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< 暗闇で女性患者と二人・・・ | メイン | 秋彼岸の朝に >
2007.09.21 19:51 |  開業 / 病院経営  |  murajun  | 推薦数 : 8

聞いた話

久しぶりに友人の開業医に「聞いた話」をしたい。当院でも今後同じような話が出て判断をすべき時が来るかもしれない。自分ならどう判断するか・・・今のところ迷いがまだある。

透析クリニックを開業している開業医Aは、几帳面で親切で丁寧で、同業者の僕から見ても学ぶことが多い。先日、久しぶりに会合で出くわして「困った話」を聞かされた。A医師は悩みを僕に聞いてみて欲しかったようで、僕も自分の為に参考になるかもと一緒に悩む事になってしまった。

 

A医師の透析クリニックがまだ始まって間もない頃、患者Zが外来に訪れた。近くのB病院で腎不全管理しており既にシャント造設術を済ましていた。何があったのか、紹介状を持たないZは、A医師の所へ転医したがっていた。ベッドは開院から日が浅くガラガラで透析患者の増加を拒む理由も無く、しばらく保存的に管理後、C病院での導入を経てA医師が維持管理を開始した。

患者Zの横暴はたちまち始まった。看護スタッフへの過剰な注文に始まり、次第に暴言・罵倒・ドタキャン・セクハラ行為などエスカレート。A医師の前では大人しく、優しい熱心な職員は業務を確実にコナシながらも導入直後の透析患者の心理的変化にも配慮しつつ必死に透析看護を行っていた。しかし、看護師の優しさは患者の横暴を助長することに繋がった。生来の性格なのか育ちなのか、勝手気まま我が儘放題、看護師達は「出て行け」という言葉を口に出来ないまま絶えに耐えた。

あるNsは業務中に泣き出し、あるもNsは動悸や不眠で服薬した。一瞬の不注意が死を招く透析医療、それを妨害するかのような患者Zの言動。ついには全部のNsが精神的に耐え切れなくなりA医師も患者Zに転院を奨める決心をするまでに至った。

しかし、患者Zの方から先に転院を切り出した。少し前に古巣のB病院へ受け入れを頼みに行っていたようで、ある日いままで以上の暴言を吐いて突然B病院へ転院していった。患者宅から一番便利な場所の総合病院である。結局、一年ほど週三回暴言に晒されたことになる。

 

その後の患者Zの行方を詮索するNsは皆無であった。皆一様に忘れたがっていたが、中々簡単に忘れる事が出来ないほどにスタッフ全員が傷ついていたようだ。A医師だけは被害は大きくは無かったが・・・

 

それから4年以上の月日が流れたある日、D病院から電話があった。患者ZがD病院のスタッフと揉めてA医師のクリニックに再び来たいと言っているとのこと。当時から患者数は倍以上に増え、透析医療があらゆる面で困難になってきていた。優秀なNsを長くストレス無く働かせる事が、事故を防ぎ透析患者の予後を改善し結果的に患者数を増やし収益に繋がる。こういう効率的な業務体系の確立が求められ、Nsの役割も更に重要になっていた。

A医師はスタッフと緊急会議を行いスタッフの意見を拾った。誰一人「受けましょう」と言うNsは居ず、当時の患者Zからの暴言の数々が再び甦って来て体調が悪くなるものが出た。A院長は、後輩であるD病院の医師に事情を説明し断った。そして再び皆が忘れる努力をして平和な日々が戻った。

 

そして先月、A医師のクリニックに患者Zが直接現れた・・・

『やあ、久しぶりやね・・』 これが、患者Zの最初の言葉だった。確かに5年ぶりは久しぶりだ。何しに来たのか? 数名のNsが不安げに聞き耳を立てる。次の言葉は、『ベッド空いてる?』 だった。照れ隠しなのか、ヘラヘラ笑うように過去の謝罪の言葉は全く聞かれなかった。

「空いてるか?」と聞かれれば、1~2床空いてはいようが、「あなたのためには」空いてはいないのである。

聞くと、患者ZはA医師をはなれた後はB病院から転々としD病院へたどり着いたが、D病院と揉めてA医師に連絡するも断られてからは、E医院へ移り、再びB病院に移り、何故か今度はC病院に入院をし、C病院を退院した当日にA医師のクリニックへ現れたのである。翌日に透析を控え、既に夕方が近付いていて紹介状も無く、電話連絡も無い。普通ならC病院はB病院への紹介状を準備するケースであるが、B病院へは戻りたくない様子だ。

 

Ns達がとうとうA医師に意見を述べだした。かつて患者Zにどれだけ全員が苦しめられたか。暴力事件こそ無かったが退職を考えなかったNsは少なかったという。そこへ今回の登場だ。Nsたちのアレルギー反応は著明だった。数名が「受け入れ」なら「退職」を希望した。優秀な透析Nsの退職は残ったNsにも影響を当然及ぼしAクリニックは麻痺状態になるだろう。外来なら縮小や休診で対応可能だが、透析は短縮も休止も出来ない。それはAクリニックの崩壊を意味するのである。

 

結局、A医師は患者Zの受け入れを断る事にした。応召義務の問題も頭をよぎったが、倒産のリスクを冒してまで横暴な患者を受け入れる義務は「私立クリニック」には無いと考えたようだ。ただ、理由については「あんたが嫌いだ」とまでは言えず、「満床」が理由とされたため、『空いたら電話して・・・』と言い残して患者Zはニヤニヤしながら引き取ったそうだ。

 

Aクリニックには再び平穏が戻ったが、数ヶ月先に再び患者Zが現れて、『本当に満床か?』と透析室を覗きに行くことがあるかもしれない。そのとき何と答えよう?

『二度と来るな・・・』とでも言おうものなら、傷害事件が発生するかも知れないな・・・ とA医師は悩んで僕にどうしても話しておきたかったようだ。

 

僕ならどうするか? やはりA医師と同じく受け入れ拒否を決断するんじゃないかな・・・と今のところ思っている。でも、そんな場面に遭遇したくは無い。Aクリニックが「人気が有る」だけに、患者Zが再び戻りたがったのは皮肉な話である。

透析患者さんと医療者は共に助け合わないとお互い不幸になって簡単に崩壊を招くと 僕は我が儘な性格の透析患者さんに言っておきたい。『一緒に 頑張ろう・・』

(聞いた話を更に少々、患者と病院の特定が出来ない様に改変していますが、本質的な流れはマンマです)

 

読んでくれてどうもありがとう。

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コメント

コメント一覧

何か俺のこと書いていない?

@@便乗コメント失礼します by murajun@@
もうばれましたか? あれほどばれない様に内容を変えてたんですが・・・
それにしても、患者Zさんはアイオワにお住まいのハズですが・・・ ドッキリですが、本人だけにはわかる内容でしょうね。
written by 患者Z / 2007.09.22 05:25
同業者としてお悩みはよくわかります。
応召義務に関してはこういう場合はどうなのでしょうね。
患者Z個人のことだけを考えれば応召義務違反を問われるかもしれませんが、患者Zを受け入れることによる他の患者への悪影響、クリニック経営への悪影響を考慮すれば、社会的には許される拒否だと思うのですが。
こういう困った患者はどこにでもいて、私の地域では大学病院と関連病院の公立病院が半年ごとに受け持っていました。数年後脳出血を発症して寝たきり、発語不能となり、最終的には長期入院ができる透析病院へとおさまりました。
こういうケースは結果オーライを待つしかないんでしょうか。

@@便乗コメント失礼します by murajun@@
当院でも喧嘩別れの出戻りを2度受け入れたことがあります。二人とも幸いに言動も改善され、なんとか平穏に経過していますが、一触即発の可能性は無きにしも非ずです。
患者Zの言葉ですが、『サービスは私立診療所が良いもんな~ 公立はサービスが悪い』と言われたようです。そりゃそうなんですが・・・・タダで高級サービスを求めすぎですね。
本日もお仕事、ご苦労様。
written by rinzaru / 2007.09.24 09:11

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