カテーテルカルボナーラ
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認知症の正体

カテーテルカルボナーラ / 2010.05.20 07:02 / 推薦数 : 0
 先日、悩ませる事態があったのですが、昨日解決いたしました。
 個人情報とならない範囲で書きたいと思います。

 症例は60代女性。地域のいろんな長もされたりしていて、聡明でいつもお洒落にしている方です。
 その方がある皮膚科疾患でわたしの外来に定期通院されています。

 ある日、その方がお嫁さんと一緒にいらっしゃいました。お嫁さんとは会うのも初めてでしたが、もちろん、非常に若い方です。
 外来が終わってランチを頂こうとしていたところ、患者さん本人が帰ったものの、お嫁さんがわたしをめがけて駆け寄りました。
 「先生と話がしたい」
 何か思い詰めたような表情に、診察室に押し戻されました。

 お嫁さんは言います。
 「義母のことですが、振り込み詐欺にあってしまって。OO万円です。被害届を出したいのですが、本人が振り込んだことを、どうしても認めないんです。被害届も出せない状態でして。記憶力が鈍っているのか、認知症なんでしょうか」
 振り込み詐欺はわたしの外来では2例目です。どうも、この地域の高齢者の名簿が犯人に出回っているのでしょうか。
 しかし、その患者さんは認知症などには見えません。表情も生き生きしているし、時事の話題にもしっかりと解釈をするのは、この2年間変化がありません。

 電カルで調べると、内科受診歴がありません。
 認知症疑いで、内科紹介するべきでしょうか。それにしても、本人からの同意を得ないといけないかな。。
 それとなく、長谷川式をやってみて、疑わしければ改めて、内科受診を勧めようか。
 一回だけ、頭痛の話をしていた記録があるから、脳外科受診を勧めようか。
 ぐるっと思い巡らせ、
 「本人のプライドを傷つけないように、わたしが治療方針をもう一度説明したいと言っていたと、再診を勧めてもらえませんか」
とお嫁さんに話しました。

 数日後、わたしの外来を再診されました。患者さんは開口一番、こう言いました。
 「先生は振り込み詐欺のことで、嫁に言われたんでしょう」
と、見透かしているようでした。わたしは苦笑して、率直に答えました。
 「そうなんです。詐欺に遭ってしまったようなので、お嫁さんが認知症を心配しているようです。わたしはそうは思っていないのですが」
 患者さんはため息をついて言いました。
 「詐欺にあったのは本当なんですよ。いつもの息子の調子と本当に似てたんです。額もテレビで言うように何百万ってほどでもなかったもんですから、つい、振り込んじゃったんです。だってほら、生活費が足りなくなって、数万円の援助を親に頼るって、よくあることじゃないですか」
 わたしはじっと耳を傾けます。
 「それに、それ以来、息子が時々電話してくれるようになったんですよ。なんだかうれしくて。でも、詐欺にあったと、嫁が怒って怒って、私を責め立てるんです。私も意固地になっていたから、それが悪かったのでしょう」
 わたしは自身の症例を少しだけ話しました。
 「同じような方を以前に見たことがあります。その方も同じようなことをおっしゃっていました」
 「あら、もしかして、OOさんじゃないですか」
 「あはは、それは言えません」
 患者さんは認知症ではありませんでした。お嫁さんにも安心してもらって良いですね、と尋ねると、患者さんははいと元気に答えました。

 後日、お嫁さんに電話で連絡しました。お嫁さんも被害のことは水に流すと言い、一件落着です。

 プライドで凝り固まって、失敗について周りの人とコミュニケーションがとれないと、若い人でも認知症として扱われてしまう。怖いことだと思いました。



 日本が大好き!
 三橋貴明後援会

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