「先生に負けない政治家になるよう頑張りたい」
小沢氏は16日午前、新潟県柏崎市にある田中角栄元首相の墓参りをした後、記者団にこう語った。ただ、同日夕の官邸での光景を見る限り、「権力」という点で小沢氏が田中元首相に劣ると思う人は、どれほどいるだろうか。
小沢氏は自らに近い副幹事長ら24人を引き連れて現れ、鳩山首相、菅直人副総理・国家戦略担当相、藤井裕久財務相ら政府側12人の前に立った。
冒頭はなごやかな雰囲気だったが、報道陣の退出後、小沢氏の態度は一変。「政治主導といいながら本当に政治主導じゃないじゃないか。予算編成でも形ばかりじゃなくて政府高官は研鑽を積んで自ら決断し実行してほしい」と政府側を叱責し、12人から笑顔が消えたのだ。
党の「重点要望」は、11月以降に自治体や業界団体から受けた約2800件の陳情を踏まえ、小沢氏主導で18項目に集約したいわば“小沢チョイス”。公約で「子ども一人ひとりの育ちを社会全体で応援する」としていた子ども手当には所得制限を求め、「課税の根拠を失った」として「廃止」としていたガソリン税の暫定税率は「現在の水準を維持する」とした。
いずれも総選挙で民主党を大勝に導いた目玉公約だが、わずか3カ月での方針転換&公約破棄には国民の不満が爆発する可能性も高い。
小沢氏周辺は「10年度予算の概算要求が95兆円にふくらみ、新規国債も44兆円以下にする。財源がない。政策を削る必要があるのに、閣僚は好き勝手言っている。独裁といわれても小沢氏が『交通整理』して泥をかぶり、鳩山首相をかばった」と弁護する。
しかし、鳩山首相は先の総選挙中に「税金の無駄遣いをなくせば8、9兆円などすぐに出てくる」と豪語、民主党のマニフェストを実行するにあたり財源不足など起きないと主張していたはず。
また、その一方で地方から要望の多かった高速道路や公約にはなかった整備新幹線の計画は明記されており、キャッチコピーの「コンクリートから人へ」とも整合性が取れていない。民主党中堅議員は「『民主党を支持するなら予算をつける』というアメとムチのメッセージで、自民党つぶしの参院選対策だ」と打ち明ける。
いずれにせよ、要望とりまとめの過程で、浮き彫りになったのは小沢氏の強権ぶり。党幹事長室に一元化した陳情処理は、小沢氏や側近の輿石東参院議員会長、高嶋良充参院幹事長、細野豪志組織委員長ら4人だけで最終調整にあたったが、途中、長妻昭厚労相に電話で「党は絶対反対だ」と怒鳴り上げた様子も目撃されている。
それだけに、野党幹部は「小沢のいうことを聞かずんば、人にあらず、という感じだ」と苦言を呈す。
ただ、迷走を続けてきた政府にとって小沢裁定は「渡りに船」といった様子。藤井財務相は「与党の要望を最大限、予算に反映させるのは当然の責務だ」と話しており、丸飲みする可能性は高い。「政策の内閣一元化」は有名無実化しそうだが、小沢独裁はどこに行き着くのか。 [ 2009年12月17日17時00分 ]



