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2012.02.14 23:39 |  開業 / 病院経営  |  murajun  | 推薦数 : 1

連休中の往診・・・③

生活保護費は今や3兆3千億円にも上るという。207万世帯だったか、207万人だったか・・・いずれにせよスゴイ数字である。消費税アップしても恐らく焼け石に水である。「ヤケになった医師に水をくれ・・」となりそうな危険すらある。

 

まあ、医者と看護師だから連休中の往診であろうが文句は言わない。愛人との安らかな眠りを邪魔されようが、愛犬との散歩を邪魔されようが、病める患者のためなら文句は言わない、ましてやインフルエンザで苦しんでる患者の味方であり続けたいというのが医療者の(教育された)本能である。

 

しかし、人間として、市民として、納税者としてみれば話は別だ・・・

生活保護関連費や年金などで親子は手取り22万円の収入があり、家賃は無料、医療費は無料、NHKも無料・・・その他様々な恩恵があるという。納税も年金も何もない。これは額面給与が40万円以上の生活水準ではないか? 市営団地も新しく立派な3LDK、職員の誰よりもいい暮らしが出来る環境にあると言える。しかし、その生活の実態は悲惨だった・・・

掃除道具、例えば帚さえない暮らしはなぜ生じてしまうのか? 健康で文化的な最低限度の生活はなぜ親子にもたらされないのか? 市営団地は市の財産、僕らの高額な税金が生みだしたものであるはずだ。しかし、市の生活保護担当者は親子の暮らしの実態を知らないし、知ろうともしていないかのようだ・・・

 

毎月一回は親子を訪問するという市の担当者は室内に入らず玄関先で訪問を済ますという。この家の玄関付近だけは物が無いだけに比較的マトモなエリアである。それほど汚れも酷くは無い。しかし、一歩室内へ足を踏み入れると・・・足の踏み場もない凄さなのだ。しかし担当者はこれを観ていない。観ようともしていない。お金(生活保護費)を渡して、生きてるか死んでるかを気にしてるだけの様だ。これでいいのであろうか? いいはずが無い・・・

 

僕と二人の看護師は親子に掃除道具をプレゼントし、約1時間半の間、3LDKの室内掃除に精を出した。トイレも風呂もどうしてここまで汚せるのか?というほどだったが、市の担当者は知らないだろう。

掃除の後はそれなりにキレイになったが、はたして何日ほど維持されるのであろうか? 今日透析に来た際はスッカリ元気になって感染隔離エリアに収容する必要は無さそうなくらいだったが、コンコンと「週に一度位は部屋の掃除をしなさい・・・それが健康維持にも大切だから。今のママじゃ薬がどこにあるかも判らないでしょ? いい? 掃除してよ・・」と説教してみたが、残念ながら無理かもしれない。精神と身体に障害を持つ彼ら親子のあれが限界かもしれない、悔しいことだが・・・

 

そんな障害を持つ人々には少々プライベートが無くなっても、老人ホームの様な、あるいはグループホームの様なお世話役がいる集団生活の場の提供がやはり相応しいのではないか? 現金給付ではなく、健康で文化的な生活が送れるようお世話するという現物給付がより相応しいのではなかろうか? こんどの往診を通じてそう強く感じた・・・

 

掃除で一汗かいて、そうして爽やかな美しい青空を眺めながら日曜の昼前の高速道路を愛人の元に戻るべく愛車をすっ飛ばして帰った。あの親子には無い様な充分なお金と財産が僕にはあるものの、あの親子にはあり余る自由な時間が僕には全く無い様なものだ。所得と財産には累進性の極めて高い税金がかかるが、365日24時間自由な時間には一切の税金はかからない。僕の様に自分自身で自由な時間を捨て去ってしまった生活をいったい「幸せ」と呼べるのであろうか?

 

せめてもの反抗として自由な時間を取り戻すために、その夜は映画のハシゴに出かけ、24時キッカリのシンデレラ帰宅となった。そして翌朝から再び納税生活のため頑張って働いている。

 

まあ僕には健康で強靭な精神とメタボな肉体と偏った判断力と僅かながらの自由なお金があるので一先ず良しとしよう・・・自由な時間はハッピーリタイアメントの後にとっておこう。それまで健康でいたいものだ・・・

往診に出向いてヨカッタと思う・・・ でも二度とゴメンだ・・・

 

呼んでくれてどうもありがとう   終わり (少々フィクションが混ざってます)

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2012.02.14 00:05 |  開業 / 病院経営  |  murajun  | 推薦数 : 0

連休中の往診・・・②

世に言う連休二日目の早朝、僕は某所で愛人と暖かなベッドの中で過ごしていた。夢うつつ・・・春眠暁を覚えず、とやらで前夜の興奮を胸に安らかな眠りの真っ最中にその携帯電話は鳴ったのである。

愛人の暖かく柔らかな肌に添えた手を離し、冷たく硬い携帯電話をつかみ耳にあてた。そして先ほどの会話が始まった。

透析間に8キロ位は平気で増えてきてしばしば心不全で緊急透析を繰り返していたのだが、最近はやや安定して緊急透析はしばらく施行していなかったが、日曜日の緊急透析が頭をよぎったのは否定しない。

ただ、確かに精神障害の息子と二人ぐらいの男所帯、生活保護で収入も住まいもあるとはいえ、食生活も何もかも問題を抱えていることは容易に推測出来ていただけに、息子からインフルエンザを移された可哀想な透析患者としてやはり連休中であろうが救わねばならないのである。透析患者のインフルエンザは、患者にとっても透析施設にとっても試練でもあるので・・・重たい気分で患者宅に向かった。

といっても、愛人宅からは高速を飛ばしても1時間近い時間がかかるので、携帯電話でスタッフに応援を依頼した。

透析看護師長・・・出ない。

透析室主任看護師・・・出ない。この二人が出ないことは初めてだが仕方ない。

@@看護師・・・日曜日の緊急応援依頼は初めてだが、患者宅と比較的近いので貧乏くじを引いた様だ。

高速道路で患者宅往診に関する詳細な電話連絡を取るなんて違法であろうが、患者の生死に関する緊急車両なのだから警察には多めに見てもらいたい・・・と、もし捕まったら訴えるつもりだった。しかし、なんだなあ・・・爽やかな青空と暖かな日差しの中で、出来ればこのまま別の愛人宅にでも時化込みたくなるほど良い天気だった・・・という妄想が浮かんだ。

 

@@看護師に出した指示は、「診療所からカルテと点滴とタミフルと某漢方と解熱剤を持ってきて、患者宅に着いたら電話して部屋番号を教えてくれ・・」といった内容だった。

で、相当にスピード違反をしてすっ飛ばしたので、ほぼ同時に到着した様だが、@@看護師は患者と息子の状況から相当厄介な往診になると自己判断して、&&看護師を応援に頼んでいたようで、患者宅には@@と&&の二人の優秀な看護師が先着していた。日曜日に看護師二人を連れて1時間も高速飛ばして往診に行くなんて、採算度外視も甚だしい・・・経営者失格かもしれない。

しかし、この看護師二人体制の往診が皮肉にも非常に役立ったとは、事実は小説より奇なり、である。

 

さて、その生活保護家庭が多く住むその市営団地はまだ新しく、鉄筋2階建て、庭付き駐車場付きの日当たりのよい3LDKであった。家賃は払っていないらしく、聞いても知らなかったみたいだ。生活保護なので自動車は所有していないが、介護保険利用なのか、立派な電動カートが玄関前にあった。

その玄関ドアを開けて中に入ると、足元がベタベタするし、いたるところに何かが散らかっていて、患者の所に行くまでに色んなものをふんづけてしまったが、うーうー唸る患者の横で二人の看護師は悪戦苦闘していた。

インフルエンザ患者が二人で暮らす部屋なので窓を開けようとしたが容易に開かなかった様だ。埃とかでベタベタしていたのか、数カ月も窓を開けたことが無いようだった。布団も敷きっぱなしであろう、湿ってカビが布団と畳みの両方に・・・壁にも少しカビらしきものが見えた。布団の向こうには、洗濯しているのかどうか、衣類が山のように雑然と積まれていた。いったい何カ月分の衣類なのであろうか? その周りには幾つもの薬の袋があり、処方した主治医にさえ何が何だかわからない位だから、患者や息子に判る筈はなかろう・・・と、日頃の生活を想像すると怖くなった。

 

三人で抱えるように身体を引き起こして点滴をし、タミフルや解熱剤を服用させたが、その間に3LDKを見て回ったが、とても≪健康で文化的な最低限度の生活≫のレベルには程遠いものだった。

トイレも入居後一度も掃除したことが無いだろう・・・という様な汚れ様で、空になった匂い消しの芳香剤が10個くらいトイレットペーパーの芯と一緒に転がっていた。

風呂も洗濯機の周りも台所も何もかも・・・掃除とは無縁の汚れ様だった。歩けば埃が舞い、靴下の裏は真っ黒になり、看護師たちは往診に付いてきたことを後悔している様子だった。

 

息子に聞くと、近所に親戚も世話してくれるご近所さんもないらしい。隣の市に別の息子が居るらしいが行き来はなく、事実上、身障者の父と精神障害の息子の二人暮らしだった。

収入は手取り20万を越え、家賃も医療費も年金保険料もテレビ代も多くのものが無料か格安なため生活は充分に出来ると思うのだが、残念ながら≪健康で文化的な最低限度の暮らし≫が出来るほどではないようだ。

 

点滴をしてる間に看護師二人と僕で部屋の掃除をすることにした。これじゃ病気になる・・・、治るものも治らない・・・という気持ちからだったが、聞くと箒や雑巾やゴミ箱などの掃除道具を持っていないという。我々3人の常識を遥かに越える彼らの生活スタイル・生活レベルだったが、看護師の一人にポケットマネーを渡して掃除道具を買いに行かせた。

 

往診に来て、掃除をする羽目になるとは・・・、確かに電話で呼び出された看護師さん達は「貧乏くじを引いた」と思ったようだ。僕は・・・「人生何事も勉強勉強・・」と思うことにし、看護師さんと3人で掃除を開始した。

タイムリミットは点滴終了まで・・・  ③に続く (少々フィクションが混ざってます)

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