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読んでくれてどうもありがとう。
先日、私の診療所にAさんが久しぶりにおみえになった。正確に言うと、退院された挨拶と今後の治療の相談に来られたのだ。
Aさんは、私が勤務医の頃から既に10年間診察を続けている重症心不全の患者さんで、拡張型心筋症:DCM。当時から心エコー図検査のEFは0.3程度、今では0.2以下で常時心不全症状がある。途中2度、肺水腫で入院された事もある。しかし、少し前にうっ血肝の症状だろうと思いつつ内視鏡検査をしたら噴門部早期癌が見つかってしまった。どう見ても、上腹部のつかえる症状とは無関係な印象の早期癌だった。
私は悩んでしまった。告知すべきか?
Aさんは何としても生きたいというタイプの性格で、私は内視鏡的切除:EMRに賭けて循環器も得意な基幹病院に紹介したのだが、心機能があまりに悪すぎて手術を含め無理とされた。遠くの大学病院のレーザー粘膜治療というオプションを頼り、入院しに行かれたが、行程の負担が大きかったのか、到着と同時に肺水腫でCCUへ直行となり、しばらく生死の境をさまよわれた。結局、肝心の胃の治療は全く出来ないままに先の基幹病院に転院され、数日前にやっと退院されたという経緯だ。
相談の内容は、今後の治療を再び私の診療所に任せたいが、両病院で奨められた植え込み型除再動器:ICDの手術をすると症状が楽になるか否か、というものであった。VT確認済みDCMでEF0.2なら充分に適応有りだろうが、突然死の原因になる致死性不整脈の予防にはなってもポンプ不全は対応できず、Aさんが期待する症状軽減にはあまり結びつかない。症状の改善は期待しすぎない方がいいけど、手術を受けた方がいいかもね・・と言ってしまった。安直に管理が楽だと感じたからだが、専門医と認定されていながらそこまでの知識しか恥ずかしながら持ち合わせていなかった。
しかし、日本シリーズ最終戦を見ずして聞きに行った講演会で、心臓再同期療法(CRT)と除細動治療を一つの装置で行うことを可能にした日本メドトロニックの「InSyncIIIマーキー」が国内初8月に保険適応になっていた事を初めて知った。極めて限られた病院でしか出来ない最新治療とは言うものの、開業医になると世間の進歩に遅れた旧型専門医にすぐなってしまうので大いに反省している。
次回のAさんの診察日にはCRT-Dを奨めてみようかと思っているが、癌患者の適応除外があるのだろうか?何しろ、機械代が420万円もするらしい。しかし、この装置でも3年生存率は60%程度位と思われるが、入れなきゃ30%以下の予後だと聞かされれば、例え自費でも入れたくなるだろう。
もっとも、Aさんはやはり胃癌ではなく心不全が生死の鍵を握るだろうし、透析患者の悪性腫瘍も同じように悩ましい問題だ。主治医としては、一人ひとりの患者の全てを見て判断すべきだろう。

(解説)1994年にCRTが学会報告され、これまで大規模試験でその有効性が認められ、日本でも2004年に保険適用となり重症心不全の治療に使用され始めた。致死的不整脈で突然死してしまう患者には植え込み型除細動器:ICDというペースメーカーが必要になるが、反対にこれではポンプ機能不全には有効ではなく、2006年8月より両室ペーシング機能付き植え込み型除細動器(; CRT-D)が日本でも保険適用となった。 このCRT-Dは心不全と不整脈による突然死の両方に対応した最新機器。植え込みと術後管理が複雑で難しく、厚生労働省により厳しい施設基準が設けられている。すべての心不全が適応になるわけではないが、夢のような治療法となる可能性を秘めている。
自称、循環器専門医もさび付いて来てしまったようで、大いに反省した夜でした。
しかし、はるばる大物教授が講演にみえたのに、日本一が決まりそうだったので出席者が相当少なく、大変気の毒な気がいたしました。私も懇親会には出ずに速攻で帰宅して、新庄君の涙に酔いしれました。
読んでくれてどうもありがとう。