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僕は最近、遅ればせながら「米原万里」さんを【再発見】している。恥ずかしながら、今年になるまで(つまり彼女が生きてるうちに)米原さんの本を一冊も読んだ事が無かった。だから、彼女に「読書感想文」を送れなかったことが悲しい。
彼女が昨年この世を去った時、僕の中では「ロシア語通訳のオバサン」でしかなかったのに、今では「稀有の識者」の一人と思えるようになっており、誠にもって惜しい人物を失ってしまったと辛く感じている。色んな日本の知識人が最近こぞって『うちのめされるようなすごい本』を推薦してるので、僕も彼女の魅力にやっと気付くことが出来たのである。
そんな訳で、彼女の本を最近よく読むようになった。その中でも『発明マニア』という 今年3月に毎日新聞社から出版された本に僕は完全にマイってしまった。毎日新聞も、時には良い事もするようだ・・・・誉めてあげることにしよう。
この本の内容は【サンデー毎日】の連載コラムである(2003/11/16 ~ 2006/5/21)。119の珠玉のコラム集で、約500ページの二段組、小さな文字でビッシリという分量にまず驚きだ。ご丁寧に素晴らしい「お洒落なイラスト」まで添えられており、「ARAIYAYO」さんは米原さんの別名らしい。
癌で亡くなる直前まで、週刊文春の書評コラムと並行して(『打ちのめされるようなすごい本』)、これだけの内容の本を書き続けたと言うことであり、尊敬に値する。死ぬ前の暗さや死を恐れる気配は全く感じられない。その発想の豊かさに驚くと共に、癌におかされ、闘病中にもかかわらず、途切れることのないユーモア感覚と、批評眼の鋭さには敬服する。文章の運び、歯切れ良さ・・・出だし、途中、それに、締め、の一句も素晴らしい。【米原万里の発明本、工夫本、How to 本】というのが本書の宣伝文句だが、地球の東西南北、時空を貫く辛口の時事評論、あるいは書評としても十分通用する内容である。さすがは貴族院議員の孫、共産党員の娘、東欧育ち・・・の天才だ。のっけから安倍さん批判全開である。
僕はいつ死んでも後悔しないように、色々なジャンルのコラム風ブログ記事を書き続けているが、全然レベルが違って誠に恥ずかしい限りだ。
知的関心、情報量なら『打ちのめされるようなすごい本』、エンタテメントなら 『発明マニア』や『他諺の空似』であろう。勿論、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』などの作品も興味深い。つまり、なにを選んでもOKだ・・・と思う。万里さんの本は、日本語のリズムがよく、内容も薄くない。ひとを喰った、まさに我が道を行く、というか。知識と度胸、文章力のある実力派でないと書けないエッセイなのである。
医学研究でも言えるかもしれないが、馬鹿馬鹿しいアイデアに大真面目に取り組み続けることが、いずれは有益な代物を産み出すことに繋がるに違いない。『発明マニア』は、大真面目に試作、実行に取り組んだら、ひょっとしたら巨万の富の産み出すアイデアを多々秘めている一冊かも知れない。
是非、若き医師や医学生の皆さんも手にとって読んでみてください。お奨めしますよ。
読んでくれてどうもありがとう。
僕の診療所の待合室には、この時期になると開院以来ずっと同じ一枚の 『アジサイの版画』 が飾られ続けている。
残念ながら「実物」の写真はお見せできないが、正式には【 Fence & Flowers - 18" x 12" / 18 colors 】というタイトルの版画である。
先程「ネット」で調べてみて初めて【作品名】と【作者名】を確認したのであるが、作者は【Robert Selkowitz】さんで、New Jersey 州の南端、Cape May の「家の庭」を描いた風景だ。【Cape May】 はアメリカで最も古い「シーサイド リゾート」だといわれ、今も古いヴィクトリア様式の歴史的建物が美しい海辺の街を形成している。
僕らは、ちょうどこの時期に 留学先のPhiledelphiaから車を大西洋に向って走らせた。いつもなら「カジノ」の街「Atrantic City」に真っ直ぐに向うはずなのだが、爽やかなこの季節に日帰り出来る「浜辺のリゾート」を目指さないのは健康上よろしくない・・・だろうと思う。
ふらりと入り込んだ画廊には、「Cape May」を描いた作品が幾つも並んでいたが、僕らは「淡いピンクの紫陽花がフェンス越しに描かれた」この作品に魅了された。
僕らはその日の食事代を除いた有り金を叩いて、迷わず版画を購入したなつかしい想い出がある。額入りでも 2万円としない安い作品だったが、ずっと診療所の壁を飾ってくれている。下の写真は彼の作品集だという。他の作品もだが、作品集も手にして見たい。
このSelkowitz さんは、『テラスの芸術家』・・と呼ばれているらしく、庭や海に面した家のテラスの作品を好んで描いているようだ。性格が良さそうな絵の雰囲気である。
今日はジットリと鬱陶しい梅雨空であった。
こんな日は、『紫陽花』も美しいが、急にNew Jersey の浜辺の街に、愛する妻と飛んでいってしまいたくなる・・・
読んでくれてどうもありがとう。
【高齢者の一人暮らし】・・・・年金の受給年齢が引き上げられたうえに、田舎に多い国民年金の場合には生活保護家庭にも遠く及ばない。ましてや子供達に養ってもらえないとなると悲惨である。
昨日、そんな高齢者の悲惨な病態に出くわした。
65歳の男性Aさんは、妻に先立たれ、子供もおらず、遠くに親戚があるのみだ。田舎だからというわけではないが、生活していくためには今後も自分で働き続けなければ・・・・僅かな「年金」にも頼れないのである。
最近のAさんは、遺跡発掘作業で生活の糧を得ているらしい。雨天中止で、夏場は炎天下の作業で若い人でも大変である。オマケに、夕方からは「シルバーセンター」の作業もこなしている。それでも生活は苦しいらしい。前々日から体調を壊したものの生活のため前日は仕事を休み、昨日になって当院にやって来た。それで安い【市の基本検診】を受けたい・・という。
しかし、Aさんの体調は僕にも一目で【熱中症】と分かるものであった。『お金はあまり持たないから・・』と不安がるAさんを説得して、採血して点滴を行った。脱水もあり心拍数も120/分で血圧も90mmHg以下で、発熱も見られた。全くの当院初診で普段の姿は分からないが、意識レベルこそ正常であったものの、肌艶も悪く細かい振るえも見られた。心電図・胸写などを含め脱水は確実に存在したが、それ以外の症状が雰囲気の割りに「自覚症状」としては少なかったのが逆に不思議であった。
Aさんの「体調」が幾分点滴で改善したため、一旦 『明日もぜひ来なさいよ・・・採血結果も説明するから・・・シッカリ水分を採っときなさいね・・仕事行っちゃダメですよ・・・わかった?』と言って帰宅させた。しかし、「独居」なのが気になり、『仕事を休むと経済的に困る』と訴えていたために、昼前に「外注」に出した血液検査の結果を待っていた。その結果がFAXで「夕方」になって送られてきたが・・・・想像以上に「恐ろしい」結果だった。
熱中症にも当然ながら『軽重』がある。Aさんは「中程度」かと思って自覚症状を目安に対応していたが僕の間違いだったようだ。前日はそんなに炎天下では無かったので軽く感じていたのだろう、患者も僕も。まだ、6月だったから・・・
CPK 7400, GOT 320, BUN 52, Crea 5.0, WBC 26,000, CRP 6+ etc.・・・・ バイタルも前述通り
立派な【重篤な熱中症】である。「横紋筋融解」や「急性腎不全」も疑われ、場合によっては緊急透析も必要になりそうだ。当院でも「透析」はできるとは言うものの無床診療所であり、緊急時における万全の対応は残念ながら出来ない。しかし、結果が判明したのが既に夕方5時半過ぎ・・・急いで患者を呼び出し、少し遠方の親戚にも電話連絡を入れて『入院のお世話』をお願いした。
Aさんは「お金」を相当心配されたが、説得に応じて、少し離れた大病院での「入院」治療を承諾された。夜7時を過ぎて、やっとAさんは大病院の救急センターに入院された。もう大丈夫であろう・・・どうか頼みますよ、センターの先生方。
6月とはいえ、たとえ自覚症状が少なくても気をつけるべき症例が隠れている事を肝に銘じた。僕が経験したなかでは最悪の熱中症であったようだ。
無床で緊急検査が出来ないとなかなか難しい。もしFAXが間に合わなかったとしたら? 深夜にえらい事になっていたかもしれない・・・
でも、経済的理由で受診を控える人が増加していると思う。なんとかしてあげたいが・・・
読んでくれてどうもありがとう。
毎日多くの高齢者と身近に接していると、苦労しつつ色々な環境に身をおかれていることを感じ、なにか手を差し伸べてやりたい気持ちが自然と湧いては来るのだが、所詮一人の医師の力には限界があって、やはり家族や社会が支える力を喪失しつつある事に不安を覚える。
幸いにも色々な患者さんに時々「お礼の手紙」をいただくのであるが、年寄りの精一杯の感謝の気持ちを感じ取る事が出来る。自分に出来る事は・・・・話を聞いて手を当てて眼を見て話すことくらいだ。
一人暮らしの高齢者が非常に増えており、医師としては・・・・「政治の力」を本来ならば期待したいところだ。残念な事に、今の議員メンバーでは無理だと知ってはいるが・・・
昨日お手紙をいただいた女性も独居である。身近に身よりも無いようだ。以前脳梗塞をされており近くのリハビリ病院から数年前に紹介されてきた。上品なおばあちゃんなのであるが、将来への不安が少なくないようだ・・・ 僕の携帯電話番号を大切にもたれているようだ。そのままご紹介させていただく。
M先生へ
4年前に先生にご縁を戴き本当にありがとう御座います。人生の終盤に近づき、先生にお会い出来て、私も長らえる様な気がします。私のどんな話にも丁寧に優しく御指導いただきありがたい気持ちでいっぱいです。
これは私の手作りで失礼ですけど、手先のリハビリの為作ったものです。人生の終盤になり、全ての皆様に助けられております。ほんの心ばかりのお礼を今の内にさせていただきます。本当にありがとう御座います。これからもお世話様にならしていただきます。
かしこ
僕の様な平凡な医師であっても、患者さんに感謝いただくと仕事に励みもでてくる。こんなお手紙は、どのように高価な金品よりもありがたく感じる。出来ればうら若い美人にもいただきたいが家庭崩壊をもたらしてもいけないので贅沢は言わない・・・
今の時代、医師を批判の対象としてしか捉えきれない政治家やマスコミや心無い患者が多くいて、医師としての仕事を放棄してしまいたくなる不幸な時代である。
患者さんもマスコミも政治家も、暖かい目で医療を育てていっていただければ世の中も変わると感じる。自分も常に『ありがとう』の言葉を忘れずにいたい。
読んでくれてどうもありがとう。