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患者さんの「フリーアクセス」というものは医療にとって大切な要素であるが、スーパーマーケットとか商売と違って単純に「売れれば良い」というものではない。そこには医療者の感情というものがあって、単なるサービス業としか捉えきれない人には理解できない難しい問題がある。
例えば患者さんの入院先などを紹介する際、『あそこは母親の入院の際に良い思いをしなかったから別の病院にお願いします・・・』などという事はしばしばである。そんな時に、患者の病気のためにはアソコがベストなんだけど・・という評価は通用しない。医療レベルとは逆転することもあり、周囲に病院が少ない場合には紹介もママならないこともある。患者さんにとって不都合と思っても眼を瞑り心を鬼にしてレベルの低い病院に紹介する事もある。
また勝手気ままな【出戻り患者】さんに悩まされる事も少なくない。散々医師や看護師を批判して罵倒して罵って「二度と来るか、こんなクソ病院に・・」と言い放って出て行った患者さんが出戻って来る事も少なくはない。内心、「あれだけくそみそに罵りながら一体何しに来たの?」と感じる事もあるが、なかなか口に出しては言えない。一応、不愉快な感情を押し殺して医療者の務めを果す。しかし、罵声を浴びせられて砂をかけるように去っていた日のことは決して忘れにくいものである。
当院は透析患者も診ているが、どんなに心をこめて対応しても勝手に出て行く患者は時々おられる。スタッフも僕も家族以上に親身になって精一杯対応しているのだが、家族のように親身になればなるほど逆にわがままな態度が表ざたになることもある。兄弟喧嘩が他人の喧嘩より往々にして酷くなりがちなことと同じである。
数日前にも「戻って来たい」と希望される患者さんが相談にこられた。以前から非常に文句が多い人で、スタッフに何度も何度も罵詈雑言を浴びせ続けていたので、ある日に僕が「文句しか言わないなら他へ行ってくれ・・」といって他の病院へ行った人だった。行く間際には「あそこはココと違って素晴らしい・・」とまで抜かして出て行ったのに、まだ一月もしなくて戻って来たいという。
皆さん、患者さんは言い放題であって、病院はサービス業だから簡単にまた戻れると思われるらしい。しかし、命をかけた治療をしている透析などは、スタッフの受けた傷は非常に深い。何しろ週に15時間近くも一緒に過ごすのである。
「あんたなんか二度と診ないよ・・あっちがいいんでしょ?」と思っても言えないし、透析しないと死ぬので放置も出来ない。そんなあんなで結局どんなにひどい人でも再び受け入れることになる。今までにこうして3人の人が戻ってきた。無茶苦茶だった一人だけは戻って来たいと希望されたが、あの人が戻れば職員が数名辞めたいというので丁重に断った。
戻ってくる患者さんはハイリスクである。スタッフの離職への導火線となってしまうのが最も大きなリスクである。医療はサービス業だとはやはり思えない。サービス業なら売らない自由もあるし、値段もリスクに応じて設定できる。気に入った顧客だけにサービスを優遇する事もサービス業ならできるであろう。しかし、医療はその何れも許されていない。
ならば、「サービス業であるから売り手への罵詈雑言も自由」などと勝手に勘違いしないで頂きたい。消費者のポジションにいてはダメなのである。生命を商品のように売り買いするようになると、そのうち患者さんにとって非常に不愉快な事態になっていく気がしてしまう。
医療がサービス業であるなどといった誤った感覚は国を誤らせる・・・
読んでくれてどうもありがとう。