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この夏、山の本ばかり読んでいたが、新田次郎さんの【八甲田山 死の彷徨】のことも今思えば色々感じることがある。これは過去に凄く多くの人々が述べられてきた感想とあまり違わないと思うが、この4月以降の「新型インフルエンザ騒動」のことを考えると「いったい今の指揮官は誰だ?」ということが問題となる。
迫りくる日露戦争での厳冬期強行軍を想定しての青森第5連隊と弘前第31連隊の競う様な八甲田山雪中踏破訓練・・・まさに人体事件のごとき計画だったようだ。
そして、両計画の命運を分け、199人の貴重な人命が山中に失われた大きな理由の一つが「指揮系統の乱れ」だった。
暖かな霞が関の軍服を着た官僚たちが遠く青森の連隊に日露戦争を想定して人体実験的強行軍を持ちかけ、連隊のトップは装備不足を認識しつつ現場の限界を見定めようと沈黙し、現場指揮官の現地での指揮系統を、物見遊山のごとき気持ちの功名心だけの中途半端な上官が未曾有の危機においてしゃしゃり出て混迷を深め、全ての現場兵卒の死を招いて自らは無様に生き残る・・・ なんか、今の厚労省に似てますね。
幾重にも守られた永田町や霞が関の閣僚や官僚たちが津々浦々の医療機関の医師どもに強毒性鳥インフルの襲来を想定し過労死寸前の人体事件的重労働を強制し、医師会や大学、基幹病院のトップは装備不足・人員不足を認識しつつ現場医師の限界を見定めようと沈黙し、現場医療チームの現地での診療方針を、物見遊山のごとき気持ちのパフォーマンスだけの中途半端な大臣が未曾有の危機においてしゃしゃり出て混迷を深め、全ての医療機関の混乱を招いて自らは総選挙に敗れ無様に生き残る・・・ なんか、過去の政権党を思い出しますね。
厚労省から毎日毎日数えきれない・読み切れないくらいの通知・通達が全国の自治体や医療機関に流されているようですが、正直なところ国会解散以降は全く何にも厚労省からも医師会からも自治体からも我々一般診療所には情報・通知・通達が流れてきません。
一般の方が知るのと同じマスコミ情報と、ネット情報、ブログ情報、掲示板情報などなど、非公式な情報しか医療機関には届きません・・・届いてません・・・届いてますか?
4月、5月の頃はWHOとか米CDCとか、国立感染症研究所の専門家がTV画面に出ていましたが、最近は「厚労省通知」としかクレジットが出ません。あのパフォーマンス大臣も過去の人ですし、どんどん出てくる通知の出所・責任者・論拠などが完璧に希薄になってきています。
今は日本の新型インフルエンザの診療方針の最高責任者は誰なんでしょうか?
厚労省内に正式な重要ポストを臨時で持ってる公衆衛生・インフルエンザ専門家が居るんでしょうか?
大臣・副大臣・政務官など民主党内閣がトップで情報をコントロールしてるんですか?
厚労省の医系技官が(木村盛世さんに皮肉られながら)最高指揮官として信頼出来る情報を流しながら同時に指揮してるんでしょうか?
なんとなく、どれも当てはまらないような・・・???
もしかして、今の日本には医療問題、特に新型インフルエンザ診療の最高指揮官は不在なんじゃないですか?
危ないですよね・・・
頼りないですよね・・・
信頼感無いですよね・・・
強毒性に対応出来るんでしょうか・・・
医療機関に通知出来ないようじゃ駄目ですよね・・・
前の通知との矛盾は放置でしょうか・・・
指揮系統は実際あるんでしょうか・・・
まさか長妻大臣ですか・・・
大丈夫でしょうか・・・
日露戦争を想定しての 八甲田山・・・
強毒性鳥インフルを想定しての 弱毒性豚インフル・・・
指揮系統が確立していた第31連隊は全員生き残り、指揮系統が混迷した第5連隊は全滅した・・・
間違っても長妻大臣が指揮を執ってはいけません・・・
間違っても厚労省医系技官が指揮を執っても(能力がないなら)いけません・・・
現場の眼、現場の経験、現場の判断を大切にし、現場を邪魔せず、現場の負担を増やさず、現場の環境を整え、現場に資金と装備を投入し、現場の健闘を称える・・・・
今の日本には津々浦々の医療関係者を納得させうる高名な指揮官は恐らくいないのだから、せめて上記の方針で現場主義で行ってほしいと思う。
ただ、出来れば5人程度の専門家チームを編成して、毎日毎週継続した診療方針の指針提示をしてくれればなお良いと思うが・・・
読んでくれてどうもありがとう
ちょっとインフル・ネタにも飽きて来ましたが、現場はますます混乱です・・・そう、新型インフルの現場です。
今日は午前中、随分と悩みました。
忙しかったんです・・・午前中の3時間の診療時間中に46人きっちり診察しました。と言っても無理なので4時間かかりましたが、平均5分10秒でした・・・原の糞ルールの「5分以上」はOKですか・・・?
でも、その中に5人の新型インフルエンザ疑い濃厚の患者が混ざっていました。それで、例の第三出入口経由の秘密の部屋での診療を慢性疾患の高齢者の合間合間に行うのですが、新型インフル患者の診療直後に腎不全や心不全や呼吸不全などの患者を診るので困ります。いちいち、完全防護服に着替えて一回一回廃棄なんて時間も金もありません。
でも、移したくないんですね・・・ウイルスを。
新型の患者さんの多くは一見さん、別にここじゃなくても診れるんですけど、待合室の患者さんは定期受診の方々・・・僕を頼ってきています。そしてヨワヨワしい老人が多いです。
今日初めて、もったいぶって隠していた防護ガウンと顔面防護シールドを使用しました。待合室の患者さんが、奥の方で黄色い防護服に身を包んだ僕が秘密の部屋に入って行くのを目撃して不審な眼差しで見詰めます。でも、僕はスペースシャトルの乗員みたいに笑顔で手は振りません・・・新型患者が直ぐ壁の向こうにいるなんて・・・言えません、いや言ってもいいですけど。
診察後は例によって急いでガウンを脱ぎ棄て、手を洗い、顔を洗い、鼻の穴を洗い、ウガイをして、髪の毛はプラズマクラスターに吹かれ、メガネを拭いて、ボールペンと聴診器をアルコールで拭き、診察室の換気扇とプラズマクラスターを最強にし、首筋を濡れ紙タオルで拭き、診察机に座って深呼吸をして・・・・次の患者をいつもの雰囲気で呼びいれます。
僕の新型インフル診察の作法・・・ちょっと、数名で限界です。やはり、一人の診療所で専任医師や専任看護師が居ないと流行時には無理ですね。
で、本題はこれからです。
例の「電話診察とFAX処方」というのがありますよね。厚労省の推進する「無診察タミフル処方」のことです。
条件としては、1)過去に発熱で診察歴があること 2)患者からの電話で話を聞いて判断すること だけだったでしょうか? いかにも簡単な条件ですね。話を聞いてタミフルの処方箋をFAXで流して、医療機関の待合室での感染機会を減らすこと・・・・が目的の迷案です。
普通なら、こんな糞通知など知るもんか・・・と無視して医療の基本を守って診察後に処方するので当院は一部の「薬だけくれ」患者に嫌われるのですが、今日はとうとう・・・ヤッチャイマシタ。
娘さんが三日前に高熱で他院で検査・・・陰性でタミフル処方せず、いまだ高熱状態。当院かかりつけの父親が昨日から高熱状態で本日受診し、検査は陰性。診察では相当怪しい感じ。そして・・・時々発熱などを診療したことのある奥さんが今朝から高熱で・・「ダウンして病院まで来れない」という。
一家三人がそろってインフルエンザ様の高熱・・・奥さんは自宅で寝ていて、夫から・・・「妻の分も処方してもらえませんか?」と聞かれた。
電話再診ではないけど夫から直接話を聞いたし、夫と子供の検査は陰性だけど厚労省は検査結果を無視して臨床症状で判断して早期処方しろと勧めてるし、FAX処方ではないけど処方箋を手渡し出来るし・・・ 奥さんは家で寝込んでいて、往診にも行けないし、他の病院に行けともいえないし・・・
夫は「先生の立場上、やはり診察せずに処方は出来ませんよね・・」と言うものの、厚労省の通達から考えると・・・僕は「実は恐らく出来るんです」と答えました。そして、「こんなことは医者の良心に反しますが、厚労省の役人が良いというので出しましょう。でも、何かあって文句があったら厚労省に言ってください。くれぐれも僕を恨まないように・・」と言い渡して、夫に妻の分の処方箋も手渡しました。
でも電話再診料は取れないですよね・・・多分。初診料とか取れるんでしょうか? 検査もせず、診察もせず、タミフル処方して保険を削ってきませんか?
あ~、昨日「魂を売った」様だ・・と書きましたが、とうとう「無診察でFAX処方」までヤッチャイマシタよ・・・
これ、合法でしょうか、違法でしょうか? もし違法でも厚労省が推奨している方法と似てますから、僕を批判しないでください・・・
あ~、あと数日もすれば良心の呵責とか医者の誇りとか・・・もうどうでもよくなるんでしょうね、きっと。
読んでくれてどうもありがとう
近所の小学校も幼稚園も昨日の運動会を中止してしまい、驚いていると同時に呆れている。どちらも新型インフルエンザの影響とはいえ、児童に数名の患者しかいないとか・・・
何たることよ・・・ 日本の公衆衛生のレベルは全く馬鹿げている
子供へのタミフル、怪しければドンドン早期に使用せよ、検査はしなくても・・・ と厚労省が言えば、
予防投与はするな、安易に使うな、耐性獲得に配慮せよ・・・ とWHOは言うし、
感染しても外出を控えて家にいなさい、タミフルなんて元気な人間には不要だ・・・ とCDCは言うし、
いったいぜんたい、どうすりゃいいのさ 思案橋・・・??
で、僕は今日から 魂を売ったのだ・・・
検査が陰性でも、子供が元気でも、ハイリスク者が同居してなくても、新型インフルエンザを臨床的に疑ったら 色々悩まず、日本の厚生労働大臣の署名の入った医師免許証を授かっている以上、文句も言わずに、WHOもCDCも無視して厚労省の意向に従うことにした・・・
凄く恥ずかしい、実に情けない、心底歯がゆい、どう考えても心苦しい・・・・・
僕は 馬鹿野郎に魂を売った
僕は 医学の基本を無視した
僕は 理性で考えることを放棄した
僕は 安易な策に流された
僕は 新型インフルに負けた
こんなはずじゃなかった
つまんない医者にはなりたくなかった
こんなんじゃ医者の価値は無いだろう
誰にも尊敬はされないだろう
良き先達とは言われないだろう
子供らには知られたくない、僕の安易な服従を・・・
子供らには真似て欲しくない、僕の非科学的な態度を・・・
子供らには負けてほしくない、馬鹿な権力者たちに・・・
子供らには勝ちとってほしい、地域住民の尊敬を・・・
嫌だなあ
医者であることが辛いなあ
誰かの眼を気にせずに正しい医療をしたいなあ
科学的感性を失いたくないなあ
日本から逃げたいなあ
なぜかなあ
読んでくれてどうもありがとう