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医療事故調査は世界基準でやれ!
(注:鶴亀先生のコメントより頂いた訳文を追加しました。4/17訂正)
<おことわり>
この記事の中で引用させて頂いたWHOの情報は、
ブログ「ななのつぶやき」の記事
『医療安全調査委員会の第三次試案に反対します』
http://blog.m3.com/nana/20080408/1
に対し、鶴亀松五郎先生が寄せられたコメントの中に書かれたものです。
さらに申しますと、akagama先生が書かれた記事
『いちかばちかはやっぱりあかん?』
http://blog.m3.com/akagamablog/20080414/1
の中で、なな先生のところのコメントを引用されたのをみつけて、こりゃあ、
とても大切だから、私も掲載させて頂こう! と考え、引用させて頂きました。
3名の先生に御礼申し上げます。とりわけ、この重要な情報を提供された
鶴亀松五郎先生には心より感謝申し上げます。
========
というわけで、一つ前のブログ記事、
『NHKさん..最後のひとことが違う!』
を受けて、議論沸騰中の通称、事故調、第三次試案なるものを批判したいと思います。
鶴亀松五郎先生が引用されたのは、まさに医療安全の世界基準。
2005年にできたWHOの医療安全システムのガイドラインです。
*WHO - Draft guidelines for adverse event reporting and learning systems
http://www.who.int/patientsafety/events/05/
Reporting_Guidelines.pdf
これは、pdfファイルで、80ページにも及ぶ詳細な医療安全のためのガイドラインです。
そして、その中の第6章には、医療安全システムの調査委員会がきちんと成立する
ために必要なキーポイントが掲載されています。
具体的な根拠も本文中に詳しく述べられています。
では、第6章の本文と、鶴亀先生がコメントに掲載された訳文を是非呼んで下さい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
6. CHARACTERISTICS OF SUCCESSFUL REPORTING SYSTEMS
1.Non-punitive. Reporters are free from fear of retaliation against themselves
or punishment of others as a result of reporting.
刑事罰を行わないー医療事故(診療関連死)の報告者は、報告をしたことにより
刑罰から免責されなければならない。
『説明』No Punitiveー医療安全の報告報告システムをうまく機能させるための最も
重要な特質には、刑事罰からの免責でなければならない。医療事故の報告者も、
それに関係した人も、いずれも報告の結果として罰せられることはできない。
大衆は個人をとがめがちで、悪者を罰しようとする強い圧力があるので、公的な
システムとして、これを実現させるのは最も難しいが。罰することで一時的には
感情を満たすことができるかもしれないが、このアプローチは失敗に帰する。
人々は隠すことのできるエラーを報告することはできない。報告者を刑罰から守る
ことが国家の重要な役割である。これを維持するための最も良い方法は報告者が
第三者にわからないように秘匿することである。
2.Confidential. The identities of the patient, reporter, and institution are
never revealed.
秘匿ー診療関連死の患者名、報告者(医療従事者)、医療機関は決して第三者に
明かされてはならない。
『説明』Confidential(秘匿)ー患者も報告者(医療従事者)も決して第三者に明
らかにされてはならない。医療機関レベルでも、特定の情報が裁判に使われないよ
うに秘匿しなければならない。公的であれ、私的なシステムであれ、秘匿の不履行
は問題とはならなかったが、発覚することは自発的な報告システムを妨げる重要な
要因である。
3.Independent .The reporting system must be independent of any authority
with power to punish the reporter or the organization.
独立性ー報告システム(医療安全委員会)は、報告者や医療機関を罰する権限を
持つ当局から独立していなければならない。
『説明』Independent(独立性)ー報告システムは報告の結果で、報告者や組織を
罰することのできる当局から独立していなければならない。政府のなかで報告部門
と懲戒部門との間に防火壁を作るのは難しいことではあるが、それが報告システム
を維持するために不可欠のことである。
4.Expert analysis. Reports must be evaluated by experts who understand the
clinical circumstances and are trained to recognize underlying
systems causes.
専門家の分析ー診療関連死の報告は診療関連死が起きた状況を理解でき、かつ
問題となっているシステムを把握できるようにきちんと訓練を受けた専門家に
よって評価されなければならない。
『説明』Expert analysia(専門家の分析)ー報告は、それがおこった臨床的状況を
理解でき、それをおこしたシステムをきちんと把握できる専門家によって評価され
なければならない。
データを集めるだけで分析しなければ価値がないのは明らかである。政府が運営する
報告システムで最も失敗しやすいのは、報告を要求するけれども分析に必要な資料が
提供されないことである。大量の報告書が箱のなかか、コンピューターのなかに記録
されているだけである。専門家の意見が、どの報告書でも必要とされる重要な必須の
資料である。
5.Timely. Reports are analysed promptly and recommendations
are rapidly disseminated to those who need to know, especially
when serious hazards are identified.
時宜を得た報告は、特に重大な状況であると判った時は、即座に分析され、
いち早く情報を必要とする人々(医療従事者)に広く周知されねばならない。
『説明』Timely(時宜を得る)?報告は遅れることなく分析されねばならず、その
情報を必要とされる人々(医療従事者)に即座に周知されねばならない。重大な状況
であるときは、迅速に通知しなければならない。たとえば、薬による重大な問題が
生じたときには、医薬安全機構は定期的な刊行物を通して即座に警告を発しなけれ
ばならない。
6.Systems-oriented Recommendations focus on changes in systems, processes,
or products, rather than being targeted at individual
performance.
システムそのものの問題の勧告ー診療関連死の当事者である医療従事者の個人の能力に
目を向けるのではなく、システム、過程、結果の変化に焦点を当てることが望ましい。
『説明』System orientedー勧告は(医療従事者)個人の能力に向けられるよりも
システムや過程や診療の結果に向けられなければならない。これが、いずれの報告シ
ステムから発する勧告の本質により強化される第一の原理である。
それは外見上はひどい個人のエラーに見えても、実はシステムの不備によるもので
ありシステムの不備が改善されなければ、エラーは別の人によって別の時に再発する
であろうという原則に基づいている。
7.Responsive The agency that receives reports is capable of disseminating
recommendations. Participating organizations
commit to implementing recommendations whenever
possible.
反応ー報告を受けた部局は、勧告を周知させることができる。関係する機関は
可能な限りいつでも、勧告を実行に移さねばならない。
『説明』responsiveー勧告が広範なシステムの変化になるためには、報告を受ける
組織が効果的な勧告を作成し、周知させるだけの能力を持たねばならない。そして
勧告を受けた組織は勧告を履行する確約をしなければならない。
<注>本文にはもうひとつ項目がある。
Credible. The combination of independence and the use of content experts for
analysis is necessary if recommendations are to be accepted and acted upon.
Credible(信用)ー独立性とその分野の専門家の結びつきは、勧告が受け入れられ
実行されるためには必須である。
=============
鶴亀松五郎先生による解説を聞きましょうか。
1)WHO加盟国は、上記のWHOのガイドラインを基準として、医療安全委員会相当の
組織を運営しています。
2)現在の厚生省の試案を読む限り、7項目のキーポイント全てがごっそり抜け落ち
ているのです。(WHOのガイドラインの第7章には、国としてしなければいけない
ことが述べられています)
WHOガイドラインと7項目のキーポイントと厚生省試案の違いをみると、
厚労省試案では、
1.医療従事者への刑事罰が可能、
2.医療安全委員会において診療関連死の情報がメンバー以外(例えば裁判所とか
検察とか)にも知らされて裁判の資料にもなる、
3.医療行政や医師を管轄する厚生省の中に医療安全委員会が置かれるため独立性が
ない、
4.診療関連死の分析は専門家以外のメンバー(一般市民や患者家族代表)も加わった
委員会でなされる、
5.分析に時間がかかる、
6.システムの問題ではなく医療従事者個人や個々の医療機関の責任に帰される、
7.勧告を実行するにあたっての財源や人的資源の保証がない、
など、一体全体、なにを根拠に、なにを目的に、なにをモデルにした医療安全委員会試案なのか、全く意味と価値のない内容です。
鶴亀松五郎先生は、上記の理由で試案に反対しておられます。
私ももちろん、大反対です。
akagama先生、なな先生も、Dr.I先生も、Atsullow's cafe先生も、ことり先生も...
みんな、大反対です。
医療を良くしよう、患者さんのために質の高い医療を提供しよう、その熱い思いに
あふれる先生たちは、みんな、厚労省試案に大反対しています。
上のWHO基準と厚労省案を比較すれば、まず、どなたでも、あまりの落差に
びっくりなさるでしょう。
まあ、厚労省といえば、メタボ健診(特定健診)でも、メタボの世界基準と
かけはなれた基準を採用して、いまやフクロ叩き状態です。
そんなところですから、医療安全に対しても、WHOの基準から遠く離れた試案を
出してきても、別に驚くこともありません。
ですが、ピント外れの試案が採用されでもしたら、これは、医療崩壊などと笑って
済ませる事態ではありません。
これこそ、医療破壊、医療滅亡であると訴えたいと思います。
心ある皆さんは、ぜひ、WHOの世界基準を、みなさんのブログで紹介して頂きたい
と存じます。
そして、蛇足かもしれませんが、いくつかの患者団体の皆さんは、医療に対して、
誤った先入観、偏見を持っておられるなら、この機に是非先入観、偏見を捨てて、
虚心坦懐にWHOの基準を見つめて頂きたいと願います。医師と患者が信頼し合う
医療を形成するために、厚労省試案など見向きもせず、世界基準の理由を是非真剣
に眺めて頂くようお願い致します。
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コメント
コメント一覧
現場の具体論はどのように委員会が処理できるか?
申請者は医師となりますから、自分は事故を起こしましたと自己申告するか?
例えば、大野事件や万波医師事件。
そりゃ、現実論じゃない印象です。
役人的な発想ぷんぷんです、手術室で専門家が立ち会わないとミスなどはわからない。
いわゆる「殺人」ではない、つまり医療者の医療行為が患者を死なせたのではなく、病気や怪我が原因なのですから、この場合においての刑事罰の免責はむしろ当然ではないかと思います。でなければ医療者に「ミスは許されない」というだけで、それは医師も人間であるという大前提を考えれば、誰にとっても不可能なこと、無理難題を強いているとしか言えないのではないでしょうか。
m3のブロガーだけでなく、m3以外のブロガーの先生方もガイドラインを参考にしてパブリックコメントの材料にしてくださったり、ブログに転載してくださっているようです。
今回の厚生省三次試案がWHOのガイドラインと背反するのはおっしゃりとおりで、こんな案を成立させたらむしろ医療崩壊を徹底させるだけだと思います。
WHOのガイドラインが、第一に報告者(医療従事者)の刑事罰の免責をあげているのが一番、印象に残りました。
訳してみました。
No Punitiveー医療安全の報告報告システムをうまく機能させるための最も重要な特質には、刑事罰からの免責でなければならない。医療事故の報告者も、それに関係した人も、いずれも報告の結果として罰せられることはできない。大衆は個人をとがめがちで、悪者を罰しようとする強い圧力があるので、公的なシステムとして、これを実現させるのは最も難しいが。罰することで一時的には感情を満たすことができるかもしれないが、このアプローチは失敗に帰する。人々は隠すことのできるエラーを報告することはできない。報告者を刑罰から守ることが国家の重要な役割である。これを維持するための最も良い方法は報告者が第三者にわからないように秘匿することである。
厚生省の試案には、このWHOのガイドラインの第一番目の文言は、一語もありません。
厚生省試案はWHOガイドラインと逆のことをしようとした内容になっています。
Independent(独立性)-報告システムは報告の結果で、報告者や組織を罰することのできる当局から独立していなければならない。政府のなかで報告部門と懲戒部門との間に防火壁を作るのは難しいことではあるが、それが報告システムを維持するために不可欠のことである。
Expert analysia(専門家の分析)ー報告は、それがおこった臨床的状況を理解でき、それをおこしたシステムをきちんと把握できる専門家によって評価されなければならない。
データを集めるだけで分析しなければ価値がないのは明らかである。政府が運営する報告システムで最も失敗しやすいのは、報告を要求するけれども分析に必要な資料が提供されないことである。大量の報告書が箱のなかか、コンピューターのなかに記録されているだけである。専門家の意見が、どの報告書でも必要とされる重要な必須の資料である。
つづく3項目も、厚生省の試案にはありません。むしろ逆の内容です。
”現場の医療者は、武器なしで前線に送られた兵士みたいなもんでさ。”---その通りですね。
現場の医師に”弁慶の立ち往生”を強いる恐ろしい試案です。
厚労省はWHOのガイドラインを模倣しながら、自分たちに都合のよい政策を誘導しています。全く懲りない連中です。
社保庁の次は、厚労省の解体が必要ですね。
Timely(時宜を得る)-報告は遅れることなく分析されねばならず、その情報を必要とされる人々(医療従事者)に即座に周知されねばならない。重大な状況であるときは、迅速に通知しなければならない。たとえば、薬による重大な問題が生じたときには、医薬安全機構は定期的な刊行物を通して即座に警告を発しなければならない。
System orientedー勧告は(医療従事者)個人の能力に向けられるよりもシステムや過程や診療の結果に向けられなければならない。これが、いずれの報告システムから発する勧告の本質により強化される第一の原理である。
それは外見上はひどい個人のエラーに見えても、実はシステムの不備によるものでありシステムの不備が改善されなければ、エラーは別の人によって別の時に再発するであろうという原則に基づいている。
この3項目も厚生省の試案にはありません。
厚生省に効果的に勧告を作成し、周知させる能力がありますか?
医療安全と限らず、現場の状況とあわない間違った勧告と通達と政策しかできないと思いますが。
Doctor Takechan先生、長くなってしまいましたが、これでおしまいです。先生のブログに長々と書き込んでしまって申し訳ありません。
闘病の経験のおありのとまとさまなら、わかっていただけるかと思います。
多くの家族会等は、懲罰があり得ることを最優先の前提としているように感じられます。
再発防止には、医療の専門家が集まらねば対策は出てきませんよね。
鶴亀松次郎先生、引用させて頂き、ありがとうございます。
先生のご尽力に報いるためにも、医療を守るためにも、貴重な資料として広げたいと思います。
なお、せっかく訳して頂いた、各項目の理由の説明ですが、こちらもブログに上絵させて頂きたく存じます。よろしくお願い致します。
makanさま、有難うございます。私も同感です。以前からブログに書いているように、今の厚労省には、医療はもちろん、社会保障全般を扱うための基本理念が欠如しています。残念なことですが,これ以上、彼らに国民の生命線たる社会保障を取り扱っては欲しくない、これが正直な気持ちです。
ところでTakechan先生、あつ先生の分まで猛チャージをかけられておられるような気迫を感じますネ。それだけ第三次試案のもつ危険性がいかに巨大なものかを感じている昨今です。
ただ、私のパワーなど、あつ先生の若さ、熱さの前にはノミの○んたま程度です...
ただ、第三次試案に対し、あつ先生はじめ多くの先生がいち早く抗議声明を出されたのに、私は勉強不足でしばらくながめてしまいました。それが申し訳なくて、今、頑張っているところです。
なお、やっと、鶴亀先生のコメント分など、一部追加修正できました!
本文の訳のほうは、”てにをは”が違っていたり、単語のつづりが違っていたりで申し絵ありません。それでも訳文を掲載してくださった先生のご厚情に感謝しております。
あとは、トンでもない第三次(大惨事)試案は廃棄して、医療専門職が団結して国会議員を動かしてマトモな医療安全委員会の法律を作って頂くしかないでしょう。
それに先生、お聞きになりました?厚生省の議論のメンバーに参加している日本医師会の木下理事が、医療安全委員会を厚生省に置いて問題はないと発言したそうです(ホント)。
WHOのガイドラインでも、行政当局とは独立していなければならないとされているにも関わらず。
この人(木下理事)、どこを見て、そんなこと行ってるんだか。全然。勉強していませんね。大事なことなのに。
先生が、日本医師会の諸行に怒りまくりなのは当然です。
いやはや・・ですね。
まあ、日本医師会の先生はWHOの勉強なんぞしてないでしょうね。個人的感覚で『ま、それでええんちゃう?』くらいにしか思ってないのではないでしょうか? 心ある先生も混じっている、というウワサですので、ひとりくらい、この記事か、なな先生、akagamaせんせい、あつ先生、Dr.Iせんせい、ことり先生などのブログをチェックしてくれてると有難いんですけどね...
無理でしょうかね?
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