| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
| 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
| 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
| 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
| 27 | 28 | 29 | 30 |
開業以来11年、僕が院内にいるときに受診依頼の電話を断ったことは余程の専門外でない限りあまり無かった。特に、過去に受診歴のある人は必ず診ていた・・・が、今日は朝からの影響で断ってしまった。
午後6時30分、透析室が回収とか給食とか色々と忙しい時間帯に電話はなった。昨年当院を受診したことがあるという。聞けば・・・どう考えても新型インフルエンザ。
当院は祝日を含め、月水金は夜10時過ぎまで医者も看護師も居て電気も明々と灯っているので地域の人々には便利な存在のようだ。確かにこれまでは断らなかった。しかし、今朝のインフルエンザ罹患の透析患者の女性の救急車に乗り込む姿を思い起こすと、「我々は絶対に透析室にインフルエンザを持ち込めない」と強く感じるのである。
昼間は外来看護師2名が外来だけをみて透析室とはインフルエンザ患者の診療後には接触が無いようにしている。いちいち、看護師がシャワーを浴びたり全身の防護服を使い捨てにするわけにもいかないのでスタッフの接点を無くしている。しかし、外来終了後の夜間は、全てのスタッフが透析業務をこなさないと回らないのである。従って、もし夜間の外来スタッフが居ない時間に新型インフルエンザを透析スタッフとともに診療してしまうと、忙しい夜間透析の管理が出来なくなるばかりか透析室にウイルスを持ち込むかになってしまう。これでは超ハイリスクの透析患者を危険にさらすことになる。
もちろん、いくら透析施設だからと言って、泌尿器科ではなく内科が基本の医療機関なので通常の診療時間帯には新型インフルエンザ患者も断らずきちんと診療しているが、時間外や夜間帯は今後「新型疑いの患者」は診れないなと感じた。
マスコミは言わないが、妊婦さん以上に透析患者は危険だと僕は思う。何となく今日は僕の新型インフルエンザに対する感覚を変える日になったようだ。
いくら僕ら透析施設が夜間もやってるからといって、そこに夜間に新型インフルエンザで受診しないでほしい・・・と言っても、普通はそこまで理解してくれる人は少なかろうが。心からのお願いだ・・・
でも、患者を断るのは良い気分ではないなあ・・・
読んでくれてどうもありがとう
朝の弱い僕に一本の電話・・・午前7時、ある透析患者さん(の夫)からだった。(ちなみに、僕は受診歴のある患者全員に携帯番号を教えている馬鹿医者です)
よく心不全や肺炎や不整脈発作などで入院を繰り返され、日曜日にも緊急電話が多くかかる患者さんで、14日前に退院したばかりだった。しかし、今朝の状態はこれまでと違う緊張感を僕にもたらし、一気に目が覚めた。
旦那さんが、『昨夜から妻が高熱で、どうしたらいいですか?』と恐縮しながら問われるが、どうこたえたものか? 寝起きの身体に緊張感が一瞬で走る・・・新型インフルエンザかも?
「お話からは新型インフルエンザも疑わしいですね。他の透析患者との接触を避けるために時間差での対応を考えますから、8時半過ぎにまた電話をかけます。それまで自宅で連絡を待ってください・・」と、一応答えたが、他の患者だけでなく、多忙なスタッフとの調整も必要だ。しかも、連休後で外来はいつも以上に殺到している。
すぐ携帯でスタッフに連絡し、マニュアルに沿って対応を開始した。
まずは、ベッド位置の調整。感染対策ベッドの横のベッドの患者を発熱で電話してきた患者の場所に移し、ダイアライザーのプライミングも患者向けに交換を指示した。
来院時間の指定と、来院方法・到着後のスタッフとのコンタクト方法の調整と連絡を行った。すなわち、9時の来院と駐車場で車内待機、そして例の第三入口から感染症用特性隠し部屋へ誘導。
しかし、想像以上に彼女は重症だった・・・車椅子での移動も辛そうだった。
彼女は立てない、動けない、39度、嘔吐を繰り返す・・・簡易キットがA型インフルエンザの感染を示し、新型インフルエンザがほぼ確定した。元々肺が悪いが、レントゲン写真を立位で撮れる状況ではないが、白血球数は16000を越えている。
透析患者であると同時に慢性の肺疾患と重症心不全、そして膠原病類縁疾患を持つ彼女は超のつくハイリスク患者である。今後、急速に全身状態が悪化する可能性があるため入院を依頼することになった。
まず、急いでタミフルを服用させた・・・しかし、20分後、彼女は嘔吐してしまった。タミフルは吸収されたであろうか? そして、僕は(通常の方法ではないが)リレンザも吸入させた。かつて、鳥インフルエンザが話題になった時に専門家の間でタミフルとリレンザの併用が有効であろうといわれていたし、こんな肺疾患を基礎に持つ超ハイリスクの患者をタミフル 1Capで救えるか心配でもあったから・・・ 報道ではどこも併用は試行していないが、肺の基礎疾患の存在と嘔吐とが僕の背中を押した。躊躇して後から後悔はしたくない・・・現場の緊急判断だった。
依頼先の病院の透析室にとっても新型インフルエンザは初めてのケースという。忙しいのによく引き受けてくださった、心より感謝申し上げたい。
これまで新型インフルエンザで死亡例は20例ほど、その中で2例を透析患者が占める。そのことは多くの透析患者が情報として共有している。きっと彼女と夫は恐いに違いない。
全身をきちんと防護服で覆った救急隊と タミフルを飲んだ当院の看護師長が救急車に乗り込んだが、この女性患者は当院を出るとき僕を見詰めたものの言葉にならなかった様だ。なんとなく、仕草と眼差しで、『先生、看護師さん、頑張って生きて帰ってくるから・・』と語ってるようだった。僕も多くは話さなかった。
他の透析患者だけでなく外来患者にも一切目に触れない朝の医療現場、来院前の電話連絡を彼女に感謝するとともに、絶対に病気に勝って帰ってきてほしい・・・と祈るような気持ちで僕らは救急車を見送った。
でも、おとといの透析以降、家族以外との接触が無いのに・・・どうして昨夜、発症したのだろう? 透析患者にとって、やはりワクチンのないインフルエンザは恐ろしい存在だ。
読んでくれてどうもありがとう (個人が特定出来ないように少々修飾しています)