厚労省は厚生省+労働省であり、当然労働者の健康管理にも責任を負わねばならない。しかし、厚労省自身の調査で、残業時間が月100時間を超える従業員がいる会社が7社に1社あり、うち9割の会社の会社では医師による健康チェックが実施されていないことがわかったそうだ(9/30朝日新聞)。=============================================また、過労が引き金となり心筋梗塞や脳出血などを発症し、05年に労災認定を受けた人は前年より12%増え、過去最多の330人に上っている、とのこと。ただし、この記事では労災認定の数だけしか発表がなく、実際に発症した数、死亡数などは報告されていない。(いつも思うのだが、厚労省の発表で出てくる数字は特定の見方だけを伝え、全体像がわからない。厚労省にも報道する側にも責任があるのだが、要は、発表に責任を持つ、内容に責任を持つ、そして悪い内容なら修正する責任を持つ、そういう態度が欠如しているのではないか、ということだ。)===================================================憶測でものを言うのはいけないが、会社を対象とした調査なら、病院はおそらく含まれていないだろう。今でも病院ではサービス残業などあたりまえ。残業せずに患者が悪くなったらいつ訴えられるかわからないし、現実に残業しなければまともに仕事をこなせない。ボクの経験でも夕方7時頃になってようやくカルテを書く時間ができた、とか、7時頃、疲れて腹へって早く帰りたいのに、診断書やら診療情報提供書やらいろんな書類があって終わらないことは日常茶飯事だった。残業が月100時間を超す医者など多すぎて数えられないくらいだろう。厚労省でも多少は調査をしているようだが、どうせ発表しにくい数字、全体像の分かる数字はなかなか世間に知られないだろう。==============================================================しかし、残業は医師の専売特許ではない。会社員も残業が多い。先日、ある生保会社に頼まれて大阪で生保加入者の診査をしたのだが、夜8時前、私に同行した生保職員が会社に終了の連絡をしたら、大勢残業しているようだった。それどころか、リコール問題で悪名高きM自動車に勤務している知人は、数年前まで連日帰宅が深夜になっていた。当時35歳くらいだった彼は疲労で早く寝るために酒量が多くなり、職場でタバコも多かった。酒のせいで家庭でトラブルが多くなり、妻が子供を連れて実家に帰ろうと真剣に悩み、家庭崩壊寸前だった。そして、彼はある朝、急にふらついて歩けなくなり、言葉もしゃべりにくくなり、家族の連絡で私の勤務する病院に運び込まれた。症状は、右不全片麻痺と失語。幸い、治療開始後数時間で症状はほとんどなくなった。病名は一過性脳虚血発作ということになる。35歳で、である。会社を訴えてやれ、とボクは言ったが、彼は笑っていた。.....最近、久しぶりに彼に会った。元気に仕事をしているという。同じM自動車で。何でも、会社でも労働時間が長いので、労働環境を少し配慮してくれたらしい。しかし、それでも帰宅は毎晩11時過ぎ(無論、朝から、である)。彼はとても仕事に情熱を持っている。自分でも今の仕事が好きなのだと。だが、その情熱に甘える上司はいったいいかなる人物なのだろう。疲れて頭が働かなくなっている医師に向かって、去年より診療報酬が落ちたからもっとがんばれ、と言い続ける病院長、理事長、事務長と似たようなものか。......彼は帰り際にこそっとボクにささやいた。「本当のことを言うと、今でもことばが出にくい、しゃべりにくい、と感じてます。」頼むから再発しないでよ。今度やったら、一過性で済まないかもよ。========================================================ちなみに残業が多い社員に健康チェックをしているのは主に大きい事業所で、小さくなるほど実施率が下がる(従業員100-299人で38.4%、50-99人で20.6%、30人未満では2.7%だそうだ)。中小企業は辛いね。=========================================================それにしても、基本検診やら企業での検診やら、重複していることも多々あり、厚生省と労働省が別々に予算を取ってやっている、という印象が強い。医療費削減を言うなら、制度も一本化すればいいんじゃないか。予算取りのために生活習慣病やらメタボリックシンドロームなど、目新しいことを言うが、中身はしょせんは「危険因子の管理」である。ゴチャゴチャ言う前に、医師が時間をかけてきちんと診断し、説明する時間を確保する施策の方が重要ではないか。
固定リンク
|
コメント (6)
|
トラックバック (0)
トラックバック
この記事のトラックバック URL
http://blog.m3.com/DrTakechan/20060930/2/trackback
コメント
コメント一覧
2004年 私が体験した時間外労働は夏場の3ヶ月間夏休み返上の月平均58Hでした。夏の暑さとノルマに追いかけられ、4分30秒に1台作成しないと追いつかない生産台数でした。
過労と同僚の心無い中傷で、心身ともにダウン寸前でした。たまにくる直属部長の言葉はただ、「頑張ってください」
頑張って疲労ピークに達している部下への言葉は最後まで「頑張ってください」
(何の為に働くのか)やがて鬱状態(自殺願望)に・・・
その年10月がにメニエル病で緊急入院。そして詳しい検査にて、SCDが見つかりました。
その後、配置転換をねがいましたが、答えはNO。
産業医もいない会社でした「怪我をて労災→倒産となり、従業員・家族が路頭に迷うから、迷惑だから辞めてくれ」
傾きかけている会社の売上の為、散々人をこき使い壊れれば「お役御免」と解雇通告。
所詮、元気な”者”だけを大切にする企業だったのだ。
次に誰がなっても医療も福祉も国民の安全も守る事はできないでしょう。
・・・擁護するつもりは全然はなっからありませんが・・・人名を出す時は一字は伏字にされるのが良いかと思います。日本国内に同性同名も居られます。たまたま、同じ名前を持った方は正直辛いように思われて居る人もいるように思います。
色んな考え方はあると思いますが、違う視点から見て、ふとyoshikaは思ってしまいました。
難しい問題です。
全ての国民は平等であるべきなのですが、議員が政権を握る事、地位や名声、利己主義にばかりに目を向けて、国民に必要な(欠かす事の出来ない)医療・福祉・介護を充実させようという気持ちがなければ、改善は愚か全ての国民の安全と保障は守られないと思っています。
叫ばなければ改善される事もないですし、崩壊していくだけなのですが・・・
難しい問題ですが、医療を取り巻く環境を良くする為にも、声を出す事を止めてしまわないで下さいね。でなければ、私の家族のようになります。これ以上、同じ思いをする人が出ないようにする為にもお願いします。
睡眠時間は殆んど取れてないで~~~す(笑)仕事で疲れているのですから、夜はゆっくりと休むようにして下さい。先生が倒れたら先生の家族も患者さんも悲しみますよー。
コメントを書く