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今日届けられた二冊のズシリと重たい本。
Mostly MOTOHARU we will be with you と題されたその本には「ロックンロールとセンチメンタリズムの間に」という副題が付けられ、一冊ごとにシリアル番号を載せた白いカバーが輝いている。当院の待合室のUSENからはスローなクリスマスソングが流れてきているが、彼の全ての発表されたものがこの中には表記されていて今眼を通している。NHK FMでのDJでかけた全曲リストからコンサートの全リストは勿論、本物のアルバムとして存在感を放っている。
MOTOHARU RADIO SHOW で1981年4月に偶然彼の音楽に出会った僕が、初めて足を運んだコンサートの日付、それが1982.4.6.である。

ひたすら大学のクラブ活動に打ち込んでいた僕が、たまたま雨が降ってクラブを休んだ日曜日の夕方、フラッと足を運んだのは市民会館の前だった。大量に余っていた当日券売り場に並ぶ私に声をかけてきた高校生の女の子。家庭教師をしていた子の友人の涼ちゃんだった。今では、先輩の奥さんになっているらしい。「これ、余っちゃったんですけどあげましょうか?」って涼ちゃんに貰ったチケットはナンと最前列のチケットだった。
あれから25年近く、ずっと佐野さんのファンを続けている。テレビでも見たこと無かった男のステージ上でシャウトする姿は強烈だった。会場には半分以上の空席があったが、隣の可愛い涼ちゃんさえ忘れてしまう程の感動だった。
この本の扉に挟まれた彼の鉛筆書きの詩「Good time & Bad time」。勿論コピーなのだが、初めて直筆の文字をみた。思いの他、可愛らしい大人しい字体だった。女の人の文字と言っても分からないくらいの優しい字を書く彼の魅力を、この濃密な本の中にまた再発見する事だろう。
再発見といえば、1998年に出されたDOCTORという曲。ちょうど開業前後で他の何にもかまってられなかった時期の彼の作品だそうだ。彼の妹をなくした際の想い、「自分が医師だったなら治してあげたのに・・」という曲。残念ながら、あまり好きな曲調ではないが、今まで全然知らなかった。
今でもはっきり覚えているが、僕は入局の時の医局誌に「佐野元春のツアードクターになりたい」と書いた。
僕に届いた本のシリアルナンバーは1222と1289だ。一冊は大事にしまっておくつもりだ。
読んでくれてどうもありがとう。
今日は開業医にしては結構、循環器専門医をしていた一日であった。
朝からHolter ECG を3例、心エコー図を5例する必要があったので充実した開業医生活を満喫していたら、夕方に18ヶ月振りの80歳の女性がみえた。勿論覚えていた、というのも必ず和服を着て来院される重症患者さんだったからなのと、必ず後からお嫁さんが病状を聞きに来院されるからだった。しかし、久しく来院されなかったので正直気にも留めず、完全に頭の中から忘れ去った状態だった。実際は、どこにも診せず薬も飲まず、幸運にも死なずに無事に生活していたらしい。見た感じは以前と変わらなかった。
本日の主訴は、「胸の音がうるさくて眠れない・・」というものであった。以前のカルテにはAR3度、LevineⅢ~Ⅳ度と記載し、数種の処方をしていたが、「動悸が減った」とかでプッツリ途絶えていたようだ。
胸写ではCTRが63%から70%へ、ECGもLVの圧負荷所見が増悪していた。音がうるさいというので、聴診器を胸に当てたらビックリした。確かにウルサイのである。胸から聴診器を3cm離しても聞こえるその心雑音は紛れも無くLevineⅥ度だったし、Thrillも透析シャントthrillに負けない立派なものであった。大学病院の循環器科に長年居たが、コレほどの立派なLevineⅥ度は久々に聴く、というか初めてかもしれない。
お後が数人つかえていたので、色々考える事も無く、直ちにカラードップラー心エコーを頼った軟弱な循環器専門医の私。とっくに錆付いた看板だけど、興味は失ってはいないので検査中は動悸でドキドキしてしまった。

A弁左cuspの緩みが3度以上のARを生み、ARジェットがanterior mitral leafletを直撃し、多分激しく振動させている。高調な吹鳴性拡張期雑音である。同様のARジェットが相対的MS雑音をもたらすとAustin Flint雑音と言われ教科書にも必ず記載されているが、AF雑音はもう少し低調な拡張期ランブルに近かったのではあるまいか?正直なところ、もう忘れてしまった。この方の場合には、相対的MS雑音というより、本当にAMLをフルートの唇の様に振るわせる事で高調な雑音を生じているだけに聞こえる。
このウルサイ音は、果してAustin Flint 心雑音なのか否か?
老婦人がうるさくて眠れない様に、私は良く分からないまま悩んで今夜は眠れないかもしれない。
しかし、Flintさんは1860年頃の人だが、よく目で見るように雑音の正体を見破ったものだと感心してしまう。昔の人は本当にえらいなあ・・・
読んでくれてどうもありがとう。
我が家の両親は、開業医の親のクセしてTVの影響を非常に受けやすいタイプのようだ。
昨夜も10時頃に帰宅すると、「大動脈瘤の筑波山大学・・日本に何人しか居ない・・」とか「川崎幸福病院の不整脈アブレーション・・不整脈に悩む患者が居なくなる・・」だとか、「凄いね~知ってるか?神の手らしいね」とか見たか見たかとウルサイ。今朝は食卓につくなり、「これからは小規模多機能型が最高らしいぞ、利用者にとっていいらしい・・」と、自分のところのデイサービスを忘れたかのように話してくれる。いちいちテレビをモニターできないので便利な存在だが、そのうち、老人を狙った押し売り商法の被害者にならないか心配だ。
「アブレーションは、うちの患者さんも今日**病院でしてもらったよ・・ もう、10年も前からやられてるし、この近所も何箇所もやってるし、うちからも今迄6~7人はお願いしたよ・・」というと、「そうか、この辺でもやってるのか?でもあのTV見ると素人はあの病院まで行きたくなるな。誤解させるね、病院名をもしものためにメモまでしていたよ。」という。確かに、世の中、「神の手」の称号はTVとタイアップすれば簡単に得られるらしい。
私は名医登場番組には全く縁が無かったし、これからも絶対に無いはずだが、一般の人がどうな風に医療や医師をみているかを考える上で、両親の反応を観察しながら対応策を練っている今日この頃である。
読んでくれてどうもありがとう。