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源氏物語にペンネームを得た帚木蓬生さんは九州大学医学部卒の現役精神科医である。東京大学文学部卒でもあり、フランス留学経験もあるため、先生の作品には欧州の香りと本格文学の品格が程よく共存している。職業がら医学サスペンスミステリーを得意とされているが、歴史物から不倫恋愛物、社会派小説まで実に幅広い。現在は出身地福岡県内のある都市で開業され患者さんの診療に当られている。開業後の第一作目が本書であると思うが、先生の幅広い見識に裏打ちされたカウンセリングを、気が狂う前に受けてみたいと私は密かに願っている。
この本「受命」は、先のミサイル連続発射実験の直前に発売された、実にタイムリーな国際サスペンス小説である。主人公は日系ブラジル人の産婦人科医師であり、北朝鮮の誇る産婦人科診療の現実まで描かれ、この点も実に興味深い。産婦人科医師不足や医療過誤問題に苦しむ日本も北朝鮮の良い点はドンドン真似したらいいかもしれない。しかし、本書「受命」の中では、既に今頃は金主席は毒殺されていて核実験は出来ないはずなんだが、帚木先生もまさか核実験を北朝鮮がやり遂げるとまでは考えておられなかったのかも知れない。
しかし、この小説は、とても良く書けていると思う。ブラジルを舞台にした「受精」の後編とも取れる作品ではあるが、独立して読まれても充分に感銘を受けると思う。そもそも北朝鮮に対して物知りになれる。自慢にはなりませんが・・・
著名な作家に対して「良く書けている」とは失礼な物言いだと承知しているが、かの国では主席の暗殺が如何に困難なことであるか、手に取るように感じられる鮮やかな周到な描写だ。先生の作品の中でも後々評価される名作であると感じる。中でも特に感じ入るのは、暗殺を企て実行していくのが在日朝鮮人、しかも、功成り名を遂げた有力者だという事だ。手法は別にして、暗殺計画そのものは本当にありそうな話であると感じる。やはり、金正日主席を早期に暗殺しないと北朝鮮は救われないと思う。未だに生きて無茶苦茶やっているところを見ると、暗殺も実際にやるとなると結構難しいのかな?と悩ましくなってくる。
帚木先生は私が大好きな作家の一人であるが、医師としては、現時点で最高の書き手であろうと信じる。代表作、名作は色々あるが、20数冊いづれ劣らぬ傑作揃いだ。
その中でも、逃亡、ヒトラーの防具、国銅、アフリカの蹄など是非、若い医師の皆さんに読んでもらいたい名作だと思います。でも、逃亡を完読するのは結構根性要ります。
帚木蓬生『逃亡』中国語訳を出版―滕新華さんに聞く
「僕はこの本を読んで日本の戦時中・戦後の暮らしが初めて分かりましたよ。食料の統制や町一面のバラック…。今の中国の若者は日本人といえば金持ちという印象しかないが、戦時中の日本は中国の貧しさと同様だった。周恩来首相の言われた、両国民とも被害者だったという言葉の通りです」
新型肺炎の大流行で対外交流が中断され、家で待機している間に、『逃亡』を読了。戦時中や戦後、ふつうの日本人がどのような目であの戦争を見ていたのか、どのような生活を送っていたのか。日本人作家によって歴史の事実を踏まえて書かれたこの小説を、一人でも多くの中国人に読ませたいと翻訳への思いが高まった。新型肺炎の直後、20年続けた民間交流の仕事から離れることになった。そのショックと憂鬱の思いを乗り越えなければならないという気持ちからも翻訳に取り組んだという。仕事の余暇に机に向かい2年がかりで完成させた60万字の労作は今年、戦後60年の夏に3千部出版された。
香港で諜報活動に従事していた守田軍曹。憲兵狩りにおびえつつ命からがら帰国した日本で待っていた「戦犯」追及で、再び逃亡生活を余儀なくされる。「国家と個人」を問う日本人必読の書として、柴田錬三郎賞を受賞した作品。作者の箒木蓬生氏から翻訳への謝辞とともに「『逃亡』は両国間の悲劇を等身大で描いており、中日の平和を希求する上で有益な作品と自負しています」と滕新華さんへ手紙が届いた。(現在は、北京市西城区外事弁公室主任)
読んでくれてどうもありがとう。
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