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M3com「医療維新」より



 ちょっと気分が重い。久しぶりに“掲示板”(2ちゃんねるじゃなくて、M3comの医師専用掲示板)を覗いてみたが...

 相変わらず、改革潰しか人格崩壊としか思えないしつこい書き込みも結構多い。正常な議論をできない医師が増えているのか..?

 あるテーマでは、本田医師を徹底的にののしるだけの書き込みが続いている。本田氏も全医連も、改革者はすべてアカ呼ばわり...?

 時代錯誤も甚だしい..。。匿名性の限界なのか...。



こういうときは、やっぱり正面から堂々と議論・対話をする人達に登場してもらうのが一番。(4回シリーズの前半2回分を紹介するよ)



  −−−−−−−−−−−−−−−−−  



   


医療再生にはなぜ負担増が必要か◆Vol.1

医療提供体制は「今日的医師不足」の状態

患者の要求水準の向上などが要因、報道のあり方が契機に 

司会・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)



 「医療再生のためには、税や保険料の引き上げなどの負担増が必要」。これは、虎の門病院・小松秀樹氏、慶應大・権丈善一氏の一致した意見だ。しかし、医療界では、医療費増の必要性は認めながらも、負担増に対する反対論が根強い。そこで、両氏に、現状の医療に対する認識から、医療費の水準や財源論に至るまで対談してもらった。第1回のテーマは、医療の提供体制から見た現状認識。「今日的医師不足」に陥っているという結論だ(対談は、2008528日に実施。計4回に分けて連載)。



小松秀樹氏 1974年東京大学医学部卒。山梨医科大学(現山梨大学)助教授などを経て、99年より現職。2006年に上梓した『医療崩壊』(朝日新聞社)が話題に。臨床医の視点から、医療の現状に問題提起を続ける。最新刊に『医療の限界』(新潮新書)。



権丈善一氏 1985年慶應義塾大学商学部卒業、90年同大商学部助手、94年助教授、2002年から現職。96〜98年と2006年〜2007年英ケンブリッジ大留学。2006年12月〜2007年3月「医療費の将来見通しに関する検討会」委員、2008年1月から社会保障国民会議委員。



 ——医療費の水準やその負担のあり方を考える際には、現状の医療提供体制がどうなのか、質量ともに十分なのかを踏まえる必要があります。その辺りからお伺いします。



 小松 これまではぎりぎりで医療提供体制が維持できていましたが、危なくなってきているという認識です。その一因は、「フリーアクセス」という、非常に「贅沢」なシステムにあると思っています。現状のようなフリーアクセス、国民皆保険制度、少ない医療従事者でやっていたら、もはや持ちません。



 ——OECD諸国と比べると、人口当たりの数は、医師だけでなく、看護師なども少ない状況にあります。



 小松 そうですね。この前、東京地検から4人の検察が虎の門病院に視察に来て、医療事故が起こりそうな現場を中心に見ていきました。投薬の準備作業の際、間違えないように患者さんに渡すためにどんな努力をしているかを見て、ため息をついていましたね。



 例えば、合計して7〜8種類の薬を服用している患者がいるとします。そのうち何を投与すべきかを医師の指示と照らし合わせて毎回チェックするわけです。こうした確認作業を各患者に実施しますが、そんなとき、電話がかかってくると作業が中断される。これは事故の元です。また、血液内科をはじめ、投与指示が頻繁に変わる科も少なくありません。本人確認しようとしても、本人の具合が悪ければ、それもままならない。



 ICUも視察していきましたが、1人の患者に人工呼吸器が付き、輸液ポンプとシリンジポンプが合計7台付いている。モニターがたくさんあり、頻繁にアラームが鳴る。そんな状況を見て、彼らは唖然(あぜん)としていました。



 権丈 つまり、医療従事者は充足していないのでしょう。欧米諸国と比べて、「日本の医師数は少ない、医療費は安い」という状況でいい理由は、別にないと思います。



 ——小松先生が医師になられた当時との比較ではどうでしょうか。今の仕事の質や内容はかなり違いますか。



 小松 相当違いますね。私が医師になったのは1974年です。その当時、東大泌尿器科では、医師が十数人いましたが、手術件数は年間350件程度でした。一方、今の虎の門病院の泌尿器科医は7人で、年間700件の手術を手がけています。



 ただし、私は全国の病院を知っているわけではありません。今は特別、忙しい病院に勤めていると言えるでしょう。現在、普通の病院、さらには大学病院などですら、医療訴訟を恐れるためか、難しい手術を敬遠する傾向が明らかにあります。理由はどうあれ、私のところには難しい手術が集中する傾向があります。これも忙しくなる理由の一つです。



 手術件数が格段に増えたほか、説明にかける時間も違います。以前はあまり説明に時間をかけませんでしたが、今は患者さん1人当たり1時間程度です。同意書や各種書類の作成にも時間を要します。



  さらに患者さんの要求レベルも高くなっているので、日曜日の朝9時に病棟に行くと、医師が皆、そろっている状況です。





 ——「日曜日に朝、医師が全員そろっている」と。それは全員、勤務時間外であり、時間外手当などは付かない仕事でしょうか。



 小松 虎の門病院には医師の時間外手当はありません。



 ——虎の門病院では、医師の献身的な働きによって成り立っている。



 小松 ただ医師の「クソ働き」は以前からあって、私自身は、1カ月に最大で16〜17日間病院に泊まったこともありました。もっとも、若いころはそれで持ちましたが、健全ではありません。



 権丈 今の若い女性は、経済力を持つようになっていますから、男性医師がそんな多忙な生活をしていると帰宅したら奥さんがいなかったということも起こり得るでしょう。医師を含めて若い人たちのライフスタイルそのものが変わってきていると思います。



 つまり、昔と状況が違うところが相当あり、医師が献身的に支えてきた医療が崩れつつあるわけです。同時に、小松先生が2006年に上梓された著書『医療崩壊』で指摘されている通り、1999年の横浜市立大学の「患者取り違え事件」以降、医療に対するバッシングが始まり、患者の意識に変化が起こり彼らの要求水準が高まって、ペーパーワークや説明などにかかる時間が増えています。一人の患者を診る時間と労力が、以前とは変わってきているのです。



 小松 その上、医療安全をはじめ、院内で開催される各種委員会がものすごく増えました。人数的にギリギリでやってきたところに患者さんの要求の高まりなども重なり、医師の不満が噴出しているのが現状です。



 権丈 私は、それを「今日的医師不足」と表現しています。



 小松 女性医師の問題もあります。医局制度が維持されてきた背景には、「幻想」があると思うのです。「基礎研究の実績のない臨床医は三流だ、大学教授は、すごい権威のあるポストなんだ、医局あってこその自分だ」などと皆が思っているから、教授に従うわけです。しかし、これはあまり言うと叱られそうですが、女性医師にはこの辺りには関心がない方が多いのではないでしょうか。



 だから、生活を犠牲にした「クソ働き」をあまりしない。これは別に悪いことではありませんが、「クソ働き」で維持できていた部分が、女性医師の比率が増えるとなくなるわけです。



 ——そうした「今日的医師不足」が生じた、つまり医療の環境が変わってきたのは、1990年代後半くらいからでしょうか。



 権丈 先ほど触れましたが、1999年の横浜市立大学の「患者取り違え事件」以降、「医療事故」に関する報道が増えました。それに伴い、利用者側の要求水準が高まってきたようです。



 医療もわれわれの教育も、「サービス産業」です。サービス産業においては、生産者と利用者の信頼関係で、かなりの仕事が「節約」できます。「先生」と呼ばれていた信頼関係が崩れ、一つひとつについて説明責任を負わされてしまうと、仕事量はいくらでも増えていきます。



 小松 報道の影響は大きいのですが、それは医療に限ったことではないと思います。報道全体のあり方が変わってきており、被害者の声を重視するようになった。昔とは違い、被害者が直接テレビに出るようになり、今は生の感情がそのまま映像で流れるようになっています。商売上の理由だと思います。10年前とまるで変わりました。知人のジャーナリストは、これを日本のメディアの「病気」だと言っていました。私は、新聞記者を対象にした講演で「ポルノグラフィー」と口を滑らせました。劣情を刺激する。論理的根拠なしに、憎しみを刷り込みます。



 権丈 さらに、供給要因としては、先ほどもお話しましたが、男性医師そのもののライフスタイルの変化、そして女性医師の増加などが挙げられます。利用者側と供給側、この両者の要因が相まって「今日的医師不足」が生じているわけです。



 医師は、免許取得までに、時間もコストもかかる専門職です。そうではなく、他の職種に転職するハードルが低かったら、こんな労働条件では誰も働かないでしょう。普通の労働市場では考えられないことです。



 小松 「幻想」でやってきたので、仕事が厳しい病院の方が給与は安いという現状もあります。



 権丈 他の産業では、一般的に、中小企業の方が大企業よりも給与は安いのですが、医療界は反対で、規模が大きくなるほど給与が安くなる傾向があります。大学病院の給与は最低水準です。



 医師は、技術者として養成されている面があるので、スキルを発揮できる施設を希望します。規模が大きく設備が充実し、症例数が多い病院には、給与が安くても医師は集まる。反対にスキルが発揮できる状況にない病院では、給与を高くしないと医師は来ません。専門的なスキルが発揮できる職場ほど給与が低くなるのは、専門職市場で見られる現象です。



医療再生にはなぜ負担増が必要か◆Vol.2

「いい医療を受けたいが、お金は出さず」

情報不足で、医療の「事実」が正しく認識されていないことが原因 

司会・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)



 第1回では、医療提供体制から見た現状認識を語ってもらったが、では患者側はどう見ているのか。「いい医療を受けたいが、お金は出したくない」という認識の人が多いという結論だ。「それは子供が、おもちゃが欲しい、と駄々をこねるのと同じ」と虎の門病院・小松秀樹氏は手厳しい。個々人の価値観の問題などではなく、正しい情報が伝わっておらず、「事実」を的確に認識していないことが理由だという。小松氏と慶應大・権丈善一氏の対談の第2回をお届けする。



小松秀樹氏



——では患者さんは医療の現状をどう見ているのでしょうか。各種調査を見ても、患者さんの医療への満足度は必ずしも高くはありません。その上、「医療費は高い」という意識です。



 権丈 二木立先生(日本福祉大学教授・大学院委員長)が、医療制度に関する満足度を国際比較しています(『社会保険旬報』2007年1月1日号)。医療の満足度は、医療費水準(一人当たりの医療費)と生活満足度、この二つの要因で説明できるという結果でした。一人当たりの医療費が低いほど、また生活満足度が低いほど、医療に対する満足度も低い傾向にあります。



 つまり、日本人は何に対しても不満を訴えやすい国民性を持っているようで、生活満足度そのものが低いので、この点を割り引いて考える必要もあります。





 小松 満足度を調査する場合の調査票の作り方も問題ですね。



 権丈 二木先生が紹介されている国際比較は、各国とも同じ質問票を使っているので、この点は問題ありませんが。



 小松 日本の大半の調査は、「文句を言いなさい」と促すための質問票です。「いい医療を受けるためには、お金を払ってもいい」と「最低限の医療でいいから、お金は払いたくない」といった質問票ならいいのです。しかし、現状で実施されている多くの調査は、例えば、「わが国の国民医療費について」や「医療費に係る国民の負担」について尋ね、「非常に高いと感じる」「やや高いと感じる」「やや低いと感じる」「非常に低いと感じる」という選択肢から選んでもらうやり方です。



 この前、内田樹先生(神戸女学院大学文学部総合文化学科教授)と対談したのですが、その際、「庶民社会の無責任」という言葉が出てきました。日本の報道は「市民社会」を前提としていない、「庶民社会」を前提にしていると。「庶民社会」では、堅牢な社会システムが作られており、それが世の中を抑圧的に支配しています。その社会システムが機能不全に陥った際は、文句を言うのが庶民の役割で、「不満のリスト」を長くするほど、社会にとっていいことだとされます。それを前提に新聞も作られている。



 「文句を言いなさい」と言っている社会システムで調査しても、限界があります。



——「文句を言う社会」だと、医療の現状に不満を抱いていても、「ではお金を出して、いいシステムを作りましょう」という話には展開しにくい。



 小松 「いい医療を受けたいが、お金は出したくない」と言うのは、子供が「おもちゃが欲しい」と駄々をこねるのと、ほとんど同じです。この要求に応えるのは無理です。この矛盾に全然気付かせずに、満足度調査を実施しても意味はありません。



 権丈 「おもちゃが欲しいけど、お金は出さない」という意識を持っていればまだいいのですが、「お金を出しているのに、なぜおもちゃをくれないのか」と思っている方が多いのも問題ですね。



——なぜそうした不満になるのでしょうか。



 小松 医療制度や医療費のあり方について、あまり考えてこなかったからでしょう。国民負担率はデータがそろうOECD27カ国中、下から5番目と低い(財務省データ)。そんなことも知られていません。



権丈善一氏

 権丈 一般紙が一面で、日本の医療政策を低医療費政策として取り上げたのは2007年1月23日の毎日新聞が初めてです。そこではGDPに占める日本の医療費割合が「先進7カ国(G7)の水準にほど遠く、差が広がるばかり。2003年のG7平均は10.1%で、日本はG7平均に比べて医療費の支出が2割も少なく」、医師数も「OECD平均に達するには、医師を1.5倍に増やす必要があると」と指摘しました。誰もがすぐに入手でき、かつ医療に関心のある人の間では当たり前のデータなのに、それまで一般紙はほとんど取り上げず、国民の多くが知らなかった。

 

 先日、この企画に係わった記者と話をしていたら、医療クライシスの企画が始まるまで彼らの多くも、日本が低医療費政策であることを知らなかったらしいです。これは不思議なことです。私が初めて書いた書評は、『エコノミスト』から頼まれた二木先生の『世界一の医療費抑制政策を見直す時期』なのですが、これが出されたのは1994年ですよ。毎日新聞が2007年の段階で取り上げたのは、前年に上梓された小松先生の『医療崩壊』の影響もあったのでしょう。毎日新聞が医療クライシス特集を開始した直後から、各紙が日本の医療崩壊を取り上げるようになりましたが。



 私は、大学の授業や一般人向けの講演会で社会保障について話す際、まず「日本の医療費は、OECD諸国の中でも低い」ことを言わなければなりません。学生はこのくらいで驚きます。そこから始めないと、彼らは日本の医療費は高いと思っていますし、競争市場のおかげでアメリカの医療費は安いと思っていますので。



 小松 記者さえも、知らなかった方が多いのでは。



 権丈 いまだに「医療は市場原理に任せるべき」と主張される方がいます。医療を市場にゆだねた米国の方が、日本と比べて医療費が安いと思っているのでしょう。医療に関する基本的な情報が伝わっていないのです。



——報道する側の不勉強に加えて、さらにさかのぼって情報を出す行政当局が情報をコントロールしているという事情があるのですか。



 権丈 情報操作があるなどと批判する方もいらっしゃいますけど、そういうサスペンス仕立ての問題ではなく、世の中の「常識」が原因だと思います。「常識」が、見るべき「事実」見たい「事実」を選択している結果、正しい「事実」を見てくれないのです。年金も同じですが、普通の人が自信を持って信じ切っている素人の常識と専門家の常識とはあまりにも距離があるんですね。



 小松 報道する側、さらにはその受け手の思い込みは、すごく大きいと思います。



 権丈 医療に限らず、税金の問題をはじめ、どの分野でもそうですね。素人の常識と専門家の常識の乖離は、いずこも甚だしい。最近の動きを見ると、新聞よりテレビの方が強いですね。例えば、日銀総裁問題、道路特定財源問題、そして後期高齢者医療制度の問題は、新聞は比較的冷静に論じようとしていましたが、テレビに「3連敗」してしまった感があります。



 小松 テレビは悲惨な一部の状況だけを報道しており、後期高齢者医療制度の全体像などは全然伝えていません。



 権丈 医療について正しく理解してもらうためには、人々の「思い込み」をなくす必要があり、突き詰めれば教育から見直すことが重要です。これは昔から長年言われていることであり、医療だけでなく、税や年金、社会保障全般についても同様で、教育段階、つまりメディアの影響をあまり受けない子どもの頃からきちんと教えなければなりません。



 ところがそれをやってこなかったので、「日本が低医療費政策を取っている」「医師の給与もさほど高くはない」「医師は大変な状況で働いている」などという「事実」が伝っていないのです。税にしろ社会保障にしろ、義務教育段階での教育が重要というのは、結局のところ、大人に情報を提供する今日のメディアは商業主義に走る傾向が強すぎてあまり信頼できなというはなしと裏返しのことなのですけどね。



——医療者の間では、「日本の医療費は諸外国と比べて安い」というのは常識なのに、医療界以外の方の多くはそう考えていない。それは認識の違いではなく、そもそも情報を知らない。医療のあり方を議論する前に、情報を正しく伝えることが重要だという結論です。



 小松 私は様々な場で話をしています。新聞やテレビの興味を引く「言説」を出すと、彼らはそれを取り上げるようになります。とにかく、医療者側から語り、情報を出し続けることが重要だと思います。



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 私も負担増は避けられないと思っている。しかし、財源論はそう簡単ではない。為政者がどのような立場に立つかにより当然異なってくるが、税金その他の国民負担は、その使い道の話を抜きには語れない。



 巧妙な政治屋は、今、まさに、税の使い道の議論をごまかしつつ消費税増税ありき、の結論に突き進もうとしている。その動きには警戒しなければならない。



 また、医師として特に警戒すべきは、政府が“医師数抑制をやめる”とは言っても、“医療費削減をやめる”とは言ってないことだ。さらには、医師数は増やしても、看護師や技師などパラメディカルの増員までは言及していない。政府には、今後の医療のあるべき姿を議論する姿勢はない。



 その前提を持って権丈、小松両先生の対談を読むことは意義深いことだと思っている。



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