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晒し者「吉兆」状態の中で、県から公表されたHPの【正直者しか載れないリスト】を徒然なるままに眺めていると、実に興味深いことが浮かんでくる。医者・研究者の性なのであろう、表やデータを見ると分析してみたくなる。
県HPデータの「目的外使用」ではあるが、厚労省の「五分ルール基礎データ」みたいに【捏造】などは企んでいない。あんな破廉恥な行為をして罷免もされない日本は実に平和で美しい国である。H課長もM課長補佐も日本の医師免許を持つ者の一人として「恥ずかしい」という気持ちなどご存じないのか?
今日は微量採血器具製造販売大手の某社が「使用上の注意」のパンフレットをご丁寧に男女二人で持参してくれた。ウソかホントか、器具メーカー各社は「納入先への説明とシール貼りが完了した」という報告を2006年6月に厚労省に対して行ったとの事なので、HPデータを見つつ質問してみた。
ハッキリさせておきたいのは、その某社の社員なる者が当院に当該事項の説明で来院したのは今回が初めてであり、2006年3月~6月に行われたとされる「説明とシール貼り」には絶対に来ていない。また、説明のパンフレットも2008年6月30日着が最初で最後である。
さて、我々の常識では、充分な説明がなされれば、相手に理解力がありさえすれば少なくとも50%、普通は80%位は効果や変化があると思う。それが、医療機器の「禁忌・禁止」を通達し、おまけにシールまで貼りに来れば90%の医療機関は適切な使用方法に切り替えると思う。そこまでされて変更しない医療機関が10%あるとしたら既に医療現場は終わっている・・・
もしも、その数字より遥かに低い場合には、「通達が現場へ充分に届いていない」ということであり、普通の感覚では「説明とシール貼り」が完了したとは言えないのではないか? 僕はそう思う。
各自治体のHPには詳しく載っているので皆さんの自治体も分析されたらいかがであろうか? 今回の「通達」がいかに通達されてないかが実に良くわかると思う。
では、当県の数字をご覧頂きたい・・・
500を超える医療機関が「不適切な使用」をしたとして先日から晒し者にされている。そのなかで、通達のあった【2006年3月3日よりずっと以前に使用を止めていた施設と使用期間が不明の施設を除いた400を超える施設 ③】にどう通達されたのであろうか?
島根県の保険医協会の独自アンケート調査では8割の施設が「禁忌・禁止」を最近まで知らなかったと回答しているという。当県でのHP上での分析も実は似通った数字を示している。ただ、こちらはアンケートではなく、県のHP上の正確な?数字である・・・
この中で、当院の様に【2006年2月~6月に使用を中止した施設 ①】は「通達」を守った、説明を聞いたと判断できるかもしれないが、メーカーが説明を完了したと厚労省に報告した【2006年6月までに使用中断しなかった施設 ②】は「禁止通達を知らなかった」と云う事になると思う。
つまり「通達を知っていた施設」は、①/③となろう。勿論、③は①+②である。だが、この「通達率」はなんと、たったの 16.8%しかないのである・・・・・
どんな事情があっても、厚労省通達の「通達率」がたったの16.8%というのは悲惨な数字じゃないでしょうか?
メーカーが納入先に「説明とシール貼り」を完了したと厚労省に報告したそうですが、それで16.8%しか効果が出ていないとは摩訶不思議とは思われませんか?
これではメーカーの営業担当の説明能力が幼稚園児並か、厚労省に「虚偽報告」でもしたかどちらかだろうと思われても当然でしょう?
勿論、たった16.8%しか通達されない通達を紙切れ一枚でして「責任を果したつもり」の本省の高級官僚や県庁の役人は、普通の「通達能力」があるのかどうか疑われてしまいそうですね。子供のお使いでも30%くらいは伝達されるでしょう。高校生なら80%はいけるでしょう。なんですか、この16.8%というのは?
産経新聞さん、毎日新聞さん、どう思いますか? 実に低い「通達率」だと思いませんか? これが、厚労省の「通達行政」の実態とすれば日本の医療が確かに崩壊するはずです。
そんなことはないでしょうが、もしも「メーカーから厚労省への虚偽報告」だとしたら恐ろしいですよね。でもそんな虚偽報告を一流メーカーがするはずないですよね。そんなことしたら、牛肉偽装どころの問題じゃないでしょう。
今日は診察室で某社の営業担当の若い社員と話しました。
「君達はまだ若いけど、この16.8%という低い通達率をどう思いますか? 厚労省への報告は正しく行われたと君達は思いますか? 君達は一流企業の企業倫理や社会的責任というものをどう思いますか? 君達は社内の内部調査をして、2006年3月~6月における医療機関への説明が適切になされていないのではなかという疑いを晴らす気持ちがありますか?」
『・・・・・・・・ ・・・・・・』
「無言じゃ困るよ。一流企業の社員として、16.8%という数字をどう感じるかを僕は聞きたいんだよ。虚偽報告の疑いを晴らせないようだと君達もそんな会社で働きたくはないだろ? 上司に言えないのなら、秘かに内部調査をやってごらん、まだ若いんだろ・・」
『・・・・・・・ ・・・・・・・』
「何とか言ったらどうですか? 日本中で10,000ヶ所を超える医療機関が今回のことで理不尽に使い回し犯人扱いをされているんだよ。夫々には数人~数千人の職員が働いていて、彼ら彼女らも不名誉な批判を浴びている。そして夫々には数人のご家族もおられて心を痛めてあるのだよ。つまり、たった一枚の通達されなかった通達が、日本中で数十万人~数百万人の医療関係者と患者さんに非常な心痛をもたらしているんだ。君達や厚労省の官僚は現場の医師だけが悪いと本当に思っているのか? もしそう思っているのなら君達の会社も君達自身も終わってるね。勿論、霞ヶ関の官僚も終わってる。もう一度聞くけど、君達はどう感じるね? この16.8%を? 医者がバカだと片付けるつもりなの?」
『・・・・・ 先生のお言葉をしっかり胸に受け止め、会社の中でしっかりと検討して参りたいと思います。貴重なご助言、ありがとうございました。全国の医療関係者さん全ての声なき声と聞かせていただきます・・』
そうハッキリと僕を見据えて言ったのは、まだ若い賢そうな女性社員だった。男性社員の方はアタフタと声に成らなかったようだったが、正直そうな彼の眼は光るものを浮かべ素直に理解してくれたようだった。
君達みたいに意欲のある真面目な若者が社会をより良き物に変えて行ってくれると僕は感じて少々嬉しくなったよ・・・
医療現場も保健所などの地域行政官も各メーカー社員も協力して日本の医療を良くしていかねば成らない。
厚労省の「通達」の内容がおかしな内容であれば、それも現場が指摘していく柔軟な仕組みが出来ないといけない。そうしないと、極めて低い「通達率」に医療現場が再び振り回されてしまうことは明らかだ。
極めて低い「通達率」は、通達手段もたしかに問題ではあるが、最大の問題は「通達の中身が不適切」だったことだと、そのうちマスコミも理解する日が来ると思う。
読んでくれてどうもありがとう
なかなかマスコミ様からの「吉兆」扱いには慣れない小市民の田舎医師、黙るか騒ぐか喚くか眠るか・・・ということで、ちょっと文句の一つや二つを行政へ並べてみることにいたしました。
顔も知りませんが、保健所の担当者の方、電話の先で僕の苦情に頷いてくださったようで、公務員という難しい立場にありながら精一杯の同情とご理解ありがとうございました。感謝いたします・・・
実は僕は保健所の調査には真っ先に協力しました。行政と医療機関の信頼関係はこれからの日本の医療には極めて重要だからです。
調査用紙が届いて直ぐに、保健所の担当者に「禁止後の2年分だけでOKなのか?」と聞きました。彼は「はっきりとは書いてないのですが、行政機関へは平成9年以降をお願いしています」との事で、なぜに禁止前までか疑問に思いつつ職員に命じて該当器具の購入履歴と職員の医療器具使用マニュアルを過去10年間調べさせ、その日のうちに正直に返信しました。恐らく地域で最初の返事だったと思います。その時点ではその調査結果を確認せずに公表するとか、禁止以降に使用していなくても同じ扱いで公表するとかの話は一切無くて、当院の様に通達後中止の場合には「問題なし」だと思っていました。そこが間違いの始まりです・・・
島根を報道した中国新聞とあの産経新聞が真っ先に「禁止通達前」まで批判報道しだしました。続いたのはやはりあの毎日新聞でした。途中、良識的な東京新聞などが「通達は届いていたのか?」という好意的な記事を載せてくれましたが他が続きません。そうしているうちに、何を血迷ったか産経新聞が「真空採血管ホルダーの使い回し」まで報道し始めました。予想どうりといえばそうですが、産経新聞が実に熱心な報道をしていたようです。そこへ、西日本新聞が宮崎県関連施設での「ホルダー使い回し18万人」という凄い数を出して以降、「ホルダーを出したらヤバイみたい」という報道姿勢が出たようです。しかも、西日本新聞は厚労省関連施設が「再使用式ホルダー」なるものを正当に使用して違反無しなる奇妙な記事を掲載までしました。
そうしているうちに高知県がHP上に全施設を公開しました。小さな自治体ほど「早く謝れ」とばかりに追従しました。東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、兵庫県、福岡県などの大規模自治体ほどダンマリで、東京は最後になるのでしょうか?霞ヶ関御用達の診療機関では使い回しは皆無だったのでしょうか? 正確な調査報道をお願いしたいですね、霞ヶ関関連では・・・
保健所の担当者に電話で聞きました・・・
「なぜ、通達以前のものも公表するの? 今回は通達違反が一番問題なんでしょ?」
『いえ、通達違反じゃなく、添付文書に注意書きがあったのに反したことが問題だからです』
「じゃあ、採血ホルダーも全く同様に注意書きがあるのに反して使い回しがありますよね。両者は全く同じですよね。それはなぜ調査しないんですか?」
『そうなんですが、調査するようには言われていません』
「でも、全く同じ構図の使い回し問題ですから、厚労省としては全く同様に調査して同様に公開しないと公平ではないですね。貴方はおかしいと思いませんか。保健所もずっとホルダー使ってたんでしょ?」
『そうなんですが・・・そうなんです・・・でも・・・』
「こんな理不尽な不公平な不確かな公表をするなら採血ホルダーの使い回しも全部真実を出すべきです。学校検診でも保健所でも企業検診でも日本中でほぼ全部使用してますので、国民全部が使用対象のはずです。微量採血器具の場合と何が違いますか? どちらも感染の可能性を100%否定できないのが理由でしょ? このさい真実を全部さらけ出して、国民全部に使いまわしました、ごめんなさいね・・と公表したほうが余程スっきりします。真実をマスコミに公開しましょうよ・・」
『そうなんですが・・・解かります・・・でも・・・』
「次々に簡単に公的病院や自治体首長が謝罪してますが、税金投入で解決を図る公務員と民間とを一緒にしてもらっちゃ困る。職員の生活や雇用も民間は守らなくっちゃいけないんだ。無料肝炎検査しますって、あんたらのは国民が納めた税金だろ?」
『そうなんですが・・・』
「それに検査でC型肝炎抗体陽性者がでたらどう対応するの?」
『まだ、県から何も言って来ないので解かりませんが、各医療機関で対応してもらうしか・・』
「そんな事言っても、C型抗体の陽性者はこの地方の60代では5%程度普通にいるんですよ。それに、遥かに感染可能性が高い予防接種時の「注射針の使い回し」が昭和33年まで実際に行われていましたよ。今では見かけないガラスの注射筒を消毒して使い回ししていたのを法で禁止したが昭和63年だったでしょ? その時までに沢山の非A非B肝炎感染が輸血でも出てましたよ。不顕性感染者なら凄い数ですよ。つまり、40代以上の国民は過去に何度も今回の問題より遥かに大きな感染の危険に曝露されてることぐらい保健所の職員なら貴方も当然知ってるはずですよ。」
『そうなんですか? 私は以前のことはよく知りませんでした』
「それなのに遥かに感染の危険性の少ない微量採血器具の再使用を問題にするなら採血ホルダーも同様で、そうなると全国民の感染経路は複雑怪奇で個々の医療機関が検査して相談するレベルの話じゃないでしょ?」
『そうですね・・・県に伝えておきます・・・』
「それにね、こんな理不尽な事をされると行政との信頼関係が崩壊して今後もし新型インフルエンザ対応などで保健所や県から協力依頼されても医療機関は全部逃げ出しますよ。感染の危険性が少しでもあれば避けろ・・って言うんでしょ? 医療機関の職員だけは感染してもいいと言えるはずないでしょ? 保健所は信頼関係を積上げるのがどんなに大変なことか解かってるんですか? こんなんじゃ、新型インフル流行時に誰が今の出鱈目な厚労省に協力しますかいな・・」
『よくわかりました。これからも宜しくご指導願います。私も勉強してみます』
「ま、お互い信頼関係を大切にして地域医療のためにがんばりましょうや・・ じゃあね、きついこといってゴメンネ」
内容は保健所の担当者に迷惑がかからないように少々変更しています。科学的にも不適切な誤認・誤解があるやも知れませんが、地域の保健所の現場の職員さんはやはり「仲間」ですから・・・協力して行きましょう。
それにしても、昨日の旧帝大附属病院の院長謝罪会見・・・心療内科の教授が「肝炎検査します・・」と相変わらずお気軽発言をしていたが、あの大学の肝炎の専門家の意見はそれで良いのだろうか?
読んでくれてどうもありがとう
本日、新聞に無料で名前を掲載していただきましたので当院も地元では急に有名になってしまいました。おまけに、県のHPにも頼みもしないのに名前を載せて頂き、全国あるいは世界的にもアクセス可能で超有名になりました。
こんな不名誉な事は今まで経験がありませんし、一生のうちで何度も無いと思いますので、きちんとした調査を完了しないままに広く市民の皆さんに(どんな意図か理解できませんが)宣伝して頂いたことを医療人として絶対に忘れません。
新聞では、「通達後使用継続」の施設と、「通達時に使用停止」の施設名が区別無く報道されました。
それを見た両親から、『オマエを通達も守れんような人間に育てた覚えはないぞ、恥を知れ・・』に近い言葉をもらいました。さらには、『名前の出てない@@病院などは人気が出るのかも・・』に近い言葉ももらいました。恐らく、通院患者さんも地域住民も同様の気持ちなのでありましょう。
新聞地方版しか情報源のない田舎の住民にとって、当院は「吉兆」と同じレベルになったのでしょう。本当は「通達」は守っていますし、名前の出なかった病院のことも知らないわけではありません。勿論、大きな声では言えませんが・・・
でも、こんな事で信頼関係は崩れていくのでしょうね。医師になってこれほど行政との信頼関係が揺らいだことはありません。新型インフルエンザ流行時には行政の「依頼」を素直に聞ける自信がなくなりましたが、文句はお門違いです。ただ、信頼関係が壊れそうなのは行政との間だけではないようです・・・本当に困るのは患者さんなのですが・・・
あれ?アソコが載ってないぞ・・、保健所はチャンと公平に調べたのか・・?、これじゃ地元医師会内部でも不協和音がでそうだ・・、さすがに情報も届きやすい県や各地区の医師会幹部のとこは載ってないな・・、県庁役人は自分の非を隠してどうしちゃったの、狂ったの?・・・・などなど、これから色々出て来そうです。
しかしながら、公表された「リスト」は実に興味深いです・・・
一部では「正直者がバカを見るリスト」などと呼ぶ人がいますが、これを見ると・・・フムフム、満更否定も出来ません。ただ、本当にやってなくて載らないところの方が大半でしょうから、「正直者だけが載るリスト」というのは間違いですね。「正直じゃないと載せてもらえないリスト」という方が正解でしょう。
糖尿病の診療に力を入れている所は、内科に限らず小児科も産科も眼科も色々と載ってますよね、エライです。でも、内科で開業してて載ってないのはなぜでしょうか? ここ数年の開業ならわかりますが、他は「注射針などで耳たぶや指を刺しているのでしょうね・・・ それになぜか救急指定されるような大きな病院が幾つも載ってません。そこへ患者を紹介するのは今後やめようかなとも思います。
当県は全部で5000箇所近い医療機関のうち10%を少し上回る施設で「微量採血器具の使い回し」が判明しました。当院を含め27%は「通達時以前のみ使用」の施設でした。「通達後も継続使用」が73%です。ここは区別して報道して欲しかったですね。これなども、いかに「通達」が現場に通達されていなかった証拠でしょう。止めたところが遥かに少ない・・・出鱈目な通達ですね。
また、当該器具を持ってたところの約50%が「使い回し」をしていたそうです。いかに「常識的な使用方法」だったかがわかります。逆に言えば、持ってても50%が「使い回しを一度もしたことがない」というのは尊敬すべき数字かもしれません。これなどは、「メーカーの販売方法」が出鱈目で「めーかーによる注意喚起が実は無かった」ことの証拠かもしれません・・・
メーカーも行政も、そこをふまえて、我々晒し者の正直者とご一緒に大いに反省をして頂きたい。
教育機関である県内3箇所の大学病院は最近まで使用していましたが、不思議なことに、霞ヶ関省庁立の某大学病院の名前だけが載ってません。さすがですね。霞ヶ関官僚が大量に天下っていると噂の某チェーン病院の名前も載ってません。
県立病院、市立病院はほぼ全滅で、ご一緒に有名になりました。おやおや、国立病院がなぜ載っているのでしょうか? 厚労省はせめて身内の国立くらいしっかり通達指導してくれなきゃ他所がマネしますぜ・・・
マネといえば、看護学校が全国で沢山載ってますね・・・なにが「正しい使用方法」なのでしょう? 全国でマネしますよ、これじゃ? 看護協会もすぐに声明を出すべきでしょう? 器具の使用はほとんどが看護師さんも関与してそうですし、看護師さんは学校でウソを指導されたのですよ・・・
抗議しましたか? 看護学校でウソ教えるな・・って。
仲良しの診療所は沢山載ってますが、「あいつは勉強会で会わないな」という診療所は名前が見つけにくいようです。別に、深い意味はないのですが、こうして県のHP上で名前が並ぶと「真面目に正直に これからも一緒に頑張ろうね・・」という気持ちになり、相互信頼感が増してきます。
そんな意味でなかなか味わい深い「使い回しリスト」でした・・・
でも、今頃 「リストに名前がない」病院や診療所で悩める院長が少なからずいるのでしょうかね・・・ 寝不足にならないでくださいね。
読んでくれてどうもありがとう
ときどき、無症状の重症患者を大病院へ紹介しようかどうか迷う時がある。そして、その結果が期待に反して悪かったときには無性に自分が歯がゆくなる。きょうもそんなツライ日であった・・・
75歳を過ぎたBさんは3年前からキチンと通院して来ていた。それまでは自宅の近所の診療所に通っていたが、月に数度の耐え難い胸痛があって、少しはなれた当院へ転医してきた。元気なBさんは気の良い田舎の農家のオバサン、いつも思慮深い静かな笑顔を絶やさない人だった。
症状は典型的な労作性狭心症、一般外科開業医の前処方を変更したら完全に症状は消失した。安定後にCAGを強く薦めたが、『症状がまたひどくなったら考える。今は落ち着いたからいい・・』との答えを尊重しつつ3年間を診てきた。厳しい病変の存在を疑っていたが、内服治療によく反応し、少し症状が出始めても処方調整で直ぐに安定していたので患者の意向を尊重していた。
今年に入ってのある日、Bさんは悲しげな顔をして『家のが先日コロッと死んだ。葬式を済ましてからちょっと食欲が出ない』と語りだした。Bさんにいつもの笑顔はなく、血圧もやや不安定で上がり気味だった。
「ちょっと横になってみてごらんなさい。お腹を触ってみましょうかね?」と半年振りくらいでBさんの腹に手を当てた。
僕は少しドキリとした。半年前のカルテの記載をみても、この塊は見当たらない。重い拍動、蛇行しつつ盛り上がる・・・ かなりの腹部動脈瘤だ。念のためエコーで確認したが、径は6cm近い。もしや、急速に大きくなっているのか?
夫を亡くしたばかりのBさんの家族は働き者の息子一人でまだ独身。「説明したいから来てもらって・・」と言っても、『仕事を休めるかな?』と頑張り屋の息子を気遣うBさん。「でも、来れんなら電話だけでもしてもらって・・息子さんに病状を話すから・・・」と言い含めて家に帰した。
数日後、説明を理解した息子が「かあちゃん、あんたが決めなさい。あんたの命たい」と促すと、『そやね、も少し生きときたいもんね・・』と少し笑いながらBさんは手術を受けることを決心した。まだ独身の息子の行く末が気がかりだったのかもしれない。
このとき、僕は実は相当迷いながら説明した。必ずしも手術を薦めたというより、症状が無かっただけにBさんに大手術を受けさせていいものか、すご~く悩んだ。待機的とは言っても、高齢で重篤な虚血性心臓病も強く疑われる。手術のリスクは少なくないが、手術しない場合のリスクも大きい。
案の定、CAGで3枝重症病変が見つかり、CABG後に大動脈瘤の手術が組まれた。その報告をBさんに直接聞いて、「どうね? 気持ちは変わらない? じゃあ、信じて頑張ろうね・・」と元気づけたが、実際はなんともつらい気持ちだった。「はたして成功するんだろうか? 大手術に2度も続けて耐えられるのか?」
そして今日、大学から若い先生?が電話して来た・・・
『CABGは素晴らしく上手くいきました。しかし、大動脈瘤の手術を数日後に控えていましたところ、瘤が破裂して病室で急死されました・・』という思いがけない報せだった。
あと少し・・・あと少し早ければ、大動脈瘤が破裂する前に救えたかもしれないのに・・・CABGをとりあえずPCIで凌いで先に瘤を処置する方法もあったかも・・・しかし、全ては後の祭り。
もし、夫が死なず、食欲が落ちずに僕が動脈瘤に気付かずにいたならば、逆に少しばかり長生きできたのだろうか? 少なくとも家庭生活をあと数ヶ月は不安なく出来たかもしれない・・・
これも運命なのかもしれないが、無症状の高齢者に手術を勧めるのはあまり簡単ではないようだ・・・
読んでくれてどうもありがとう
600日程度の期間に我ながらよく書いたものだ、これで第900回目の記事になる。読者各位にはくだらない記事ばかりでも、田舎中年医師の呆け防止と後世への言葉、日記がわりであるから真面目な文句は無用と願いたい。頓珍漢な政治屋や横暴な官憲や無能なマスコミ批判は少なからずあるが、病める患者と悩める医師の関係は本音で述べるよう心掛けてきたつもり。
僕が一番書きたかったのは「未来の日本と地球の危機」について・・・全ての記事がそこへ繋がると思いながら書いてきた。
さて、900回記念記事はなににしよう・・・タイムリーな記事と云う事で、最近書き並べている「微量採血器具使いまわし」の本音を書きたい。これも、未来の危機と深く関連する問題だから・・・ 多分、この件では明日以降は本音で書くことは無かろう。
明日、2008年6月30日に多くの自治体が「使い回し施設」を全部公表するという。これは歴史的な事と思う。もちろん、素晴らしい出来事の反対の意味でである。多分、国民生活の混乱と医療不信増大と医療崩壊促進と官僚汚濁促進と御用マスコミ凋落と環境破壊推進と日本式社会没落への大きな一歩と成る事だろう・・・・ちっとも大袈裟ではない。
微量採血には、開業前の頃は僕もスタッフも各病院で注射針などを利用していた。僕らの年代では勿論一回のみ使用で廃棄。無痛操作にはテクニックが必要で個人差があった。(過去の歴史)
開業した前後に各社から今問題となっている便利な器具が販売されだして全国で急速に使用が拡がった。患者使用が目的で誰でも簡単に使用可能。当時の添付文書は手元にないが、禁忌とされたのは2006年3月の通達文書発表以降。ただし、その「通達」は多くの医療機関には実際には通達されていない。(販売拡大と自治体内での通達ミス)
しかも調査は、何故か禁止以前の平成9年まで遡るとの事。しかし、昔の予防接種での針の再使用調査は無し。(禁止以前の遡り調査)
さらには、トイレや聴診器や、手術器具や内視鏡の「使い回し」など、同程度以上の問題事例は問題とせず。(禁止基準の曖昧さの問題)
2006年4月に問題なしとされる新製品が普及しだすが、壊れずモデルチェンジもないので以前購入した製品を継続使用する施設が多い。(途中での禁忌変更通達方法の問題)
メーカーからのシール添付指示の伝達が現場に上手く届いていないのに、厚労省へは全部適切に指導したと報告。(メーカーの厚労省への偽報告)
看護学校や医学部といった教育機関での誤った実習が継続的に行われていた問題。これでは医療現場はそれを「正しい使用法」と理解し、改めて添付文書を虫眼鏡で見ることはしない。学校で指導されて使用しているのだから。そうして若い世代が次々に現場へ出て行く。(間違った教育がなされた問題)
その現場には医療機関のほか、市役所や保健所の健康教室や採血サービスといったことが全国各地で頻回に行われた。採血を実行する保健婦や看護師や医師は「正しい使用法」と教育され、医療関係者でない市長も知事も誤った使用法とは夢にも思わない。(現場は誰も知らない)
これだけ健康教室や医療現場で普通に行われていた事だから、当然ながら厚労省の役人も自治体の担当者もメーカー職員も本人が検査を受けた人が全国には沢山いるはず、「通達違反」との認識があったであろう人々はどうして今まで放置していたかを説明すべき。(見逃していた責任)
2006年3月以降は偶然正しい器具を使用していた当院も今回の問題が出る最近まで「通達」は届かず知らない。納入業者やメーカーからの連絡も無し。だから、「不適切な使用」という認識は無し。「通達」があったなんて全然知らないし、読みにくい厚労省のHPを毎日チェックなんてしていない。当然、カルテに採血方法までは書かないし、そんな記載指示の「通達」があるかないかも知らない。(現場への周知徹底の問題)
断っておくが、不適切な器具購入と不適切な使用は同義ではない。販売リストにあっても正しい個人使用に限っている施設が少なくない。先述したように、購入した器具は個人使用目的に患者へと渡すだけ。(販売リストの問題)
低炭素社会、「エコ」とゴミ削減を騒ぎながら、一向に「使い捨て」医療器具と安全性を議論しない無関心なエコ学者やマスコミ、環境省関係者達の問題。(矛盾した行政とマスコミ)
これだけ騒いで、今まで全く「健康被害がない」という。既に各地で肝炎検査やHIV検査が無料で行われているが、もし感染者がいても、どこでどう感染したかを特定することはどう見ても不可能なのに。C型肝炎の抗体陽性者なんて少なく見積もっても国民の数%はいる。
遠い過去の予防接種や輸血歴、針治療、その他ありとあらゆる感染機会がある。母子感染を含め、あまりマスコミでは言われないが、性行為は非常に大きな感染機会である。風俗店へ通う人のウイルス感染率は明らかに大きい。性の乱れが恥ずかしいほど広く深く進む日本社会・・・ 検査後、その感染経路を特定する上で、どこまで個人のそのような過去の生活歴を調査するのか出来るのか?
今回のことで一番大きな問題は、「通達行政の限界」だと思う。勿論、医療関係者の責任もあろうが、届かない「通達」や誤った「教育実習」などに医療現場は全く無力である。
厚生省と労働省を統合したのは明らかに失敗であった。
官僚も大変だと本当に同情している(前述)が、間違った政策や間違った通達内容や通達方法を素直に速やかに改められる社会に改善していかねばならないと思う。誤ったこと治しても恥ずかしがることは官僚には必要ないし、それは許されることだ。
ただ、今の日本社会が非常に「不寛容な個人攻撃的社会」になって北朝鮮以上に生きていきにくい社会になっていきそうな危険性が見え隠れする。
成熟した成人社会ではなくて、大きな子供だけが住む社会・・・ 壊れ行く日本の黄昏を映し出している「使い回し」問題だと感じている。
さて、明日の発表後の日本はどうなるのか・・・? 官僚の保身で暗い社会へと突き進むのか? たぶん、この件での「本音吐露」はこれが最後・・・
読んでくれてどうもありがとう
6月23日の西日本新聞に以下の記事が載った。当然な内容なのであるが、なぜか医師会の動きは鈍い。実害の無い勤務医の反応も少なく、公立病院院長も自治体検診担当者も税金で償い自腹を全然傷めないので実にお気軽な対応である。要するに、個人開業医のみが不安を抱えリスクに怯える歪な「通達ミス問題」のようである。
採血器具の使い回し問題が発覚した医療機関から「器具に張り付ける『複数患者使用不可』のシールがメーカーから届いていない」との訴えが寄せられ、保険医協会が調査に乗り出す。使い回しが広がった一因にシールの配布漏れがあった可能性もあることから調査の実施を決めた。対象は県内の400超の加盟医療機関。
厚労省は2006年3月、器具の使い回しを禁じるとともに、メーカー8社にシールの張り付けを指示。既に器具を納入した医療機関にもシールを配布するよう求めた。8社は同年6月までに「販売記録にあったすべての納入先に配布した」と同省に報告した。取材に対し8社はいずれも「郵送や直接持参して配布した」と説明。ただアークレイ社は「記録が残っていない医療機関には配布できなかった可能性がある」と話している。
だが、メーカー8社には「全ての納入先にシールを配布したって本当ですか?」と問いたい。大手とは言いがたいアークレイ社だけが問題ですか? むしろアークレイ社だけが「バカをみている正直者」なんじゃないですか?
皆さんのところはどうですか? シールは届けられていますか?
実はうちは、2年前の「通達」以降は三和のジェントレットという「OK製品」のみを使用している。これは「通達」に従って変更したものではない。うちにも「通達」は間違いなく届いていない。ただ、納入業者が新製品の紹介に来たので安かったし採用しただけである。
患者の個人使用目的でそれまでの数年間、そしてその後も8社の一つであろう大手某社から「不適当製品」を購入し、地元の納入業者C社を通じて購入し、自己血糖測定してもらっている患者に渡している。某社の採血器具の本体を10個以上、針にいたっては数千本購入しているはずである。これらは基本的にインスリン導入した患者さんの個人使用である。
しかし、某社からは2006年6月までどころか、今までに全く担当者の来院もシールの送付もなされた様子がない。確かに2006年4月以降に納入された製品本体にはシールが貼られているが、それ以前の製品へのシールなど全く受け取っていないし、貼られていない。
どう考えても「シール」は納入業者が製作すべきではなく、製造業者が製造すべきだが、一応念のために納入したC社に製造某社からシールを貼りに行くように要請されたかを聞いてみたが答えは「NO」だった。当然だろう、それは製造業者の責任だろう。当然、うちも「納入先リスト」に載っているはずだ。しかし、いまだかつて某社からは何の連絡もない。それなのに厚労省には何と報告したのであろうか?
アークレイ社が正直に答えている。大手とは言いがたい様子だし、SA社から該当製品の販売先リストを引き継いだ会社のようだ。実は先日、うちにもアークレイ社から「シール」を貼ってくれと再確認のダイレクトメールが来た。
公表期日直前で、「何を今頃・・遅すぎだ~バカ野郎~」と怒ったが、実は写真に載っている製品を使用したことを全く覚えていなかった。当然、保健所の調査にもアークレイ社製品購入の報告はしていない。でも、「この郵便物は納入先リストにあった施設へ送っています」と書かれていた。
「うそ~、こんな会社、僕は聞いたこともないぞ。勿論、使ったはずもない。開業以来居る職員に聞いても誰も覚えていない。でも、うちが販売リストに載ってる?これが証拠として厚労省に廻るのか?」とどうにも解せず不安が募る。
あらぬ疑いは晴らさねば、きっと間違いだ・・・さっそく電話して調べてもらった。
担当者は時間外にもかかわらず実に丁寧に調べて答えてくれた。社員教育は某社の数倍良いと思う。
『2007年6月に販売記録があります。でも、「針」のみで250個、しかも一度だけです。本体の販売記録はありません。これだと恐らく・・・』
なるほど・・・ それなら合点がいく。
他の病院でアークレイ社製品を使用していた患者が当院に転院してきて、本体は自分専用で、転院直後に消耗品の針が切れたので当院で購入したが、うちの指示で某社製品に統一したためそれっきりになった模様だ。つまり、シールを貼ろうにも針しか購入してなくて、「存在しない本体」には貼れないのである。
でも、アークレイ社の記録は実にシッカリしている。2006年6月以前には販売実績が無くて、その時には連絡が無くて当然だったし、今回は「針だけ」にもかかわらず念のためと連絡を頂いて実にありがたい。沢山購入した大手某社は何も言ってこないのにである・・・
大手某社だから販売リストを調べればある程度は使用している可能性のある施設はわかるだろう。うちも載ってるはずだ。もちろん、使い回しかどうかは購入実績だけでは判らない。
しかし、ウソの報告はダメなんじゃないでしょうか? 大手某社さん・・・ アークレイ社が数段立派ですよ・・・
読んでくれてどうもありがとう
満10周年を機に昼休み時間を長くして休憩時間を増やし体力を保つつもりだったが、思わぬ「女性の罠」に嵌まってしまった。そう、今後さらに深く嵌まってしまいそうで恐いのである。
これまで頑なに「韓国ドラマ」を避けて?無縁で生きてきた僕であるが、最近お昼にやっている『19歳の純情』なる連続ドラマを最近筋も判らずなぜかしら無視出来ずに毎日の様に観ている。それも、一人の女優さんの表情を観るためだけに・・・
つい先ほどまで、ドラマの名前も女優の名前も知らなかったが、ネット検索で知ってちょっとドキドキ・・ 「ク・へソン」だったかな、とっても好みの女優さん。
何となく、ずっと一緒に居たくなる可愛い女性。明るく純粋で透き通る美しさ、穢れとは無縁の屈託のない見事な表情を見せる。特に笑顔が何ともいえず僕を魅了する。秘密だが、家内より少々可愛いのである。
何となく世間の人々が韓国俳優に嵌まるのが判らないでもなくなった・・・ あ~可愛い可愛い、貴方の奴隷にしておくれ・・・
ちょっとヤバイ 中年医師の独り言でした・・・
読んでくれてどうもありがとう
2008年8月8日、北京オリンピック開会式に隠れるように新商売の構想が発表された・・・ その名も、【厚衛省の医療機関向け通達を優しく解説して相談に応じるリスクマネージメント業】である。略して、【厚通リスク対応型コンサルタント業】である。
度重なる厚衛省の「通達」行政の陰で先頃全国で発覚した「通達事故」の数々。なかなか「通達」自体が自治体や医師会で止まって現場に届いていない悲惨な状況が2008年6月30日の「違反施設正直者晒し者事件」以来次々に明らかになっている。この件以降、医療現場と厚衛省との憎しみの溝が急速に深まり、もはや修復困難とも言われる中で、このままでは医療崩壊と厚衛省崩壊が同時進行してしまうという危機感が厚衛省内部や医師会でも芽生えている。
採血器具再使用など思わぬところに地雷が埋まる昨今の世の中では、医療界における最大のリスクは昨年までの「モンスター患者」を抜いて今年は「厚衛省通達」がトップに立ったとの調査結果が2008年7月30日に医師専用サイト「N3」で発表された。これまでに3系を除く各新聞は全く報道をしていないが、会員制のこの新商売には早くも問い合わせが殺到しているという。
セコイなどと共にオリックソが企画した新商売、実は厚衛省のキャリアの中で不祥事で退職した課長なども含まれているという噂がある。また、厚衛省改革の推進者の印象を持たれている元大臣もアドバイザりーボードに名を連ねてるという。
今回発表された「新商売」は全国各地の医療機関と年会費100万円(病院では、1ベッド当り1万円を追加)で契約し、過去から現在までの複雑怪奇な「厚衛省通達」の数々を現場のスタッフに分かりやすく解説したサイトへのパスワードが渡される。細かな疑問点に関しては、元厚衛省官僚が24時間のホットラインで答えるので、コンビニ診療所や救急現場でも意図せぬ「通達違反」によるリスクの回避が達成されるという。
ある田舎の診療所のM院長に聞いた・・・
『当院も以前は厚衛省からの通達がなかなか届きませんでしたし、問い合わせるとアホかと怒られるし、通達の前にまで遡って謝罪を要求されました。これでは地雷どころか北朝鮮のノドンミサイル並みに恐いので、オリックソと年間100万円で契約を結びました。平安時代のような難しい役人言葉も電話一本で解説してくれますし、今ではのびのびと診察に打ち込めます。五分間なんてあっと言う間です・・』
この院長の廻りでも契約を考慮中の医療機関が急速に増えているという。確かにオリックソは厚衛省元官僚を巻き込んで利益率の高い新商売を考え出したと思われます。
最後に元厚衛省官僚の原社長にお尋ねしました・・・
『素晴らしい企画だと経財連のお手洗い会長にも誉めて頂きました。なにしろ5年位前から熟慮して仕込んでいた計画ですから、まず今後もドンドン発展すると思います。でも、たった五分程度の電話説明で年会費100万円ですから・・・笑いが止まりません。難しい言葉といわれてますが、私達には扱いやすい言葉なんです。現職の後輩たちに居酒屋ハイヤーでも配車してあげないと・・・』
な~るほど~ そうでしたか・・・
【2008年9月15日 3系新聞 青木産科記者】
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本日の西日本地方の某新聞に「通知違反なし」と題する小さな記事がのった。小さかったものの、友人の医師も非常に気になった様子で、あちこち内情を問い合わせて僕の方に、『どう思う?』と先ほど電話してきた。
その記事というのは、真空採血管用のホルダー再使用問題の件であり、記事には次に様に書かれている・・・
「通知違反なし」 @@県%%%学**
厚生労働省が所管する公益法人・@@県%%%学**が同省の通知に反し、採血管に針を固定させるホルダーを使い回ししていたとされる問題で、通知違反をいったんは認めていた同**は二十&日、「再調査の結果、違反はなかった」と説明した。同**によると、採血ホルダーには一回使用するごとに廃棄すべき「単回式」と、洗浄して使い回しができる「再使用式」があり、同省は二〇〇五年一月、単回式について使い回しをやめるよう通知。同**で使い回していたのは、再使用式だったという。
一見、何のことはない「訂正記事」にも読めるが、少々奇妙なものを僕も確かに感じるのである。友人も随分とひっかるものを感じたらしく、「**」やホルダー大手メーカーのN社とT社の支社、医療機器納入業者各社、更には掲載した新聞社にも内容を問い合わせたらしい。そして『やはり奇妙だ・・どう思う?』と僕に電話して来たわけである。
友人が電話した理由は、「単回式」のディスポホルダーが全国的に品不足で入荷予定が立たずシリンジ採血をしているが職員の針刺し事故が心配で、そんな厚労省関連施設が認める「再使用式」があるなら購入したい、という気持ちからだったらしい。しかし、業者やメーカーからは「再使用式」製品販売の情報が得られず、仕方なく「**」に直接訊ねたそうだ。
「**」の電話の相手は、『今現在は単回式を使用してます。以前は再使用できるホルダー(再使用式のことか?)を使ってました。でも今は廃棄して実物は手元にありません。ですから、どこのメーカーかも判りません。新聞に載ったかもしれませんが、私は良く知りません。記事にした記者さんに聞いてください』と云う事だったらしい。
再使用式というのが思い浮かばない友人が更に詳しく聞くと、「単回式」と見た目がソックリでもっと硬い我々がこれまで普通に使用してきた「単回使用であるべき通常ホルダー」の事を言っているとの印象を得たようだが電話なのでハッキリしなかった。相手も医師ではなかった雰囲気だったそうだ。そこで友人は、「どこのメーカーの製品ですか?」と聞くと、『どこのメーカーでも出してたと思いますよ。例えばN社とかT社とか・・ そう、ベ@ジェ@*とか・・』
友人が、「最近マスコミで問題になっているのはその通常品の使い回しの件なんじゃないですか? あれとは別のものですか?」と重ねて聞くと、『あれは再使用してはいけないとは書いてないと思いますよ。それにここには通知は来てませんから・・』との返答だったそうです。
「通知が来てないって、そちらは厚労省の関連施設でしょ? 厚労省が認めてる再使用式ホルダー製品を当院も是非購入したいのでメーカーと製品名を教えてください」と重ねて訊ねたところ、『厚労省といってもここは労働省の方ですから・・』との事で、『あの通知は業者向けで、ここには来ないですよ・・』との見解だったそうです。
記事に疑問を抱いた友人からの又聞きですから、言葉のやり取りは少々不確か(でも相当正確)かもしれませんので匿名にしておきます。
そこで友人は名前の挙がったN社とT社に問い合わせると、「再使用式」と謳っているホルダーは当社にはありません、という予想どうりの答え・・・実に奇妙です。
一体全体どうなっているのでしょう?
僕はホルダーは、全国どこでも以前は通常品を使用していたハズですから何も全部を単回使用で廃棄する必要もないし、環境面でもマズイと思っています。ですから、他の施設(たとえ厚労省関連の同**)が通知違反をしていたとしても批判を受けなくても良いんじゃないかと思うんです。ですから、とりたてて調べる必要もないし、公表しなくても良いと思うし、通知自体を撤回して欲しいと思うんです。
ところが、この記事を読んで問い合わせると・・・
通常型を再使用式と混同しているのでは?と感じるし、厚労省の公益法人が「違反あり」から「違反無し」と訂正しながらも再調査してシロになったばかりの当該製品を示せないようだし、通達が厚労省内部でも適切に伝わっていないようだし、メーカーも再使用可能な普及品は販売してないというし・・・実に奇妙な感じなんですね。
今後、マスコミで沢山の違反施設が公表されるでしょうが、厚労省内部での正確な調査が行われているのか?そこが非常に危ういと感じさせる記事だと感じました。
僕の「お願い」ですが・・・・
どなたか再使用式とはどんなものか教えてください。
追記)本日、厚労省から「一律に禁止したものではない」という回答があったそうですね。つまり、そのために**は「違反なし」へと変更したのでしょうか? それならそれで、全国一律に公平な報道をお願いしたいものですね。
さっさと、「安全ですから今後も再使用OKです~」という明快な通達を厚労省に変更して出して欲しいですよね・・・
読んでくれてどうもありがとう
診療終了時刻を少し過ぎたところだった。僕は近くの街での勉強会へ向うため車に乗ろうとしていた。ふと携帯電話が鳴った。画面に表示された名前は、基幹病院に心不全コントロール目的で入院してもらっている透析患者のAさんの登録電話番号だった・・・
Aさんは透析歴20年、全身の動脈硬化も進行し慢性心不全で外来透析が相当困難になっていた。僕が循環器専門なので苦心惨憺してなんとか外来管理をしていたが、胸水が引かず低血圧で数年前からはペースメーカーも装着していた。
電話が鳴った時、僕は『もうじき退院になりますよ先生・・また来週からよろしく・・』という優しい上品なAさんの言葉を想像した。しかし、予想に反して電話の相手は涙声の娘さんからだった。
『先生、先ほど母が亡くなりました。大分元気になっていたので近く退院出来ると喜んでいたんですが、本当に突然のことで・・・ 先生の顔が思い浮かんだので・・・』と泣きじゃくる娘さんの言葉は途切れ途切れです。
僕は予想外の報せに驚いて最初は言葉が出ませんでしたが、『先生の顔が思い浮かんだので・・』という言葉を聞いて、つい貰い泣きをしてしまい、お悔やみをキチンと伝えられなかった。Aさんには沢山の思い出があったから・・・
以前も書いたが、透析患者さんと医師・看護師・事務を含めて全スタッフは深く関わっている。週三回、4~5時間、盆正月祝日も無し・・ 体外循環という危険な医療行為を強い信頼関係のもと行っている。妻子や両親と過ごす時間より遥かに長く関係していく・・・
今年に入って心不全が増悪していった時期、Aさんの胸中には何かがあったのかもしれない。寒さが厳しいころ、Aさんから頼まれた。笑顔だった・・・
『先生、娘の結婚式が3月下旬にあるんです。その時は是非とも元気な姿で出たいんですよ。その後はどうなっても仕方ないですが・・』
実際、Aさんの透析は難しいものだった。中2日がどうしても持たない。時間を調節して丸2日空かないようにしたり、時々週4回にしたり工夫していた。特に、結婚式を控えた3月には、保険点数を度外視して週4回の透析をしながら体調を維持した。その甲斐あってAさんは子供さんの結婚式を無事に乗り切った。何度も感謝され、実に嬉しそうだった・・・
その後、週3回の通常透析に戻すとやはり心不全コントロールがつき難くなり、『もう家では無理かもしれません・・』というAさんの言葉で入院を勧めることになった。
『子供の結婚式にもちゃんと出れたし、ちょっと入院して体調を整えてきますね、先生・・ それと、この室内履きは先生へプレゼントです・・』というのがAさんとの最後の会話になってしまった・・・
Aさんがペースメーカーを入れる切っ掛けは忘れようとしても忘れられない。数年前、Aさんは深夜に自宅で失神・痙攣を繰り返した。前日に強い動悸があったのでホルター心電図をちょうど着けていた。翌朝、娘さんの運転する車で当院の玄関前に到着した直後、恐怖に怯える娘さんの声がし、僕を含めて数名が車に駆け寄ると、座席に坐ったままAさんが失神し激しい痙攣が起こっていた。
僕も長いこと循環器科医をやっているが、あれほど激しいアダムス ストークス失神・痙攣を診たことはない。波状的に数回繰り返して数分後やっとAさんは意識を回復したが、その一部始終がホルター心電図に記録され、今でも大事に僕の手元に保存されている。それは、どんな教科書にも無いような激しい心電図所見だった・・・
VPCの散発の最中、VTが生じ、明らかなVFへと移行した。そして・・・どう見ても、一直線となり心停止の状態が20秒ほど続き、かろうじてSRへと復帰しているのである。ちょうど痙攣中に心臓マッサージを車内の座席上で行っていた時に戻ったようである。
緊急処置中に到着していた救急車に移し変え基幹病院へ急いだ。Aさんの意識は車内では混濁・混迷しており、清明になるには20分を要した。
これまでVTからVFで除細動後にSRへは幾度も経験したが、長い心停止を経由しての完全回復は数回しか経験が無い。そして当然ながら全ての心電図経過を記録したのはAさんの例だけだった。僕にとって貴重な経験だったし大変感謝されたが、「稀有な例を記録したことを内心喜んでいる」ようで循環器科専門医として少々恥ずかしく、Aさんに大変申し訳なく感じたことを今も覚えている。
その時以来、何度も危機を乗り越えて来ていたAさんを僕は不死身だと何故か感じていた。きっと元気に退院して再び当院の透析室に明るい上品な姿を見せてくれると思っていた。だから、余計に悲しい・・・
確かに限界が近かったかもしれない。ペースメーカーがICD仕様でなかったことも不運だったかもしれない。
念願の結婚式には出席されたが、もっともっと長生きして欲しかったと胸を詰らせながらスタッフ皆で話をした。患者さん仲間も僕らスタッフも、誰もがAさんを好きだった・・・
読んでくれてどうもありがとう