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7月イングランド中部洪水の原因となった雨降りのあとに、ロンドンでは比較的良い天気が続いている。それっ太陽だっ、となると公園や庭は”裸で日光浴”を楽しむ人でいーっぱい。7月のなかなか日光浴できるよい天気がなかった反動で、イタリア・スペインなどの海岸への旅行者も増加中(格安航空会社のお陰もあります。大好きです、Ryan air!)その結果による皮膚癌増加がどれだけ医療指標へのインパクトをもつかっなんて真面目に新聞に取り上げられる始末。日焼け、好きなのね…、みんなわかっちゃいるけどやめられない。

さて、英国でのプライマリケアはGPと呼ばれるプライマリケアの専門医によってほぼ独占的に提供されていますが、最新のBMJに”ため息”から始まるぼやきが掲載されていました。

BMJ  2007;335:306 (11 August), doi:10.1136/bmj.39300.420116.59

Views & reviews From the frontline

Des Spence, general practitioner, Glasgow

I sighed. Glasgow's tower blocks, heavy skies, and the sprawling postwar housing schemes that aimed to offer a better life than did the inner city slums disappeared in my rear view mirror. We headed for a better life in rural Suffolk, where I had taken up a GP partnership. The move from the electoral wards with the shortest life spans in Britain to those with the longest was just an eight hour drive. All my training, however, had not prepared me for the reality of general practice.

Fifty consultations every day, five house calls at lunchtime, call-outs in the midst of surgery, 7 pm finishes, Saturday morning surgeries that ran till 3 pm. But I considered myself lucky, for the fledgling out of hours cooperatives had freed us from the 24 hour commitment that had crushed previous generations. I struggled, suffering near constant chest pain induced by stress. This was . . .

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1日50人の外来診療に、昼休みの5件の訪問診療、外来診療中も患者からの電話を受け、7時にようやく診療時間を終える。これに24時間患者の相談・対応を受けていた結果が、1990年代のGPの”大いなる憂鬱”だったというのだ。もちろんその領域への新規医師志願者は激減。口々に診療所の倒産の話が上り、口を開けば”燃え尽きたよなあ”が出てくる始末。その後、英国ではGPの診療に対して財政的、契約的なてこ入れがおこなわれ、報酬の増額や時間外対応の選択制など施策の結果、人気も回復、今やGPブームがきているというのだ。するとさあ、そろそろいいでしょうと言わんばかりに政府はGPの診療時間の延長や週末診療を求めるという方針。さてこれが元の木阿弥になるのは必至。筆者は"What goes around comes around."と締めくくっている。

現場の医師がこゝろを砕いて診療している一方で、政府の表面的なかつ気まぐれでころころ変わる政策に振り回されている様子に共感できる。また、プライマリケアに関して言うと日本と英国では「公的財政、私的供給(医者によるに限る)」という共通のシステムを持ち、さまざまな点で共通した状況だということが分かる。 読んでいて、地域の診療所での外来と24時間対応の”しんどさ”が過小評価されていると感じた。特に少人数で地域を担当している場合、プライマリケア医には個々の患者の疾患管理や予防・検診、家族のことやライフステージ上の変化への対応などで、単純な診療だけで仕事が終わる訳ではなく、それ以上の時間と心理的・身体的拘束を必要とすることが理解されていないのだ。当たり前か、数字などにはあらわれないし、明らかに観察できなければ評価できないか。政策におもいやりはない。このように人的資源を機械のように入れ替えするマネジメントは、まるで産業革命時代のようだ。産業革命は技術的イノベーションがあったから成功したのであって、マネジメント方法としては三流だと言わざるおえない。

プライマリケア医は患者が病気や困難に出会う前から関係があることが多く、さまざまな場面で問題解決への要請・協力を求められる。医師の仕事ではない、病気のことではない、しらない関係ない、と一方的にことわることはない。プライマリケア医の背負ってるものは、結構重い、ことは強調しておきたい。

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ロンドンでの夏の風物詩のひとつとなっているのは、BBCが主催している一大音楽フェスティバルの"PROMS"。ハイドパークとロイヤルカレッジオブミュージックに挟まれた、ロイヤルアルバートホールをメイン会場に約2ヶ月間さまざまな音楽イベントが繰り広げられる。このイベントが今年で80周年を迎え、歴史本なども出て盛り上がっているのをみて、音楽から遠い私ですがこの14日のチケットを取りました。Marcus Robertsのpianoで"Rhapsody in Blue"。今から楽しみです。

さて、学校の先輩に授業の評判など聞きお世話になっていますが、その中でも評判の良い教官であるNick BlackがEditorをしているJournal of Health Services Research & Policyで、病院から地域の診療所へのケアの移行に関する文献を選択的にレビューした論文がありました。

Shifting care from hospitals to the community: a review of the evidence on quality and efficiency

Sibbald B, McDonald R, Ronand M

Journal of Health Services Research & Policy Vol 12 No 2, 2007: 110–117

Objectives: A key objective in many health-care systems is to shift specialist services from acute hospitals to the community and so bring care closer to home for patients. Our aim was to review published research into the e¡ectiveness of strategies for achieving this objective.-----

 ここでは今までの論文をレビューする際に、医療提供システムを変える4つの”戦略”:1.移行:病院での診療内容を診療所医師に移行、2.再配置:病院医師を診療所で働かせることで診療内容を診療所へ移行、3.協同:一人の患者に対して病院医師・診療所医師が協同、4.診療所医師の行動変容:診療所医師の病院への紹介行動を変化させる、によって分類し分析を試みている。結果は上記1.移行は病院の外来患者を減らし急性期病院の負担を軽減、患者の専門ケアへのアクセスを向上するが、その結果ニーズの掘り起こしが起こり診療量増大の可能性や治療の質の低下の可能性はある。期待されたコストの低下も、この診療量の増大によるコスト増や給与差(病院では若手が外来をしていてベテランGPより結局安価?)により期待されていた効果はない可能性。2.再配置は専門ケアのアクセスを診療の質を下げず改善するが、病院の患者数を変えず、急性期病院の負担減には効果なし、3.協同に関しても2.再配置とほぼ同様の効果。4.診療所医師の行動変容は病院の外来患者を減らし急性期病院の負担を軽減できる可能性、とある。

結果を読んで、そうなんかあという感じ(漠然とです。目新しいものが特にないのもありますが…)。私は自分の家庭医としての経験から、トレーニングされた家庭医が医療システムの中で機能することが医療の質や医療経済上の利益を人々・地域・国にもたらすという仮説をもっているが、こういった海外のヘルスサービス研究を読むたびに(それが、私の仮説に対してポジティブであってもネガティブであっても:英国はさながら実験場で豊富にありますが…)日本には当てはめにくいなあ、と感じる。(この論文も対象は1980年以降の英文論文のみ)なんたって、科学に属する医療技術に関する研究と違って、社会学に属する(?)医療システム研究は今までの歴史や社会状況・利害関係?が複雑に絡み合った各国の状況に大きく左右されるからだ。本当に一般化しにくい。

こう考えて、この9月からの学習の際にどう学んだら良いか、自分の軸・エッジをハッキリさせるために鋭意準備学習中だ。先人たちはみなどうやって海外のこの種の研究に対峙し、日本で利用したのだろう?

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新しい引っ越し先探しが難航しています。そのことを友人と話すと「俺は10件以上物件を見た」というのはザラのようで、この数年、ロンドン不動産価格上昇(この10年で約4倍!)の煽りを受けて賃貸の価格も急上昇中なのが、コストと内容のバランスの良い物件探しを難しくしている一因。1DKで24万超が最低ラインと自費留学生には悩ましい…。交通費・通信費やカウンシルタックス(住民税?)などをリサーチしてウンウン唸ってます。でもこの話題をきっかけに、あそこの不動産業者はどうだったとか、この地域にはおっきいtesco(スーパーマーケット)があって便利だとかで花が咲き楽しい。最近の私の持ちネタです。あれっ、”難航”してるって言ってたのに、楽しんでる自分に気づきました…。
 
さて、全国の医師の約46%が外国で研修を受けた医師である英国ですが、 外国人医師の質について政府が調査を始めるようです。
Britain’s medical regulator has launched a major inquiry into the competence of foreign doctors after it emerged that they are now twice as likely to face disciplinary hearings as UK medical graduates.
Figures seen by The Times also reveal that triple the number of doctors who trained abroad were struck off the UK medical register last year compared with 2005.…

ーーーーー 

医師の診療資格・登録を管理するthe General Medical Councilによると、年間5000件以上の医師・診療に関する調査が行われ、うち303件が診療停止にまで発展し、54人のドクターが除名されているが、その中に外国人医師が占める割合が、英国人医師の3倍にも及ぶという。 先のロンドン・グラスゴーでの車爆弾テロ実行犯が外国人医師であったことから、外国人医師に対する警戒・注目が集まっていることに加え、EU域内からの医師に対して医師としての資質のチェックが欠けているという管理の杜撰さ(英会話能力のチェックもなし:例:英語片言のフランス人医師が救急車に同乗したが話が通じず、搬送・治療が遅れたという報道も最近ありました)も露呈し、その資質チェックの必要性ありとなったようだ。

これはかなり興味深い。医師の資質の調査方法は、その国の考える”医師の資質Competence”を反映していると考えるからだ。医師たちの持つ知識や技術・姿勢態度を英国医師会が示す"Good Medical Practice"に照らして、どう明らかにしていくのか。同時に、調査するからには比較対象が必要で、英国人医師の資質も調査されるのではないかなあ、と期待している。この辺りで英国医師の実力も白日の下にさらされることにはならないか(実際英国の各専門医学会は、診療資格となる専門医の資格更新を定期的に課しているのでいるのでそれを使う可能性もありますが…)…。

また、仮説として、調査結果で英国人と外国人医師とで臨床能力にも差がないとなったときに、くっきりと”差別”の問題が浮き上がってくるのではないか?とも考える。言葉がインドなまり、東欧なまりだったとき、肌の色が有色だった時によりクレームが多くなっているのではないかと訝る(JMMのライターも医師の「訛りの強い英語はつらい」ともらしている)。

さて、日本人医師の公式な質評価は全医師統一の知識試験:医師国家試験のみですが、 さあ皆で質の調査をしますよ!となると横やり必死。誰がするか、どんな内容か、調査法が気に食わない、聞いてないなどなど…。最後の聖域かもしれませんね…。人のことも言わないから、自分のこともほっといて…。

追伸:一方で日本の”質を問わない状況”は、医師への大きな”信頼” のあらわれであることを肝に銘じないといけません。医師はできる限りの最新の質の高い医療を提供してくれるのだ、という信頼です。もし、これができないというのであれば、医師”外”からの規制を甘んじて受けなければならないかもしれません。

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foot-and-mouth diseaseロンドンでは家畜のFoot-and-mouth diseaseの発生が騒ぎを呼んでいます。このFoot-and-mouth diseaseはRNA virusによるもので家畜間の感染性が非常に強く、感染するとやせ、乳汁の出が悪くなり生殖にも影響があることから、農家は戦々恐々。ロンドン南のSurreyの畜産農家での発症でしたが、英国は2001年に大量発生・大量の家畜破棄を経験していることから、首相が休暇を中断して帰ってくるくらい非常に早急且つ徹底的な対応を行っているのが印象的です。新首相Gordon Brownはなんだか緊急対応ばかりしている感じですね…(でも、各対応が早急且つ適切なので支持率を上げています)

(画像は動物衛生研究所ホームページより)。

 

さて、先の参議院選挙でも注目していた三重県ですが、今度は中高生を対象に、医師志望者をふやそうというイベントを行ったという報告です。以下、引用。

ーーーーー 

医学部進学へのつどい「お医者さんになろう!」を開催します


三重県では三重大学と共同で医師確保対策の一環として、中高生を対象に医学部進学へのつどい「お医者さんになろう!」を開催します。

1 日 時  平成19年8月6日(月) 
       13時〜16時 (12時受付開始)

2 場 所  津市江戸橋2丁目174番地 
       国立大学法人 三重大学医学部 臨床第2講義室

ーーーーー

地元出身の医師を育成し、地元の医療を担う人材を育てようという試みですが、こういった試みは北米などでも積極的に試みられているという先例もあります。また、そういった医師が長期的にその地域に残り、地域の医療を提供していく割合が多いことは、多くの研究で報告されています。そうですよね、自分の出身地で、よく分かる「地域特有の」背景や言葉をもった医師と患者・家族・住民がお互いより親近感をもって、より良好な関係を持ちやすいのは理解しやすい。私も20年来離れていた生まれ故郷で家庭医として診療していましたが、すこしでも自分の育った地域に恩返しができる、そんな感覚が、よりよい診療をするというモチベーションの大きな推進力になっていると感じてました。

 

同時にこの試みは、地域の方々の医師養成への参加を必要とすると感じます。この土地で自分らの医師を育てていくのだという決意と協力、すこしの暖かい眼差しが必要かもしれません。卒前・卒後の一連の研修はよく考え、地域で育てていくことで医師・住民ともに安心できる環境が成熟していくとしたら最高です。

ここで私は繰り返し言いたいのです、「医師ほど素晴らしい仕事はない。お医者さんになろう!」と。ほかの人の役に直接立ちながら、自分自身の自己実現へ向かうことができる充実感。本当に楽しいのになあ。

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2007.08.03 11:23 |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  海外留学  |  tarogo  | 推薦数 : 0

医師不足解消:中国の場合

先日はシンガポールへ家庭医療の学会発表のためにいってきました。京都での学会以来、久しぶりに会った現地の友人と家族で連れ立ってシンガポール・チャイニーズレストランへ。そこは港湾地域と島の先にある小島(Sentosa)を一望できるタワーレストランなのですが、面白いのはタワーの先にあるレストランが回転して、360°の絶景を楽しめるところ。でも、なんだかチープな作りは、昔行った室蘭・中央町の丸井さんの屋上レストランのような…。料理は今まで食べたことがないようなメニューで、おいしい感動の連続。まあ、彼のおごりだったので、余計に美味しかったのかもしれませんが…。

さて、今回シンガポールへの機上で読んでいたthe Wall Street Journal: Asiaで中国での医師養成についての興味深い記事を見つけました。
Videos Teach China's Rural Doctors
Tuesday July 10, 3:34 pm ET
By Nicholas Zamiska

Physicians in China's remote villages are being trained by Beijing-based Haoyisheng.com, a company that uses video classes to address the essentials of diagnosis and basic care, the Wall Street Journal reports.

この記事は地方の医師の教育にビデオやインターネットを使った教育を行う事業が自治体のサポートを受け、多くの受講者を獲得しているというもの(その事業へ、ソフトバンクの関連会社が出資しているようですね)でしたが、その中で、中国の地方では、おおよそ100万人の医師が、公式な医学教育を受けず、医療を提供している現実があることを報告している。1960年代の文化革命時代に医師不足で悲惨だった地域医療の状況を打開するために、地域のさまざまな人に医師免許(?)を乱発し教育も受けていない質も保障されない医師を大量生産したとありました。住民の基本的な医療へのアクセスを保つにはやむを得なかったと。

これにはかなりの衝撃を受けた。中央政府の場当たり的かつ質に関する価値観にもびっくりだけど、一方でプロフェッショナルライセンスには、質と倫理が保障されているという前提?があっても、利用する人たちはその質の低さに気づいてその信頼性を疑い始めて、もう医師免許の価値がどん底までいってしまってたりしないのだろうか?と訝る。それとも、”医師免許!”なんてあると、その質を思い計るのは、ここまで極端な場合でも簡単ではないのか?

いずれにしても、超急激な経済発展の陰にある大きな闇をみた気がしました。実際の中国での医療の状況について、どなたか、地方都市で生活や医療を経験した方にお話を聞いてみたいものです。
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