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権丈論、再び
2月に京都で医師会の講演会があり、そこで慶應義塾大学の
権丈善一先生のお話を聞いた。その内容は、ブログに書いた。
権丈先生のお話だぞ!
http://blog.m3.com/DrTakechan/20080215/1
そこで、講演後の懇親会があり、その終わり頃、いよいよ
権丈先生がお帰りになるというところで、私は勇気?を出し
て、先生にご挨拶をした。
私はM3comでブログを書いているDrTakechanであることを
自己紹介して先生のご講演に感銘を受けたことを申し上げた。
先生はご丁寧に私に名刺まで下さった。そこで、帰ってから
お礼のメールを差し上げた。
すると、それから数日後、なんと、権丈先生から、
“ブログを見たよ”、とメールが来ていたのだ。おまけに
“力作書いてるね。学生にも見るように言っといたよ”みた
いなことが書いてあり、もう、うれしくなっちまっただよ。
まるで、芸能人と握手しただけで友人になったような気分と
でも言うかねぇ・・。
ま、社会保障の問題で政府の委員にもなっておられる高名な
先生からメール頂いたんだから....ホント年甲斐もなく
有頂天!
ま、そんなわけで(どんなわけや?)、日医ニュースに掲
載された権丈先生のご意見をもう一度拝読しようということ
で、引用しました。
日医ニュース 第1114号(平成20年2月5日)
オピニオン No.47
http://www.med.or.jp/nichinews/n200205l.html
2008年はおだやかな年になるのか,
それともまた事件の連続?
権丈善一(慶應義塾大学商学部教授)
権丈善一(けんじょうよしかず)
慶應義塾大学商学部教授・博士(商学).昭和37年生まれ.
平成2年慶應義塾大学商学研究科博士課程修了.平成14年より現職.
主な著書には『再分配政策の政治経済学I〜IV』(慶應義塾大学出版会)
等がある.
20年ほど前の大学院生のころ,スウェーデンの社会保障を
研究していた後輩が,自慢気に,「スウェーデンという国は
すごいんですよ.選挙で社会保障が大きな争点になっている
んですから」と.私は,「オレたち日本人で良かったよなぁ
……」.
あれから20年が過ぎた.社会保障などという経済学のなか
ではマイナーな領域を,数少ない履修者を相手に講義しなが
ら,のんびりと生きていこうと思っていた.
ところが,世の中,何がどうなったのか,とんでもないこ
とに─映画「ダイハード」のなかのマクレーン刑事のように,
ゆっくりとクリスマスを過ごしたいだけなのに,次から次に
事件に巻き込まれる.わが身の不幸を愚痴りながら,時には
退屈しのぎにジョークを交えて相手を挑発するマクレーン?
─時々,そんな心境になってしまうほど,社会保障をめぐっ
て,今の日本,休む間もなく事件が起こる.
2008年はどうだろうか─残念ながら,今あるダイハード
IVの次作『再分配政策の政治経済学V』が制作される勢いを
もつ事件が起こりそうな気配がなきにしもあらず.
国論三つどもえとなる財源調達論
これまで多くの人たちは,財源調達問題の直視を避けて社
会保障を論じてきた.しかしながら,「社会保障問題とは結
局のところ,財源調達問題に尽きる」などと,ついつい書い
てしまうほどに財源調達論が一番重要な問題だと認識してい
る私は,財源調達問題が選挙の最大の争点にならないことに
は,この国の社会保障,特に医療は変えられないと思ってい
た.そして2008年,いよいよ,社会保障の財源調達問題が,
政治の表舞台に立たされる状況が整ってきたのである.
昨年九月に発足した福田内閣の下では,すぐに,かねてか
ら負担増を言い続けてきた人たちからなる財政改革研究会が
立ち上げられた.そして,この財政改革研究会は,消費税率
を2010年代半ばに10%程度に引き上げることを掲げた「中
間取りまとめ」を11月21日に公表した.そこでは,消費税
の使い道を社会保障給付の財源に限り,名称は「社会保障税」
に変更するよう提言した─今や,仮に真の狙いが財政再建に
ある人たちも,目的税は財政硬直化をもたらすとして「社会
保障税」に反対できる雰囲気ではなくなっているし,かつて
増税はあり得ないと論じていた研究者たちも,徐々に負担増
容認派へのシフトを進めている.こうした動きに対して,自
民党の内部には反対の意思を示すグループもある.このグル
ープは,小泉・第一次安倍内閣路線をリードしてきた,上げ
潮政策の面々からなる.
そして2008年,社会保障にかかわる人たちは,三つの立
場のうち,いずれに付くかの選択を迫られることになる.
●社会保障に使途を限定した負担増を言う第一の立場─
社会保障税の立場を支持するか,
●社会保障のためと言えども負担増は許せず,
政府のムダを削除して財源を確保すると言い切る
第二の立場を応援するか,
●それとも,再分配は成長の足かせになると見て,
成長重視の視点から,社会保障を最小限にとどめる
第三の立場─上げ潮政策の立場を信じるか
である.
今年は,これら三つどもえの論戦が展開されることに
なるだろう.
財源論争の行方は?
早晩とは言わないが,いずれは第一の立場にある者が勝つ.
なぜならば,この国にはこれしか選択肢がないからである.
しかし,そこにたどり着くまでは,紆余曲折がある.
その理由は,われわれの生活における社会保障の役割を理解
し切れない人,仮に社会保障の役割を理解できたとしても,
これを守るためには負担増しか道はないことを理解し切れな
い人が普通であり,そういう普通の人たちの意識を利用して,
権力を手中に収めることを狙う政治家の存在が,これまた普
通だからである.
ここで私は,社会保障関係者,例えば崩壊が着々と進みゆ
く医療の従事者200万人が,もし負担増が実現した場面での
一番の論功行賞を求めたいのであれば,彼らは第一の立場を
支持するべきだとも思っている.仮に第二の立場を支持して
しまうと,政治家間での厳しい権力闘争を経て,ようやく実
現される負担増分からの取り分は嫌が上でも少なくなる.
長い目で見れば,いずれ第一の立場にいる者が勝つとはいえ,
第一の立場にいる政治家は,2008年,この国では相当に不利
な立場に置かれる.次期選挙で,手傷を負う者もかなりの数
出てくるであろう.そうした犠牲を払ってでも,2008年,
いや,その先の将来にでも,万が一,社会保障に使途を限定
した負担増が実現された時,第一の立場を貫いた政治家は,
第二,第三の立場を支持して,自分たちの足を引っ張り続け
てきた者たちを厚遇するだろうか.
なお,第三の立場が勝てば,規制改革会議の委員・経済財
政諮問会議の民間議員,そして『年次改革要望書』をはじめ
とした多くのチャネルを通じて,混合診療の全面解禁を突き
付けてくるアメリカ政府のお望みどおりに,国民皆保険制度
の解体が進められることになるであろう.
負担なくして福祉なし
医療関係者には,第三の立場を支持するものは,さすがに
いなさそうではあるが,なかには,政府のムダをなくせば,
負担増がなくとも,医療崩壊の阻止をはじめとして,日本の
福祉を健全化できると言う人たち─先の例では第二の立場を
支持する人たちの影響力が大きい.ゆえに,医療崩壊阻止の
ための財源が確保される見通しが一向に立たない状態に陥っ
ている.第二の立場を支援する論者は,特別会計には膨大な
ムダが潜んでおり,「特別会計予算を一割カットしただけで,
二十兆円捻出できる」「増税ではなく,歳出カットに全力を」
との説を主張することもある.だが,これはまったくの誤り
である.特別会計の大半は,社会保険関係や地方交付税およ
び国債整理基金などで構成されており,簡単に削れる性質の
ものではない.公共投資も一九九八年度以降,年々減り続け,
対GDP比では欧米の水準に近づいている.公共投資を削って,
医療や福祉に回すには限界がある.また,特別会計の重複計
上分を除いた純計額に置き換えたうえで,債務償還費を除い
た国際的な基準で見た場合,一般会計,特別会計,社会保障
基金,地方財政分を含めた一般政府の規模(一般政府支出の
GDPに占める割合)は,日本38%,米国37%,英国45%,
ドイツ47%,フランス54%,スウェーデン57%となる(
いずれも2005年度).
つまり,わが国は米国と同様に小さすぎる政府であるうえ,
それを賄う負担すら行っていないため,多額の赤字を出し
ているのが実情である.ここで第二の立場を支持してしま
うと,第三の立場を利するだけである.
個々人はともかく,医療団体のいくつかは,これまで,
第二の立場を支持してきたように見える.彼らが歴史的方
針を再考しないのであれば,負担増しか道はなしと論じ続
けてきた私にとって,2008年はどういう年になるのか.
学生と遊びながら,のんびりと過ごしたいのだから,次々
に事件に巻き込まれるダイハード状態は避けたいのだが,
なかなか…….
==============
さて、この三つの立場というもの、なかなか難しい。
正直な話、今まさに国会で争っている道路特定財源の話は
言うに及ばず、そして、天下りに特殊法人、年金無駄遣い、
防衛省疑惑、農水省の無駄遣い、補助金問題・・・・
まさに官僚天国、税金無駄遣いのオンパレード!
となると、常に首を絞められているわれわれ医療者とし
ては、「とにかくムダをまずなくして、医療に回せよ!」
と言いたくなる。つまり権丈先生のおっしゃる第二の立場
でありたいと願うのだ。これは決して間違っているわけで
はなく、正常な反応ではないかと思う。
だが、権丈論によれば、第二の立場を貫くほどの財政の
無駄はない。いくら無駄を削っても、社会保障費を賄うほ
どには財政は余裕がない、ということだ。では、われわれ
はどんな手順でこの難局を切り抜け、輝かしい未来のある
社会保障、医療をこの国に取り戻すことができるのだろう?
こうやって、ブログで訴え続けることも、むろん重要だ。
たとえ数は少なくても、現状を一部の国民に知ってもらう
ことはできる。
しかし、もっと重要なのは、権丈先生がおっしゃってお
られる、「医療は選挙で変える!」ということなのだ。
まず「政権交代」が必要だ。それが、改革のスタートに
なる。
民主党が信頼できるか? そりゃあ一抹の不安はある。
しかし、生活者主体の政治を訴えている以上は、まず信じ
なければならないだろう。
そして、新しい政権が正しい道を歩むか、国民が真剣に
監視し、絶えず意見を政権に届けること、これが大切だ。
政権が変われば、おそらく医療政策は見直され、医療費
を上げ、医師を増やす方向へ動くだろう。だが、そのとき、
では、国民の負担、特に高齢者、弱者の負担をどうするか、
その見極めが重要であろう。当然、財源として無駄のカッ
トは進めてくれるだろう。しかし、それで足らなければ、
消費税アップもありうるかもしれない。そのとき、政治が
きれいごとでなく本質的な財源・税制論を論じるかどうか、
それがカギとなるように思われる。
日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
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コメント
コメント一覧
いずれにせよ、次の選挙ではそういうマニフェストを見たいですね。納得がいきません。あ、トラックバックを送ります。
私もこれまではいわゆる第二の立場(徹底的に歳出のムダを省き財源を確保する)という意見に賛成だったのですが、事はそう単純ではないということを知り、色々と考えさせられました。
それにしても権丈先生、あれだけ見事な白髪をたくわえており貫禄充分だったのですが、実は45歳と自分とそう変わりがないことを初めて知り、大変驚きました。
これからもご苦労が絶えないかと思いますが、頑張っていただきたいですね。
私は、権丈先生のお話はすごく理解できると感じるのですが、いまだ第二の立場を捨てきれない思いもある、そういう状況ですかね。
とにかく、これ以上政府が無茶をやらないでほしい(たとえ、政権が変わろうと)、その願いばかりですね。
先生もizaでますます吠えて下さい、期待しております。
ヤバクリ様、ありがとうございます。
ま、権丈先生の年齢を考えると、私は恥ずかしくなってしまうので...
私の中では、年齢不詳のエライ先生、ということで...
まだ100%権丈論に傾倒したわけではないのですが、先生の洞察力・分析力は素晴らしいと思いますし、医療の未来に期待を感じさせて下さるお話でもあります。今後も注目して行きたいと思っています。
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