「センセ。最近、ケーキを買いに行かれましたかア?」
「誰かと思えば、寸胴短足の理学療法士G君じゃないの」
「ハイ、ツマブキ君って呼んでもらってもエエですよ」
「じゃあ、ボクもキムタク君って呼んでね」
「イエ。口が裂けても、センセだけ不幸な目にあっても。出来ないものは、出来ない」
「君イ。朝っぱらからワシに、インネンかケンカふっかけてるんか?」
「そんなヒマ人じゃありませんから」
「じゃあ。ワシにサインでも、おねだりしたいわけ?」
「ボールペンのインクが、ムダになることはしませんッ」
「じゃあ、じゃあ・・・」
「そうじゃなくて、先週の日曜日にミョーなことがあったんですけど」
「君がトイレに入っていたら、宇宙人が便器からこんにちは!ってか?」
「そうじゃなくて、車で20分かかるケーキ屋の駐車場で脅されたんです」
「まさか、ブラピに?そりゃ良かったでないの」
「オレンジと白の横縞Tシャツも凄いけど。このシーズンなのに、半袖ですよ、半袖ッ!
さらに真っ赤なチェックサスペンダーが、ダブッとしたジーンズをつり上げて」
「なかなかエエセンスしてるんじゃないの、そのオヤジ」
「あら、そのミョーなヤツの歳は言ってませんよね?何で、オヤジだと分かったんですウ?」
「イヤ。恐らくそこまでセンスを磨くには、並大抵の努力じゃないネ。
まあ、4,50年は修行してるはずやデ。じゃから、オヤジと言うたワケ。
58才のオヤジじゃない幼稚園児は、この辺りには3人しかオランやろ?」
「それがヘンなんですウ、そのオヤジ。最初は、ケーキ屋の主人かと思ったら。
ケーキ屋のおばさんが敬語を使ってるから、勘違いに気がついたんですけどオ。
もっと驚いたのは、よく考えるとMIHIセンセに似ていたような・・・」
「キムタク似のそのオヤジが、ワシに似ていたワケね?」
「イエ。どちらかと言えば、カーネルサンダース似でオネガイします」
「じゃあ、ワシとちゃうわ。ブラピ似なら、誰が何と言おうとゼッタにイワシやけど」
「怪しいヤツにいきなり声をかけられて、怖かったから俯いて。よく見ていないんですよ」
「惜しかったねー、サインあげたのに。ひらがなで、”ホントにぶらぴだぞ!”って」
「あー、やっぱ先生でしたかッ!」
「当ッたりイ、ペアでカッパ狩りにご招待ですウー。でも、ナンで分かったんやろ?」
和やかな会話は途切れることなく続く、朝のステーション。
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「おろ?MIHIセンセ、ワシにジュースでも?それとも、きゅーっと冷や酒とか?」
尿カップを大事そうに持って通りかかるMIHIセンセに、哲っちゃんからかかる声。
「まさか、ワインとかビールじゃないやろねー。あっしは、ちょっと銘柄にうるさいよ!
あ、話が脱線したけど。閑話休題っちゅーやつやね。ワフワフ・・・。ワインかアー。
ホウホウ、メダカの卵が1週間前にふ化したワケね。
芯の細くて短いマッチ棒みたいなヤツが、メダカのベビーですかー。
コップの中は、真っ黒の目玉が2個だけしか見えんねー」と、覗き込む哲っちゃん。
「で、3匹拉致してきた!ん、なーるほど。ちっちゃいなー、食べても味がせんやろなー。
ワシに似て可愛いなー、ちょろちょろして落ち着きがないなー。そこが違うなー」
一くさりメダカベビーにイチャモン付けて、しっぽフリフリ小屋へ撤収する哲っちゃん。
病院のメダカは2度も産卵して、ふ化する度に子孫が施設のあちこちに分散。
絶滅危惧種「メダカ」君は、我が施設では”繁殖しすぎ危惧種”になるかもー。
尿カップを持ち込めば、「あら、検尿するの?」と来るから。
「病院から拉致して来たんよねー、こいつら」と、目の前に差し出せば。
「水?・・・キャー、可愛いッ!」で、新しい水槽に落ち着きました。
我が家の先住メダカ君達は、成人してるはずなのにいつまで経っても幼児体型で。
下腹に卵をぶら下げているヤツは1匹もいないし、もちろん藻に1粒も卵が付いていない。
MIHI奥様と、「こいつらただの肥満オヤジの集団かねー?」の会話。
メダカの親元の外来ナース曰く。
「もう少し経ったら産卵するんじゃないですかー」
「3回大ウンチしたら、お腹がぺっちゃんこになったりして」
「適当に選んだのに、全員雄か雌どっちか一種類じゃったんやろか?」
「そうかも知れませんねー」
「いろんな体型のヤツが居て、ひれの形がちょっと違うのが居るからなー」
「じゃあそのうち・・・」
「もしかして、雄とニューハーフのメダカじゃったりして?」
「センセ、ニューハーフって。メダカのですかアー、キャハ」
「内股で泳いで、MIHIセンセッおがんこー?なんてな」
「おがんこーって、ナンです?」
「オカマ言葉で”お元気イー”じゃったような・・・」
「センセ、その道に詳しいんですか?」
「どの道よ?やーねー、思わず小指が立っちゃうわアー。なんてな」
「ギャハハ、信じらんないわー」
メダカのニューハーフネタでグイグイ盛り上がる外来。
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「あのね、何で手エ握ったまま黙ってんの?良しッは、まだかいな?ワフーッ。
おろ!怪しい足音やんか、ここで吠えないとイカンし。でもー、ビスケが・・・
吠えたいなー、食べたいなー。え?MIHIセンセも昨日の会議で吠えたって!
会議で吠えるのは止めないと、ちゃんとしたコラボができんよ!ワウワウ」
「良しッ」で、僅か1枚のビスケにありついたラブラドールの哲っちゃんですが。
「まあ」ここらの町内じゃ、チトは知られたコラボの哲ちゃんやけど。
コラボレーションの基本を抑えてあげようかねー、ワウッと」
ラウンド2に向かうMIHIセンセを引き止めて、哲のミニレクチャーが始まる。
「コラボレーションには5つのスキルが必須なんよ」で始めた哲によると。
「1;コラボレーションしたがる犬の意志、2;犬にとって真実であること、
3;犬の自己責任、4;犬への気づきと他者への気づき、5;吠えずに問題解決と交渉」
出典は「ワシら飼い犬のためのコラボレーションの極意」ジェームス・ワウッワン著。
「いま犬はどの立場にいるかを確認。つまりレッドゾーンかグリーンゾーンか?」らしい。
レッドゾーン(以下RZ)は防衛的で敵対的な立場で、グリーンゾーン(以下GZ)はその逆。
ワウッワン博士によれば、個々の犬だけじゃなく組織としてのRZやGZもあるらしい。
「んで、MIHIセンセはRZとGZのチェックリストをやってみた!あ、そう。
そしたら昨日の会議じゃったら殆どRZ!GZは皆目無しねー。困ったお人じゃ。
まあ、早い話が誰かがじゃなくて、自分でボタンを押したようなモンやねー。
話を聞いてると、かなり激しく押したようやねー。返ってこないくらい強く、ググイッと。
時々センセは熱くなる悪い癖がある、困ったちゃんだからホント。ワフー、レロッ」
ここで哲っちゃんは、右奥歯にまとわりついてネチッとしてるビスケを舌で外す。
「え?ボタンを押すと言うことは、何かのきっかけでかっとなったり動揺したりすること。
逆鱗に触れる場合もあると、ワン博士も言ってるネ。だから出来るだけボタンを外すワケ。
ボタンを外すって言うのは、つまり習慣や依存関係から自由になることなんだけどネ。
まだ1/5しか読んでなくて、続きはまた明日のビスケの後でエエでしょ?学習しておくから
ビスケ5枚とか、チョコなんかじゃと。レクチャーがグイグイ早く進むんじゃけどなー。
あ、ダメ!そうは問屋が卸さないってか?上手いこと引っかからんなー」
こうして反省猿と言うか、反省猪八戒状態でラウンド2へ向かったMIHIセンセ。
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真向かいのTVだけが賑やかす喫茶店、ドアを開ければガラガラの鈴。
「ホット」の声におばちゃん無言で頷いて、直ぐに見上げるTV。
TVは田舎を映し出し、田園風景を見て幼稚園前の頃に遊びに行った祖母の家を思い出す。
モーターで汲み出す井戸も、昔はガチャガチャ・キイガチャ連続3回が定番で。
ジョボッ・バシャーの音と共に荒い水の帯が5秒ほど続く。
水の出口には木綿製の袋が取り付けられていて、水が散乱するのを防ぐ仕掛け。
折り込んだこの袋の隅には粒状の鉄さびが蓄積して、袋の色が茶色に変わり。
時が過ぎるとその分だけ茶色が袋全体に拡散して、そろそろ変える時を知らせる。
歪んだバケツにたっぷりの水を蓄えるころ、木製かまぼこ形ラジオから流れる歌謡曲。
流れるは「上海帰りのリル」、覚えたての節を口ずさめば。
「子供は、そんな歌を歌わないのヨ」、たしなめる祖母を見上げて肩をすくめて"エヘ"。
コーヒー1杯¥380で見ることの出来た、幼い頃の白日夢。
その後も飽きたらトイレと座席を行き来しつつ、講義は進んでゆく。
受付のお兄さんの「こいつ、落ち着きのないやっちゃナー」の視線に。
「ボクって頻尿・下痢、はたまた乏尿・便秘の繰り返しなんよねー。困っちゃう」で返す。
拘束時間がようやく終了して、携帯でタクシーを呼ぶ頃には聴衆は半分になって。
出口で「ホントに来たんだかんな!シール」を受け取りつつ、ふと思うのは。
もしも怪人二十面相なら6人いれば、シールもらい放題かも。
ある時は花売り娘、でっぷりの相撲取り、はたまた猫男か牛男。
そうかと思えばチンドン屋、こっちの方じゃ踊り子と落語家。
あちらじゃ演歌の流しが歌い、赤ん坊を背中にしょったはな垂れ小僧。
120人分を6人で演じつつ交代でシールを貰えば、脱走・遅刻・代返は気にならない。
それより聴衆全員が怪人二十面相だったら、お兄さん腰抜かすんちゃいますか?
150人ほぼ一杯の会場で、2400枚も「ホントに来たモンねー、シール」じゃったら。
「スイマセン、シール追加2200枚ッ!でも・・・」なんて。
そんなことを思っていると、タクシーが横付けドアが開く。
鞄の中のシールを確認してニンマリ、新幹線の人となった次第。
夏休みの翌日に県の医師会に申請すれば、気が抜けたようですウ。
あの時の受付のお兄さんは、たった今事務処理をしたお兄さん?
<完>
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話は逸れるが私はボールペンが嫌いだから、余程のことがないと買わない。
長さ5mmの線を引こうと思っても、筆圧が高いのでズルッと滑ったりめり込んだり。
長さが7,9,16mmとまちまちになるし、力を抜くと5mmのおはずが。
下は0.5mmから、上は30mmまで滑り放題なのが嫌いだ。
挙げ句の果てに、玉のはじっこに溜まったインクが突然ボテッと塗りつけられて。
そう言うときに限って指が擦れて羽ペン状になり、指には黒いホクロ。
指紋の間にすり込まれた黒インクは、ティッシュくらいじゃ落ちないし。
その点、ガリ版のペンみたいにカリカリ引っかかる水性ペンは安心だ。
高い筆圧に影響が少なく、狙った長さの±2mmで落ち着くから好きだ。
でも筆記用具を忘れた私は、仕方なく¥100でボールペンを買った。20年ぶり!
こうしてミミズがのたうち回った様な字が、「MEMO]欄に並ぶのであった。
同じ姿勢で2時間以上我慢すると、体にイケナイんです。
肩が凝る、腰が痛い、爆睡する、腹が減る、ビールが飲みたくなる。
出来ればおつまみに、渇きモノが嬉しいですケド・・・ハイ。
だモンで、とうとうやってしまいました!とっても反省猿です。
文庫本を丸めて体に密着させ、スイッチを切った携帯を耳に当て連絡中の仕草。
声を荒げて「エーッ、それじゃあ・・・」は、受付のお兄さんの前だけ。
<アノー、ボクって脱走じゃないんだかんな。ちょっと急用でネ、ホント。
病院に電話するんだかんな。これってスイッチ入ってるんだぞ、見せないけど。
ゼッタイにコーヒーなんか飲みたいとか、サボりたいとかじゃないんよ>
お兄さんの疑惑の目線に、私の困惑の目線が交差する20秒。
黒いボタンを押したエレベーターが、到着の「ピーン」で小心者を驚かせ。
乗り込むのとドアが閉まる間は、数秒のタイムラグも1時間に感じ。
階下へ降りてストレッチしながら戸外へ出ると、透き通ったような秋の空。
<続く>
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「センセからもらった電気、何処へ蒸発したんやろ?えろうて、イケン」
「あら、そうなん。じゃあ今日は、スペシッャルで行っちゃったりして・・・」
「オネガイします、存分に」
Iバッちゃまの両手を握ること5分、
「なんか、ワシ頭がボーッとしてきたけど。放電しすぎやろか?」
「そらセンセ、飲み過ぎでしょッ!」は外来婦長。
「それじゃ何か。ワシが飲んだくれて、蹴躓いてデコチン打ったのを見たんかッ。
しかも、右足の小指がメチャメチャ痛かったのを見たんかッ。泣きそうやったのもッ」
「あら、やっぱそんなことだろうとは思ってましたけど」
「何で分かったんやろ、謎じゃあ」
「アホくさ、あそこまで自分で言ってんじゃん」
「外来終わりやろ?回診してくるわ。しかし、謎は深まるばかりじゃなー」
機嫌良くステーションに侵入すれば、
「センセ、この文字なんて読むんでしたっけ?ソケイですよねー」
「そうそう、鼠径やで」
「残念ながら、あんたにも2つ有るなアー」
「残念の意味分からんッ!」
「これこれ」ソケイの所が開いた辞書を差し出すと。
「鼠みたいな字イ」
「アホ言え。それじゃアホみたいなとか主任さんみたいなとか、言うようなモンやで」
「あたしにインネン付けてるんですか、それ?」
「ソケイの鼠は、ネズミそのまんまやもん。従ってアホと主任さんは、んーと・・・」
「じゃあ、あたしはアホ面してるって言うわけですね」
「そこまではっきりと言わんけど、面だけじゃなく。でも何でネズミが走る道なんやろ?」
「そうですよねー。あたしなんかだったら、小鳩道でもエエのに」
「そら子ブタ道やろ?」
「なにか仰いましたかア」を聞きつつ撤収。
(注)鼠径部とは、男が生まれる直前に精巣が腹腔から陰嚢へ移動する時に通る道。
この名前は、精巣の移動を鼠の移動に擬えたところに由来するらしい。
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「およ、さすが産業医志望は真面目やネー」
スライドが始まった開場には一杯のお運びで、居眠りもせず。
3人掛けの真ん中に座った私、2時間経っても風通し良く両隣は空き家(終了30分前まで)。
資料と飲みかけのペットボトルが寂しそうで、思わず頬ずりしちゃいたい気分。
スライドの途中で「あり?」なんて演者が言うモンで、思い出される幼少のみぎり。
校庭の隅に生息するアリジゴクが大好きで、休み時間は時々遊び相手に。
直径15cmすり鉢状で、その壁はサラサラの砂で出来ていて。
通りかかったアリンコが、「おろ?何じゃろねー。砂丘みたいな足触り」。
ズルズル中心部に向かってずり落ちて行き、もがけばもがくほど加速度が付いて。
そう言うヤツの中には猛者が居て、エッジまではい上がってくるのが居る。
逆円錐のど真ん中に、腹を空かせて待っているアリジゴク君のことを気遣い。
あと一歩のアリンコを指で突っついて、奈落の底へ。
「いよッ、かっちけねえ(かたじけない)。ゴチになりますウ」となる次第。
それも見飽きると、人差し指をエッジからズルズル移動させ。
如何にも罠にかかったアリンコを演じる私は、これを中央まで進めて。
穴から出て来たのがサソリかハイエナだったらどうしようと、一抹の不安がよぎる。
今なら直ぐに思いつくのが、健康雑誌"若作り"に「アリジゴクダイエット」とか。
「アリジゴクに噛みつかれて尿漏れが治った」、「アリジゴクに3回噛まれて水虫が治った」。
「一家に一匹アリジゴクで、健康家族」とか、アリジゴクをキーワードにした特集。
睡魔をあっちゃに行かせつつ、夢想のアリジゴクに落ちてゆく私でありました。
「産業医は統計の知識も必要で、平均値・分散・2x2表・グループ間の差の検定とか」
聞き慣れた単語にいきなり覚醒させられて、キオスクで購入したボールペンを走らせる。
<続く>
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「クッソー、ブッポー・クックルーめ!」
とうとう実力行使に出て、芝生の上に低空で網を張ったのは良いけれど。
野ハト君の切れ目の所にこんもりといつもの10倍サイズに盛り上がったモノを発見!
ウンチの数から考えると、どうも犯人の数はせいぜいつがい2羽までで集団じゃない。
怒り狂いながら産業医研修に向かったわけです。ムフーウッ、許せんッ!
新山口のホームに立てば、背中辺りがなにやら騒がしい着物のバッチャン3羽カラス。
「ここは、のぞみじゃろ?こだまじゃったかいね?喫煙席じゃろ?」グレーカラス。
「そりゃあ、そういね。あのマークは喫煙じゃったげな」ベージュカラス。
「あのー、ここはひかりレールスターになりますけどー。よろしかったでしょうか?」
「あら、そうでしたか。喫煙席ですよねー?」
「いえ、禁煙席になってるようですけど。エがったでしょうか?」
「えー、いつから?」に困惑して、「タブン、ずいぶん前から」
そこへ侵入したレールスターに、「これこれ」と乗り込むバッチャン軍団。
統計の本を出して、30分の列車内学習を始めた途端。
「今日行くところは歴史的に面白いとこなんじゃけど」と70少し前のおじちゃん。
「へえー」と相づちを打つおばちゃん3人。
「**院鬼伝説殺人事件って言うて、サスペンスでテーマになっていてな。」
<おっちゃん、それって*0院かもー>
「ナンタラ言う探偵が活躍するんよ。湘南に住む作家で」
<それって軽井沢の内田康夫で、浅見光彦シリーズやろ!暴れるぞ>
「お兄さんが部長刑事でな」
<ちゃうちゃう、刑事さんの一番エライ人で。最初は、地元の刑事に軽く扱われて。
事件に絡んで身辺調査をされたら、自分らのトップの弟だっちゅーのを知ってやな。
水戸黄門の印籠みたいに手の平返して、事件の相談したりして。
あそこはお笑いやデ、喋るときは正確にオネガイしますネ。
間違いだらけが気になって、統計のお勉強がちいとも進まんがね>
あっという間に広島駅に降り立ち、ヘイ!タクシー。
15分の車窓から見えた人の群れ、好天の元の広島。
10月半ばというのに短パンなのは、3人の外人とMIHIセンセでした。
<続く>
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今年最後の(なかなか使えなかった?)夏休みの1日。
気になっていた球系カットのクチナシ、足下すっきりボウの先に付いた飴状に。
カット作業中に近所の奥様に見られて、何故か伏せる目。
(あ、別にクビにされたワケじゃないかんね)
(1日にワケもなく30回もキレたらネー、全員にそっぽ向かれて・・・ですよねー)
(違うッちゅーに、使えなくて残っていた夏休みだかんね)
焦りまくって部屋に引きこもるMIHIセンセ、「このまま家の中にオランとまずいか?」
今日しなきゃいけないことは、譜面が読めなくてもOKの作曲ソフトの入金。
ベストセラーになるかも知れないサスペンス、「犯人に告ぐ」上下購入。
県庁にある銀行からソフト代を入金して、職員食堂で昼食の予定。
奥様がファンになってる、県庁売店の羊羹購入で侵入すれば。
介護認定審査会で見かける市役所のスタッフおばちゃん。
(あらセンセ、お休みですか。やっぱクビにされた?)
(ちゃうちゃう、最後の夏休みだっちゅーの!)
(いかにもプー太郎のオヤジじゃないですか、まさかそれで今夜の介護審査会へ?)
(別に裸よりマシでしょッ?)
いちいち「最後の夏休みです」も面倒だから、「休みです」の一言で撤収。
帰路途中ですれ違うのは、近所の不動産やさんの社長の車。
こちらが先に発見して、思い出す社長のことを話し始める。
「あ、社長じゃ!朝5時起きお弁当やさんの下準備するらしいよ。
10時には寝るって毎日じゃったんよねー。あの人むかしは趣味がなかったのに。
スポーツクラブに目覚めてしもうて、そこまではエエとして。
ムキムキなりかけで、診察の時にちょっと誉めたら後が大変なんよ」
「ムキムキ大会出場とか?」
「じゃなくて、診察する度に"凄いじゃろー、センセ。見て見て、やもんなー。
ジジイの裸なんか、見たくもないワイッって言ったら。
まあ捨てたモンじゃないやろって、ポーズまでつけてからに」
そこまで言い終わる前に、車のすれ違いざまにこちらをチラリと見た社長。
(あー、とうとうクビですねッ!じゃあ、そう言うことで。お達者でエー)
(違うんよ、ホントにイー。夏休みなんじゃからねー、ゼッタイー)
昼食前に、¥1000散髪となってるわけです。
1ヶ月に1回のペースでも、幾たびに変わるスタッフと思っていたら。
「あら、いらっしゃいませエ。やっぱ、短めですね」は見たことあるおばちゃん。
(良い年こいて、平日に散髪とは、ヒマなんですねー、クビなんですねー)
(あ、ちゃうで。ホントの夏休みだかんね。ウソの夏休みって聞いたこと無いけど)
(まあまあ、こちらとしては他所へ行かなきゃ。クビでも何でも良いわけで)
最後の夏休みに出会ったボクを知る4人の目は、何故かキビシかった。
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「およ?ウーロンと菓子パン持って、出勤ッちゅー事は、奥さんに愛想尽かされた!?」
「A子オどこ行ったんやー、帰ってきてくれエー。あ、ちゃう、ちゃうで!
ただの旅行でワシ留守番だかんねッ、そこんとこ忘れないでね。試験に出すからネッ」
「なんや、ツマラン。そんなことかいな!あ、でもそう言うことは昼のビスケ無しッ!?
奥さんの旅行で、ミョーなしわ寄せが来るなー・・・、ワフー。
あ、話は変わるけど。小泉君支持が凄いネ。ワシにはワカランね。勢いついてるからねー。
飼ペット税とか国会に申請されて、体重1Kgあたり¥1000とか言い出したらどうしよ。
丁度良い機会だからダイエットしよか?なんて、おばちゃんが言ったりしてな。ワウッ」
「そんなことどうでもエエけど。戦争で生き残った人生の先輩を、いじめる気イ?
介護報酬一つ見ても、カットに続くカット。お年寄りにも療養環境が大事まではエエわい。
施設も賛成して、まあ収入も増えるし。そしたら部屋代以上のモンを、報酬カットやろー。
おだてて屋根に上げておいて、ハシゴ外すようなモンやで」プンプンMIHIセンセ。
「ワシのダイエットがどうでもエエことは無いデ、ワウッ。エサが減るんやで!
でも人間って節操がないっちゅーか、エエ加減っちゅーか。
どうしようもないやっちゃなー。ワシ、犬で良かったわホントに」じっと手を見る哲。
「そうなんよ!大部屋に住んでる方が、ユニット型個室に住むより報酬が多くて。
オカシイ!って言ったら、そんじゃ大部屋の報酬を下げましょねーかも?
冗談じゃないよ!往復ビンタで泣いてるヤツに、またゲンコで殴るようなモンやで」
段々鼻息が荒くなってくるMIHIセンセに、「まあまあ」と抑える哲っちゃん。
「だから、可哀想なのは殆どが大部屋の施設だよねー」冷や汗タラリのMIHIセンセ。
「そうそう。今更リフォームするには、時間と金がかかるし」ブツブツの哲っちゃん。
「小泉マジック劇場にやられた岡田ちゃんも、オシがもう一歩じゃしなー」
足を病院に向けかけて、思い直したMIHIセンセ。
「話は変わるけど。首相の公人としての靖国参拝にしたって、国民は納得してるんやろか?
国に犠牲を払わされて亡くなった人と、それをし向けた人が同じ所におったらどうや?
エエ気イせんで。ワシの言うことオカシイか?どうよ、どうよ。どうなんよ」
「死んだらみんな神様になるらしいから・・・ワフう」ようワカラン哲っちゃん。
「侵略戦争で日本が国民と外国の人に何をしたか?かなりえげつないことしたらしいけど。
国が責任持って教育しないから、公人が靖国神社に参ってもヘンと思わないんやろなー。
やられた方は、末代まで忘れんぞ!しっかり、しかも誇張して(?)教育するからなー」
「ワシ靖国神社がどんなところか知らんからなー、ワフー。MIHIセンセは?」
「一度だけ右翼の先輩に拉致されて、参拝したことあるワ。
何か神社らしくないなー、フツーじゃないなー。街宣車頑張ってるなー、みたいな」
「そんだけかいな。英霊に対して敬礼ッ!は?」
「英霊みたいな考え方は、古代ローマ帝国時代からあるらしいな。
国が勝手に引き起こした戦争で、犠牲になった人を英雄に仕立てて。
国民に、戦争拒否をさせんようにしたらしいなー。死んでも喜べなんて、酷い話やで。
犠牲者に対してご免なさいッ!戦争はもうしません。じゃろうなー、ホントは」
「そうやそうや!」拍手する哲っちゃん(どうやって?)
「それに、外国には敵も味方も、軍人もそうでない人もやねー。
犠牲になった人を全て、一カ所に祭ってあるところもあるらしいデ。
誰でもおいで、何でも有りの八百万の神にしては寂しすぎかもねー。
その上、戦争はしないって言う憲法9条を小泉君達が変えるかも知れんデ。
いつか哲ちゃんも、3等兵で出兵するかもな?軍医MIHI上官に敬礼ッ!なんてな」
言葉を濁して歩を進めるMIHIセンセ。
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