謝礼に関して私があのような(ふたつ前のBlog記事)意見を述べれば、当然何らかの反応があるのではないか、とは思っていました。もしかすると医者仲間からも、何も今,あんなこと書かなくてもいいのでは?、と思われているかもしれません。そして、予想通り?、ある患者さん(ももこさん)から厳しいコメントを頂きました。そこで、私自身の考えを整理する意味も含めて,もう一度記事として書いてみることにしました。もしよかったら、前の記事を読んでおいていただけますか?(そうでないと内容がわかりづらいでしょう)。================================================まず、「必要悪?」、という点について。私は正直に言って、悪とは思っていません。謝礼を送ることが感謝を示すことだ,と考えている人が贈る行為は悪とは思いませんし(見返りを期待するかどうかは問題だと思います)、貰うことが悪だとは言えないと思っています(貰った人だけ優遇する医者がいるとすれば、これは大問題です)。前にも述べたように,私は謝礼を頂いた患者さんだけ優遇するような医療はしていません。=================================================順序が逆になりましたが,では、「必要悪?」の「必要」かどうか、という点については,私の正直な気持ちは、「別に必要ではない。」ということです。必要ではない,というのと、必要どころかそんなものがあってはいけない、というのは全く別ですよね。そして、コメントを下さった方には申し訳ないのですが,私の考えは前者に近いです。となると、必要ではないの裏返しはあってもよい、です。その通り、私にとってはあってもそれほどまずいことではない、と考えられることなんです。(法的に違法であればそれは違法で仕方ありません。)====================================================恐らく、このあたりですでに患者さんである「ももこさん」は、溜息をついておられるかもしれません。やっぱり医者の考えることはヘンだ、と思ってられるのでしょうか?。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−私は患者である「ももこさん」に議論を吹っかけたり批判するつもりで書いているわけではありません。私は自分で書いた文章には自分で責任を持っているつもりですから,前言を今すぐ撤回するわけでもありません。ただ、「ももこさん」のコメントの中で気になったことをいくつか書いて見たいと思います。=======================================あなたが謝礼を渡したことが無い、というのはごくふつうのことで、それをとやかく言う理由はありません。でも、 >同室の患者が退院するとき、いつも話題になるのはDrへの謝礼です。「あの人は沢山したそうだ。だから先生はあの人には親切だ」とかいう話が患者の中で出ていることをご存知ですか。貧しい老人が謝礼の心配をしているのをご存知ですか。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−このコメントは非常に気になります。医者はカネを渡さないと丁寧に診てくれない人種だ,と感じている人が多いのでしょうか?。私がかつて一緒に仕事した病院の医者の大部分(多分95%以上)はそんなことはなかったと思いますよ。もしあなたやあなたと同室だった患者さんが実際にカネで差別された実例を御覧になったのなら仕方ないのですが,そんな話を多く聞いてそうだと思い込んでいるだけではありませんか?(新聞を見れば、医師像が歪められている、と多くの医者は感じます。一方,患者さんや医療と日頃関係ない人はナルホドと感じるでしょう。それが長年のうちに頭に定着してしまっているということはないでしょうか?)。この発言を見て、私はとても残念ですし、多くの医者が「あ、やっぱりオレ達はそういう風に見られてるんだ。」と感じているでしょう。最近のわれわれは、いろんな事情で極めて被害者っぽく感じてしまう状況に追い込まれています。============================================================患者さん、特に命にかかわる病気を持った患者さんの気持ちはかなりの部分、わかるつもりです。私の周囲にもそのような患者さんが数人います。患者さんの立場なら,十分に時間を取って,病気の説明、治療法の説明、予後の説明など優しい言葉で正確に伝え,患者さんの御意見もしっかり聞く耳を持つ医者でなければなりません。では、医師としての能力も優しさも十分に持ちながら、あまりに多くの患者を受け持ち、忙しすぎて患者さんやご家族と満足な話も出来ず、それでも時間がなくてクタクタになっている医者、それは悪い医者でしょうか?。きっと患者さんにとっては悪い医者なんでしょうね。ろくに説明もしない。時間ばかり気にしている。言葉が荒い。etc.でも、そんな医者達も多くは思ってるはずです。「オレはもっと有能で患者に優しいいい医者になるはずだった。なんでこんなひどい環境しか与えられないんだ。」とね。===================================================自分の命がかかっている患者さんにとっては、目の前の主治医が医療のすべてです。でも、我々医者は、国に、康生労働省に突き付けられた医療制度改革という名の医療破壊制度の中で荒波に翻弄され、右往左往して、とにかく目の前の患者の治療に専念しなければならない。医療の危機なんです。国民の命を守るシステムの危機なんです。それを訴えたくてブログを書き始めたようなものです。謝礼なんぞとは事の重大さが違うんです。=============================================================最期に謝礼の話に戻りましょう。私の立場で言いたいことは,謝礼が悪であるなら,国公立は公務員だからダメで民間、開業医は問題ない,といった意味不明な差別はやめて、医師法のようなものできちっと定める。公務員法は夜まで働く医者に適用するようなシロモノではない。当然,贈る方にも明確な規制を定める。そして、過去に歪んだ医師像を国民に植え付けたマスコミや厚労省が態度を改める。医師会なる業界保護団体も患者のための医療を目指す団体に生まれ変わり、政党への献金など禁止する。そういう医療全体の改革のストーリーがあってはじめて解決に近づくのではないでしょうか。============================================================私がストーリーを勝手に変えて違う話にした,と感じる方が多いかもしれません。でも、それは仕方ありません。私は自分の人生の経験の中から今の考え方になっていますので、すぐには変えられません。ただ、人の話はちゃんと聞いていますし,納得すれば修正することもあり得ます。「ももこ」さんへ。これは、あなたのコメントへの返事にはなっていないでしょう。でも、この記事を書いた意図を少しだけでも汲みとって頂ければ幸いです。なお、私の親戚にもあなたと同じ病気で戦っている人間がいます。必死にふだんの生活をしようと頑張っています。家族も同様です。私には何も出来ない(信頼する専門家を紹介はしましたが)のが辛いです。こんなとき、私も医者なのに、と思ってしまうことがあります。医者であり続けることは、嬉しくもあり辛くもあり、でもそれが私の人生なんですから仕方ありません。私の発言が不愉快であったことと思います。でもそれが私なんですからどうかお許し下さい。また、いつかコメントを下さることを願っています。
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