恵まれ、祖母はその方針を了承した老健にいたこと、そういった条件が重なってのことだと思います。
現在、まだ健在である両親も人工栄養を希望していませんし、私たち夫婦も互いに人工栄養はしないことを約束しています。
個人的には、認知症高齢者が経口摂取困難となった場合、人工栄養の適応はないものと思っています。

但し、人工栄養を希望する方もおられると思います。
その方々が、希望したのにかなわない社会、というのは望みません。社会構成員の希望が他者を損なわず、公共の福祉に反しない限り、尊重されるようにシステムを作り税金を投入する政府であるべきだと思います。
written by 信州人 / 2008.10.02 09:43
小生が母親をスタッフの少ない精神科病棟で亡くしたときはまだ人工栄養(PEG)が広く普及していませんでした。

週末小生が行って1時間かけて食べさせるとき以外はほとんど摂食できてなかったと思います。みるみるうちに衰弱していきました。

ただ人工栄養(PEG)をもし留置したら、せん妄の強い時でしたから、たとえ全麻をかけて挿入できたとしても、覚醒したら挿入部の違和感をおぼえて自己抜去して、出血や腹膜炎で亡くなった可能性が高いと考えています。

そういう意味でも、やはり人工栄養(PEG)の適応はなかったと思います。

それよりも、仕事や小さいこどものために母親を自宅で介護できなかったことが一番の心残りです。

自宅でも介護できない、介護施設もさまざまな制約問題がある、介護職員はワーキングプアになる、こんな社会は長続きするはずがありません。

この国のすべての職業の労働環境や労働内容、報酬等のそれこそ構造改革を行わないと、なにひとつ前進解決しないと思います。
written by Paul Carpenter / 2008.10.03 08:57
 胃瘻と気管切開、どちらが誤嚥をする高齢者にとっていいのでしょうか。気管切開+気管閉鎖までやれば話はできないが、食事はできます。餓死しないとしても、胃瘻だけでは誤嚥窒息の危険は減らせません。ものを食べる意欲もないなら、胃瘻で強引に生かせても人道的ではないでしょうし、嘔吐して誤嚥して肺炎という悲惨なことも、チューブ抜去して腹膜炎というのもみたことがあります。
 生きるために必要な食欲というものは、味わうことでもありましょうから、ただ、生かすためだけに作ることは差し控えるがよいのではないでしょうか。
written by ある勤務医 / 2008.10.03 16:35
胃ろう・気管確保は、いつも難しい問題ですね。
例えばSLEのような、意識は正常だけど筋肉が問題だと言う場合等は特に。
それぞれの個人の意志を尊重すると云うのが一番で。
やはり、先生がおっしゃる通り「制度」の問題でしょう。
まあ、高齢者もそれぞれありますし、ものすごく頭のはっきりしている人も時に見かけますから。
written by ずるず / 2008.10.03 21:49
Paul Carpenter先生、いつもありがとうございます。
官僚の抵抗、凄まじいものがあります。例の、民主党が厚労省に要求した厚生年金の資料を、民主党より前に自民党に見せた,という話、非常にコワいものがあります。
 政府と官僚が一体となり既得権益の確保に死に物狂い、という図式があまりにもはっきり見えすぎてコワい世の中だと実感する次第です。

それにしても、構造改革というけれど、今の自民党は何を構造改革するつもりなんでしょうか?
折しも、経済財政諮問会議の民間議員が決まりましたね。

>内閣府は3日、政府の経済財政諮問会議(議長・麻生首相)の民間議員に、張富士夫・トヨタ自動車会長、三村明夫・新日本製鉄会長、岩田一政・前日本銀行副総裁、吉川洋・東大教授の4人

よりによって、東大吉川にトヨタなど、医療をもっと効率化せよという医療破壊論者ばかり...。
財界依存の自民党の体質が顕著ですし、こんな人選で明るい未来は100%期待できません。
written by Doctor Takechan / 2008.10.05 01:06
信州人さま、ありがとうございます。
 人工栄養の問題は根が深いのかもしれません。いろんな意見が出るのは当然でしょう。ですが、患者の病態は様々。どんな理由にせよ、胃ろうが必要であるのに制度の問題でできない、というのは、がん患者に、すごくよく効く新薬を見せておきながら、わが国では使えないんだよ、と厚労省が言ってるようなもので、人権無視の差別的制度だと断言します。

 すべきかどうか、という議論と、制度として手技を保障するかどうかは別物ですよね。このあたりが政府というか、厚労省の無責任さが浮き彫りになっています。
written by Doctor Takechan / 2008.10.05 01:12
ある勤務医さま、ありがとうございます。
 おっしゃる通り、胃ろうをすればすべて解決でないことは明らかです。
 ですが、老人の中には、胃ろうを作り、栄養と水分と薬を確実に投与することにより、驚くほど回復する人もいるのです。中には、自分で食べられるようになってとうとう胃ろうを抜いてしまった患者さんもいました。
 逆に、胃ろうを作る際に内視鏡のためか誤嚥をして、充当になってしまう患者さんもいる...、あるいは、胃ろうを作っても栄養を入れるとすぐ肺炎を起こして肺炎を起こす人もいる...(病院時代、胃ろうの患者さんを40〜50人ほどみていましたし、今も在宅で2人診ていますし、およそのことは理解しているつもりです)

 ですから、大切なことは、制度的に、いろんな選択肢を保障するということなんだと思っています。実質的にできない制度にしてしまうことには断固反対します。
written by Doctor Takechan / 2008.10.05 01:21
ずるずさま、ありがとうございます。
 やはり、胃ろうとか、気管切開とか、どうすりゃいいか悩むケースは多いですね。結局,医師は、患者の家族と法律の板挟みみたいな状況です。
 ただ、基本的に、医師である以上、可能な限り、患者の命を守る方向で考えることが重要だと思います。
 政府・厚労省の医療費抑制で苦しいからと、老人の生命を軽く考えるようなことがあってはならないと思っています。医療費がもったいないというのは政治家のたわごとです。
 医療費をムダに浪費する医者は、制度と関係なく存在します。
written by Doctor Takechan / 2008.10.05 01:27

コメントを書く

ニックネーム*
メールアドレス*
URL
内容*
※「利用規約」をお読みのうえ、適切な投稿をお願いします。