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今日は開業医にしては結構、循環器専門医をしていた一日であった。
朝からHolter ECG を3例、心エコー図を5例する必要があったので充実した開業医生活を満喫していたら、夕方に18ヶ月振りの80歳の女性がみえた。勿論覚えていた、というのも必ず和服を着て来院される重症患者さんだったからなのと、必ず後からお嫁さんが病状を聞きに来院されるからだった。しかし、久しく来院されなかったので正直気にも留めず、完全に頭の中から忘れ去った状態だった。実際は、どこにも診せず薬も飲まず、幸運にも死なずに無事に生活していたらしい。見た感じは以前と変わらなかった。
本日の主訴は、「胸の音がうるさくて眠れない・・」というものであった。以前のカルテにはAR3度、LevineⅢ~Ⅳ度と記載し、数種の処方をしていたが、「動悸が減った」とかでプッツリ途絶えていたようだ。
胸写ではCTRが63%から70%へ、ECGもLVの圧負荷所見が増悪していた。音がうるさいというので、聴診器を胸に当てたらビックリした。確かにウルサイのである。胸から聴診器を3cm離しても聞こえるその心雑音は紛れも無くLevineⅥ度だったし、Thrillも透析シャントthrillに負けない立派なものであった。大学病院の循環器科に長年居たが、コレほどの立派なLevineⅥ度は久々に聴く、というか初めてかもしれない。
お後が数人つかえていたので、色々考える事も無く、直ちにカラードップラー心エコーを頼った軟弱な循環器専門医の私。とっくに錆付いた看板だけど、興味は失ってはいないので検査中は動悸でドキドキしてしまった。

A弁左cuspの緩みが3度以上のARを生み、ARジェットがanterior mitral leafletを直撃し、多分激しく振動させている。高調な吹鳴性拡張期雑音である。同様のARジェットが相対的MS雑音をもたらすとAustin Flint雑音と言われ教科書にも必ず記載されているが、AF雑音はもう少し低調な拡張期ランブルに近かったのではあるまいか?正直なところ、もう忘れてしまった。この方の場合には、相対的MS雑音というより、本当にAMLをフルートの唇の様に振るわせる事で高調な雑音を生じているだけに聞こえる。
このウルサイ音は、果してAustin Flint 心雑音なのか否か?
老婦人がうるさくて眠れない様に、私は良く分からないまま悩んで今夜は眠れないかもしれない。
しかし、Flintさんは1860年頃の人だが、よく目で見るように雑音の正体を見破ったものだと感心してしまう。昔の人は本当にえらいなあ・・・
読んでくれてどうもありがとう。
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