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すっかり夏らしくなったロンドンですが、ずっと部屋に籠って黙々と医療の規制に関するテキストと論文を読んで作業しています。ただでさえ資料等でめちゃくちゃな部屋に、オーダーしていた英国家庭医関連の資料がどっさり届いて、更に混乱。汗がじっとり…、暑いなあ、で28℃。東京の家族に言ったら怒られそうな感じの暑さです…。

さて、英国の医師免許更新がようやく始まるようです。

2005年からの実施を延期してから、実際に働く医師たちも「何時になるのかなあ」なんてのんびり言っていたこの大事業。BMJのサイトにまず2009年の4月から試験的段階的に実施されることが報道されていました。

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Published 24 July 2008, doi:10.1136/bmj.a988
Cite this as: BMJ 2008;337:a988

Government plans to revalidate doctors every five years

Owen Dyer

All doctors working in England are to face annual appraisal of their skills and performance and will have to reapply for a medical licence every five years, according to plans announced by the UK chief medical officer, Liam Donaldson.

For most doctors not in substantive training posts revalidation will involve two components—relicensing, subject to their adherence to generic standards, such as the General Medical Council’s Good Medical Practice guidelines, and specialist recertification, which will depend on meeting criteria to be set by the relevant medical royal colleges.

…(以下、文章つづく)

ーーーーー

 あっ、英国といいましたけど、イングランドのことのようですね。既にすべての医師が毎年の評価(appraisal)を受けているのですが、それに加えて医師免許の更新と専門医資格の更新を義務づけられるとのこと。5年おきとはいえ、結構大変でしょう。もちろん講習会等に参加して”ポイント”をためて終わり、や筆記試験で一発終了…というシンプルなしかし医師の実際の能力を反映しない評価システムではなく、日常診療の内容やその質評価を反映したものになるのでしょうから(その合意のためずっと免許更新導入が延期されていた)、内容がどういうロジック・方法でどう実施されるのか楽しみです。

英国医師会は基本的には賛成の姿勢を示しています(国民の医師への信頼回復の手段として)が、医師の中では「医師への侮辱も甚だしい」「医師いじめだ(意訳)」といった批判もでているのが事実。「免許更新にかかる手間や時間のため、患者に使える時間が減り、患者が結局被害をこうむる」と主張する医師もいました。これは私には結構新鮮で「ああ、この医師は就業時間”内”に患者へのコンタクト時間を減らして、(もしくは患者への不利益を自分が提供しながら、それを政府のせいにして?)、免許更新の準備をするんだ…」と、日本の医師なら空き時間か就業時間後にするだろうという発想が違うんだ…とちょっと感心しました。

 ビジネスや広告の世界でも「消費者が変わった。ビジネスも広告もかわらなきゃ」(『明日の広告』)と根本的な戦略の転換を求められていると聞きます。この英国の医師免許更新も、患者が消費者へと変わった流れの一環。日本も同じです。変われるか。

 

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2008.07.26 12:52 |  研究  |  医療制度 / 行政  |  海外留学  |  tarogo  | 推薦数 : 0

わかった気になる危機

昨日は、いろいろとお世話になっている先輩の方に時間を取って頂き、英国医療に関するヒアリングをさせて頂いた。っといいながら、先輩お勧めのパブに行き、エール(例えばこのESBIPA)を楽しみながら、「日本の医師・医療の素晴らしさ」をふたりの日本人医師が声高らかに、ペニシリンを発見したアレキサンダー・フレミングがよく通ったというパブで語り合う…という感じ。で、充実。ほんとうに有り難うございました。ウチのすぐ近所にもフレミングの家だった場所というBlue plarqueがあり、家族で「左手の法則っ」なんて指の形をつくっていましたが、ああっあれはフレミング違いだったのですね…。無念。(ちなみにそのジョン・フレミングもロンドンにゆかりのある人です)

その先輩はNHSで働いていらっしゃるのですが、お話を聞かせて頂いて痛感したことがあります。「いかに自分がみたいものを見ているか」。

当たり前と言えば当たり前で、私のバックグラウンドが家庭医で、かつ英国での医療経験は友人の優秀な家庭医のもの。出産は前首相のブレアもつかったChelsea & Westminster Hospital(もちろんウチはNHSで)。子供の入院も小児救急の施設のあるSt Mary Hospitalがご近所にあり、迅速かつ清潔・安心。納得いかないことがあれば、医師であることを明かし、ネゴできる…、とくればかなりポジティブに偏っているはず。その上に、”政策のフットボール”と揶揄されながらも、多くの資源を投入し作り込んだ英国の医療政策を見て学びながら、「結構いいかも…」とすこし視野狭窄になりかけていたところに、実際の病院内のお話を聞き、すこし目が覚めました。できるだけ実際の効果・実務に即し、批評家になりなくなくて、自分の直接の経験を重視していましたが、政策の学びでは、それが全然足りていない。

同じようなことが、日経ビジネスオンラインに書いてありました。「大回りして、けもの道を往く」

医療政策の専門家/研究者としては、全くの駆け出し、1年生。表面的な政策やデータを追うのは上手くなってきたが、まだまだです。これを口実に、できるだけさまざまな場所に出向いて経験を積みたいと思います。って、またパブに行きたいだけかも。

追伸:同時に、アマルティア・センの恩師、アミヤ・ダスグプタの「現実にあまりに直に向き合うと、なにが大事であるかを見失ってしまい、現実と接点をもつどころか大間違いを冒す危険がある。現実の社会問題を正しく見るためにこそ、その準備として理論が必要なのだ」 という指摘を忘れたくないです。

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ご近所のカフェでは英語を聞いたことがない。

隣の親子はトルコ人で、向かいの女性ふたりはイタリア語でまくしたててる。よこの怪しげなカップルは…あ、ロシア人?そして私の横で、私と同じく仕事に励んでいるあちらの男子は文字を右から左へ書いているところをみると…、中東出身。このマルチカルチュラルな人口構成に加えて、この街は通りを歩くと水パイプの甘ったるい香りが漂ってフシギな気分。思い思いに通りの席に座り、白い煙を吐いている…。

ケムリと言えば、この7月1日で1周年を迎えたイングランドでのsmoking ban。パブやレストランを含む公共施設(職場も!)での喫煙を禁じた法律が施行されてからの経過がThe Independentで報道されていました。

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Smoking ban has saved 40,000 lives

By Jeremy Laurance, Health Editor
Monday, 30 June 2008 The Independent

The nationwide smoking ban has triggered the biggest fall in smoking ever seen in England, a report says today.

More than two billion fewer cigarettes were smoked and 400,000 people quit the habit since the ban was introduced a year ago, which researchers say will prevent 40,000 deaths over the next 10 years.

Smoking was outlawed in all enclosed public spaces in England, including pubs and restaurants, on 1 July 2007 after a prolonged political battle that split the Government and inflamed critics of Britain as a nanny state.

But longer term opposition to the ban never materialised: more than three out of four people support the law, and compliance has been virtually 100 per cent.

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 結果は喫煙・禁煙に関する専門家にとってもかなり予想外だった様子。200万本のタバコ消費減とともに、40万人の喫煙者がタバコを吸うのをやめたと報告されています。その結果、今後10年で4万人の死を回避することができるだろうと予測されています。そして喫煙率は22%まで低下しています。

タバコといえば、これまでの歴史やさまざまな利害関係がからみ一筋縄ではいかない政策トピック。「個人の自主的・自由な選択」や「業界の自主性」ということばで法的規制が強く行われることを牽制する一方で、タバコ売り上げに伴うタバコ税収、タバコ産業によるマスコミに対する広告収入・研究者に対する研究助成・政党に対する政治献金など のお金の流れがあり、なかなかにその産業に対するネガティブなキャンペーンは金銭的な利益にならないという背景があります。また、タバコ関連産業への雇用やタバコ関連産業への効果も無視できません。

これだけ医学的にテクニカルに疾患や障害・死亡への関連の強さが再現的に証明されても、政策で必ずしもその規制が行われないものの代表で、格好の政策分析のネタになっています。

 英国でももちろん先の政策が施行されるまでに長い長い道のりがありました。大きなところではEUでのタバコ規制法などの外部圧力とタバコ産業も絡んでいたBernie Ecclestoneによる労働党への2億円献金スキャンダル。もうこうなると政府与党も始末をつけ、タバコによる健康被害(とくに喫煙者周囲の人への受動喫煙被害:子供や妊婦)を重視し先の規制に相成ったようです。

タバコは、たとえ医療者でその害が解っていても「わかっちゃいるけどやめられない」しろものの代表。医療者のなかでもこの矛盾を抱えちゃっている人が多いところが、やめさせたくない人に狙われてしまうところでしょうね。

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