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天使のお見舞い

Dr.Market / 2009.05.15 17:01 / 推薦数 : 3

Jさん、まだ飲んでませんよ。

これからです。

飲み過ぎないようにします。

 

僭越さん、いいですね。

他の楽しみがあるって素敵ですね。

 

私も、何か、素敵なものを見つけたいと思います。

 

 

さて、3番目のお話をします。

 

これも、入院中の出来事。

 まだ、ステロイドがガッツリ入っていた頃。

私は、個室にいたわけなんですけど、高熱も時々出ており、日中もウトウトしていることが多かった。 

 

「パパー」

小さなかわいい声で、目が覚めかけた。

 

でも、パパと呼ばれる筋合いのものはいないので、隣のお部屋の声が聞こえているのか、夢を見たのかと、そのまま横を向いて眠っていた。 

 

「パパ、大丈夫?」

また、今にも泣きそうな子供の声。

 

 うっすらと目を開けると、目の前に、3歳くらいの女の子が立っていた。

 

 私にも終に、天使のお迎えが来たんだ。

でも、なんで、天使が私をパパと呼ぶ?

 

 すると、その後ろに、素敵なお母さんが。

「セイちゃん、パパ寝ているから、そっとしておこう」

 

 あれ、私はいつの間にか結婚していて、子供までいたんだ。

 

記憶喪失?

 

今は、何年?

 

あれ?

 

私はだ~れ?

 

夢?

 

 

 ベッドから起き上がり、二人を見る。

 

 後ろ姿の素敵な女性は、入院用の一式をロッカーに丁寧に入れていた。

 

 やはり、記憶がないんだ、私は。

 

なんて言えばいいんだろう。

わからないって言ったら、ショックだろうな。

わかるふりしても、本当は記憶がないわけだから、いずればれる。

子供だけには、記憶がないことは悟られないようにしなきゃいけないな。

 

 そんなことをもの凄いスピードで考えていると、 

 

「あれ?パパ?」

 

とセイちゃん。 

 

 その声に、振り向いたお母さん。

 

「えっ、あっ、・・・・」

「すいませんでした。間違えました」

 

と荷物をまとめ、セイちゃんの手をとり、私の部屋を後にした。 

 

 えー、そりゃないよ。

 

私の奥さんと子供じゃないの?

 

私は記憶がないだけじゃないの?

 

 記憶がなくなっていることの方が、良かった気がした。

ほんとうに一瞬だけ自分の家族がいたんだから。

二人がいなくなった沈黙の部屋。

これほど寂しく感じたことはなかった。 

 

 後日、セイちゃんとお母さん、お詫びに来てくれた。

隣に緊急入院した男性の家族であった。

実は、名字が一緒だった。

それで、案内が間違えちゃったみたいだ。

嬉しいことに、おいしそうなケーキを持ってきてくれた。

 

 「セイちゃんだっけ、ケーキ一緒に食べよう」

そう声をかけると、

お母さんに「いいの」って尋ねる。

「だめよ、セイちゃんの分はパパのとこにあるからね」 

 

「じゃあ、冷蔵庫に入れておくから、いつでもおいで」

 そう言うとニッコリして、「バイバイ」と手を振って隣の部屋に。

 

 あー、子供っていいな! 

 

結局、何度かセイちゃん遊びに来てくれたが、残念ながら一緒にケーキを食べることはできなかった。

 

 だって、私は高血糖状態。

怖い、いや仕事熱心な看護師さんに、ケーキは没収された。

冷蔵庫ではなく、彼女のおなかの中に。

そして彼女の皮下脂肪へ・・・。

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