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2008.09.29 19:51 |  開業 / 病院経営  |  murajun  | 推薦数 : 1

土曜の夜・・

土曜の夜 あちこちのクルマで いくつものロマンスが芽生えて・・・  優しい月の光 総てを地上に捧げている・・・  いつか君にしゃべったことかもしれない・・・  愛して 生きて そして君はいつでも自由さ・・・

 

 

先週の土曜日、有り難いことに 僕のクリニックはとっても忙しかった。夕方まで途切れることも無く続いた患者さんの波にキレもせず、僕は充実した気持ちで玄関を閉じ 帰宅の準備をした。

先週手に入れた秘密のワコール製「勝負パンツ」を誰もいなくなった診察室で初めて穿き、その適度に股間を締め付け刺激するパンツの効果に期待しつつ、週末の時間を豊かにしてくれるであろう数冊の単行本を持ち帰るべく鞄に詰めた。

陽が傾き 6時を過ぎて 彼女の待つ家にワクワクしながら向っていたら胸の携帯が鳴った。コールメロディーは透析患者専用のもので、10年来馴染みの名前が表示された。何故か週末の夜間ばかりに腹痛を来たし易い患者で、何度か腹膜炎を来たして腹膜透析から血液透析に移行したことや、その後の数回の強烈な腹痛が脳裏を過ぎった。

『あの~ いつもの症状みたいで 腹がつかえて 吐き気が強くて・・』 電話に出ると 申し訳なさそうな奥さんの声だった。患者自身は電話に出れないほど悪いのか?

 

【土曜の夜】・・・僕にとってはかけがえの無い貴重な時間。週末しか家族と過ごせない僕ではあるが、患者さんからの電話連絡も週末や夜間は深刻なものが少なくない。

僕の気持ちは萎えた・・・ ついでにアソコも萎えた・・・

『既に診療所は閉めてますが、ウチでなんとかしようと思いますので・・ これからスタッフに連絡入れて集めてみます・・』 そう答えるしかなかった。彼は過去に何度か救急病院を受診したことはあったが、複雑な病態の深刻な基礎疾患由来の患者ゆえ、週末や深夜の救急病院の若い当直医では困惑しかねない患者でもある。そう度々 週末深夜に迷惑もかけられない、救急病院にも、患者にも・・・

 

土曜の夜の7時・・・スタッフ達は家族の夕食の準備に忙しかったり、家族と外食や映画に出かけたり、中には既に晩酌を楽しんでいたり・・・と、僕らにとっては「難しい時間帯」である。

看護師が2人、夕食の準備を中断して駆けつけて来てくれたのとほぼ同時に患者が到着した。意外にも・・・歩いて、少し申し訳なさそうに笑みまで浮かべて。

(ちょっと これはいつもの腹膜刺激症状ではないな・・・)  そうピンと来た。

そう言えば、最近少し狭心症や心不全を疑わせる感じがあったよな~ 

炎症反応・血球数測定・心電図・レントゲン・エコー ・・・・ どう見ても「鬱血性心不全」だった。仰向けで寝て胸が苦しく、運動で胸が詰る・・・ なるほど。でもこれなら 2000mlでも除水すればなんとか・・・

 

土曜の夜・・・ 他に適当な選択肢は無かった。僕ら自身が透析するか、どこか救急病院で透析してもらうか・・・ 幸い心筋梗塞は起していない。

土曜の夜8時、僕らがやるべきだと「天からの声」が静かに届いた。スタッフの顔をみると、うなづく様子が見て取れた。

 

そうなれば急いで準備だ。消毒作業など色々あるため男性スタッフを呼び出す。なかなか連絡がつかない・・・ そしてようやく繋がった。男性技師と看護師は幸いにも晩酌前だった。機械類の立ち上げで 透析開始可能時刻は夜9時ごろ・・・2人の主婦の看護師は一旦帰宅して家族の世話をして 9時か10時に再度来てくれると言う。そして僕は楽しみに週末の夜を待ってくれている「愛する彼女」に電話をした・・・・『今夜は行けないかも・・ ゴメンね』

 

土曜の夜の彼女との夕食は、急遽 「セブンイレブン」から仕入れることになった・・・それもまた楽し。

 

順調に透析が進み、途中で2名のスタッフが帰り、11時過ぎには僕を含めて3名が患者と土曜の夜の臨時透析を楽しんでいた。

『先生、何時まで回しますか?』

『そうやね、シンデレラタイムでいいよ。11時40分に回収作業を終わって、12時までには帰りなさい・・』

 

僕は日付が廻った12時20分に真っ暗なクリニックを出て、少し雨が振り出した深夜の高速道路を飛ばして彼女の待つ家に電話もせずに向った。突然で驚かそうと思ったからだった。でも、もし他の男性が居たらどうしよう? 彼女が外出していてもイヤだなあ・・

案の定、彼女は僕の帰宅に凄く驚いていた。彼女の家に着いたのは深夜一時を過ぎていた。家に誰も他の男性が居なくてホッとした。そして僕らは、遅くなったロマンスを明け方まで楽しんだ・・・ 

 

子供達はまだ勉強していたので起きていたが、こんな親爺の生活を見て医師の仕事にどんな感想を持つのか?時々心配になるが、時々は開業医でも仕方ないことだし、夜の11時50分に 『先生、みなさん ありがとうございました・・・』と深々と頭を下げてくれる患者さんの事を話してあげたら きっと理解してくれると思う。

 

読んでくれてどうもありがとう

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