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使命と魂のリミット・・・・東野 圭吾の新作のタイトルなのだが、読み終わった今も、「何かもっと違ったタイトルの付け方があっただろうに・・」としか私には感じられない。
東野 圭吾の作品は今まで僅か5冊程しか読んだ事はないが、いい作家だと認識している。一番印象深かったのは「白夜行」だが、幾つも評価される作品を発表してきたと思う。多作というか遅咲きというか、やっと57作目となる「容疑者Xの献身」で直木賞を受賞した際には、書店で手には取ったが何故か購読はしなかった。しかし、今回は医療物ということで購読してみた。基本的には事件ミステリー作家であろうし、彼の医療物の実績は良く知らない。立ち読みしてて、「女医」と「心臓血管外科」と「手術中の院内完全停電」という言葉が引っかかって買ってしまった。病院内の本格ミステリーをどう料理しているか、更に私の専門に近い心臓血管外科の題材だった事もあって、東野作品を久しぶりに楽しみに読み出した。
しかし、これは医療物なのか警察物なのかどっちつかずで消化不良の読後感だ。最近は、国内外ともに「医療物は医師の作品に限って」読み続けていただけに、内容や人物描写にかなりの違和感が残った。非現実的な不自然な表現が目に付いてしまってなかなか前に引っ張られなかった。おまけに、50%を超えたあたりで事件の全貌と犯人相関図がスンナリとばらされてしまい、後は惰性で読んだようなものだ。
東野氏の「白夜行」における徹底した濃密な表現法での医療問題描写を期待したのがそもそも無理だったのだろう。また、その点から言っても七尾刑事の推理も唐突なジャンプに感じられて、申し訳ないが作品が軽い感じに思われた。東野氏の多くの作品は軽快さを信条としているだろうが、「使命と魂」と言われると重厚な医療物を想像してしまった。
もう一点の先入観というか期待は、「大手術時に大地震や完全停電が生じた際に、その完璧な苦境を医療チームはどう乗り切るのか・・」 と言う私がかねてから疑問に思っている事を、医師ではない東野氏がどう解決し描いてくれるのか?というのが興味の中心であった。答えは・・・残念ながら まだ疑問のままだ。
タイムリミットにおける解決法も、雫井 脩介の「犯人に告ぐ」の手法に類似しているが、その作品と比べても警察物としての重厚さにも物足りなさを感じる。
そんな完璧な期待をする方が悪いともいえるが、高い力量のある東野氏の「本格医療ミステリー」と宣伝してあると、当然ながら期待してしまう。
しかし、「医療物」は本物の臨床経験のある医師作家の方が、やはりスンナリ自然な感じで心に響いてくる。それだけ最近の医師作家の力量が上がってきたということではなかろうか?医師は医療専門馬鹿なばかりではなく、総合科学の実践者の性格も持っているのだから、書けば書けるのは当然のことと思う。
もう一つ、舞台が「大学病院というより都会の中規模基幹病院」という印象を強く受けた。主人公?の女医は「大学病院のローテート中の研修医」だそうだが、大学以外の大病院という感じで西園教授も教授らしくなかった。
最近のマッチング制度や新研修制度ではこんな教授ー研修医関係が普通なんだろうか?時代も変わり、最近の研修医は偉く、待遇もあがりだしたのかな?
読んでくれてどうもありがとう。