昨日、抗血小板薬の勉強会で博多から帰ってきたばかりなのに、今日は午前中は診察、そして夕方は地元で降圧薬の治験:CASE-Jの勉強会に出席。開業してからなかなか土曜日の各種勉強会に出席するのはおっくうになっていたのだが、熱心な薬問屋さんに説得されて、行くことになってしまった。CASE-Jとは、降圧薬の中で最近使用が増えているARBの代表格、カンデサルタン(商品名ブロプレス)の効果をCa拮抗薬の代表格アムロジピン(商品名アムロジン)と比較検討したもの。いずれもわが国で頻用されている薬剤であり、注目されていたことは確か。=======================================================高血圧症患者4700人を対象として平均3.2年追跡した結果であり、それなりの重さはある。また、糖尿病を合併している患者が40%以上を占めることは、血圧を下げること以外に合併症を押さえる効果を期待したものであることは間違いない。で、この大規模臨床治験の結果を簡単にまとめると、どちらも追跡期間中の死亡者に有意差はなかった。まずは五分五分か。ただし、カンデサルタンを開発、発売している武田薬品主催の勉強会なので、当然のことながらカンデサルタンの優れている点が報告された。それによると、(1)3年の追跡の初期はアムロジピンやや有利、後半はカンデサルタンが巻き返す。(2)肥満患者の死亡はカンデサルタンの方が少ない。(3)経過中に糖尿病が新規に発症する患者はカンデサルタンの方が少ない。(4)高齢者や腎機能障害のある患者ではカンデサルタンの方が安全。==============================================================さて、この勉強会では私が個人的によく知っている先生が何人か司会やコメンテーターとして出席されていて、今回の治験の結果について、実際の臨床の場にどのように反映させるべきか、熱い議論がなされた。正直なところ、この治験では、まだデータ解析が全部報告されたわけではなく、ブラックボックスがある。例えば、カンデサルタン服用患者群とアムロジピン群とで、服用していた薬剤にどのような差があるのか、両群患者で、コレステロール、中性脂肪、喫煙、飲酒などの状況が同じかどうか、両群で経過中に死亡した患者の具体的な死因(心臓病か脳卒中か癌か感染症か?、など)がどうなっているか、といったところは気になった。いつぞやのブログでも書いたが、統計のマジック?が使われているかどうかも気になるところ。つまり、ある分類で差が出ないと、全く別の分類を使ってみたり、などということはいくらでもあるからだ。これだけ多くの患者さんから得たデータであるだけに、早くその全貌を知りたいところである。製薬メーカー側の宣伝文句だけを信じてしまうのは、まだ早いと感じた。(ただし、どちらも現実には私もよく使っている薬剤であることは間違いないが。)=============================================================ついでに、もうひとつ気になったこと。今、はやりのメタボリックシンドロームへの効果を前面に押し出そうという解説。肥満患者の死亡リスクをへらす、とか、糖尿病の発症を押さえる、とか、このあたりに結構力が入っていた。だが、私は、“メタボリックシンドローム”という用語を頻用されるとどうも違和感を感じてしまう。そもそも、厚生労働省が、医療費削減のため、予防医学を推進するために無理矢理導入したことばではないのか?。難しい横文字を使わなくても、『肥満は駄目よ。血圧下げましょう。糖尿病になっては駄目よ。コレステロールや中性脂肪も下げましょう。』と、個々の危険因子をしっかり減らせばいいだけだと思うのだが。実際に、ボクらが外来で患者さんの治療をするときは、そういう手順で進むのだ。難しいコトバだけが一人歩きしているのは、予算獲得に有利、という側面が主になってしまっているだけではないか。そして、この治験も、何となく厚生労働省の顔色を伺っているようで、ちょっと腑に落ちない、というか、モヤモヤが少し残るのだ。参加者の多くは、データがまだ一部しか出ていないためのモヤモヤがかなりあるようだった。そして、ボクは、それに加えて“メタボリックシンドローム”に関するモヤモヤもかなり残ってしまった。なかなか日本での治験は難しそうだなあ。
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最近、ますます強く思うのだが、政治家にせよ、マスコミにせよ、医療費削減を唱える人たちが使う言葉、“医療のムダ”って何??。医療費が高騰しては困ることはわかる。日本の医療がいびつなことはわかる。医療にムダが存在することも多分事実だろう(医療費のムダ使いをなくす、と言われて、何を減らせばいいのか、すぐに分かる人はどれだけいるのか?)。========================================================でも、一方で、国際社会を見てみれば、日本よりはるかに医者の数が多い国が多数。医療費が増えている国も多数。日本の医療のどこがムダと考えて発言しているのだろうか?。療養型には無駄な入院が多い、という人もいるが、核家族化したわが国で、患者が病院から放り出されたら、誰がどのように世話をするのだろう?。介護保険もますます中途半端で十分な介護は難しくなっている。何万人も介護難民を作ることがムダをなくすことなのか?。これ以上削るとしたら、どこを削るのか?。確かに削れるところは存在する。私は私なりにムダではないかと思うことがいくつかあり、その点については確信を持っている。一方で、声高に医療のムダを叫ぶ人は、呪文のようにこの言葉を叫ぶだけで、実際には何がムダなのか、ちっともわかっていないのではないか?。もし、わかっているというなら、誰かきちんと説明してみてはくれないだろうか?。私は未だに、納得できる説明を聞いたことがない。もしあれば、誰か教えて欲しいものだ。ムダなるものをいかに削れば国民にとっていい医療ができるのか。
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博多まで行ってきました。何しに行ったかと言うと、某製薬メーカーのお勧めに従って、ある新薬の後援会に参加した、ということです。この新薬、すでに発売されて半年になります。でも、これまであまり熱心に売り込んで来てませんでした。それが、ようやく本気で宣伝するらしい、ということのようです。=====================================================医療関係者でないと、ピンと来ないであろうこの話、少し詳しくお話ししましょう。皆さん、脳梗塞の予防、というとどんな薬を思い浮かべますか?。要するに血栓を予防するわけですから、俗に言う、血液サラサラにする薬です。世界で一番使われているのは、言うまでもなくアスピリンです。フツーのアスピリンの粉末でいいわけなんですが、なぜかこの国では、商品名“バイアスピリン”とか“バファリン81”といった製剤だけが脳梗塞予防の適応があります。フツーのアスピリンは、解熱剤として、あるいは鎮痛薬として使うことになっています(そういう病名しか適応疾患がない!?)。====================================================そして、次に多いのがチクロピジンという薬品、商品名“パナルジン”。これは、アスピリンより若干切れ味が鋭い印象ですが、副作用に顆粒球減少とか肝機能障害などがあり、ややアスピリンより慎重に使うことになっています。(もっとも、アスピリンにも胃潰瘍やアスピリン喘息などが生じることがあります。)=======================================================で、今回、講演を聴いたのが、パナルジンの後継薬と言われるクロピドグレル、商品名“プラビックス”。実は、クロピドグレルは世界中の主要国で使われていて、日本は世界で103番目(だったか?)に承認された国、ということになります。欧米では10年前から使われている薬剤が、日本では今年やっと承認された、これって、実に不思議なことです。抗ガン剤や向精神薬でも似た話はたくさんあって、世界の標準薬が日本で使えない、ということが非常に多い、という問題があります。要するに、外国でいかに承認されようと、日本の厚生労働省は、日本国内で治験をしていいデータが出ない限りなかなか承認しないことになっています。以前、世界中の何千という薬品の中で、最も必要な100品目というのが設定されました(毎年、更新されているそうです)。世界中の第一線の医学者が検討したものです。しかし、この100品目の中で日本で使えないものが20か30品目くらいあったそうですから、なかなか辛い話です。その一方で、外国では全然使われていないが日本だけで承認されて使われている薬もまだまだ存在します。日本の医療の特殊性、というものを実感していただければいいのかな。==========================================================================さて、本題のクロピドグレルですが、数年前に治験が行われてもう少しで承認というところまで行ったのですが、1例だけ(?)問題となる副作用の症例が出たそうで、そのため発売を見送り、改めて再治験ということになったようです。そこで、製薬メーカー側としては、今年販売を開始してからも慎重に慎重を重ねて、販売後半年かけて、主要な病院(国立循環器病センターとか、大学病院とか)での販売後調査が一段落するまでは、積極的な宣伝を控えていたらしいのです。そして、ようやく本気で販売することになった、という訳です。それにしても、世界で多くの臨床データがそろっていて、エビデンス(信頼できる統計的証拠)がほぼ確立している薬剤が、今まで使えなかった、というのも困ったものです。少なくとも、これまで使われていたチクロピジン(パナルジン)よりは、副作用が大幅に少ないし、アスピリンに匹敵する予防効果があることは明白です。薬剤選択に対して、厚生労働省よりもっと世界を見て公平に判断できる機関ができたらいいんですがね。=========================================================================そこにはもう一つの壁があります。医師不足です。日本では、一人の医師が担当する患者数は、先進国の中では突出して多い、薄利多売の医療制度です。医師が不足すると、正確な治験ができません。その結果、わが国の治験は正確性に乏しい、という国際評価が定着しています。これもゆゆしき問題ですが、一向に改善されません。医師不足は年々加速している現状では、ますます困難になるでしょう。================================================================ただ単に、薬の講演会を聴きに行っただけですが、いろんな国内事情を垣間見ることができました。やはり、この国の医療制度は歪んでいます。なお、クロピドグレルですが、アスピリンより薬価はかなり高価なので、じゃんじゃん使う、ということはないでしょうが、効果はかなり高いので、そこそこ使用されるであろうと推測します。そして、1〜2年のうちにチクロピジンと置き換えられて行くでしょう。でも、冠動脈狭窄に対し、ステントを入れた場合、今はアスピリンとチクロピジンの併用を2か月ほど続けることが望ましい、と言われていますが、わが国ではまだクロピドグレルはそういう使用に対しては承認されていません。こういう無意味なカベは早く取り除くべきだと思います。==========(追)後援会の後の意見交換会と称するお食事会。とても豪華で美味しいものをたっぷり頂きました。これで、長引いたカゼもかなり良くなるかな?。そして、一夜明けて、3日には太宰府天満宮に行ってきました。しっかりお参りしてきたので、きっとクリニックの患者さんも増えてくれるでしょう。(頼むで、天満宮さん!)
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