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生後3週間の赤ん坊。
生まれた時、32週の未熟児で NICUを最近、卒業したばかりです。
NICUというのは、新生児のためのICUで、新生児科医が勤務しています。
お乳の飲み方が 遅くなり、呼吸の仕方がおかしくなったのに気が付いた母親が水曜日の午前2時に ERに駆け込みました。
その2,3日前に かかりつけの小児科医のところで、呼吸の仕方がおかしいと
訴えましたが、簡単雑な診察しかしてもらえなかったと 母親は憤慨していました。
トリアージュでは、赤ん坊は、真っ青。
呼吸も止まっては、あえいで、とまってはあえいでを繰り返しています。
サチュレーションは なんと、71%!(92%が正常です)
さあ、みんな用意はいい?
コードブルー!!!
トリアージュナースは、赤ん坊をかかえて 私とコード用のベッドに走ります。
PH7.1 PCO2 49% HCO3 14・・・(PH7.4が正常)
サチュレーションはますます下がって、20%をさしているではありませんか。
さて、私は 3.0のチューブと、#1のミラーのストレートブレードを用意しました。
気管挿菅です。相手は、2kgあるかないかの小さな小さな赤ん坊です。
バッグバルブマスクでの人工呼吸を止め、
赤ん坊の頭側に立ち、右手で、赤ん坊の口を開け、左手に持ったブレードを口のなかに
舌をよけるように差し込みます。そして斜め上に持ち上げて声帯を捜します。
小さな未熟児の気管は、大人のものと違ってずいぶん前方に位置していて
特殊な技術が要求されるんです。
さて、声帯はどこ???
し、しまった!!め、めがね 忘れた。眼鏡がないと、細かいものが見えない。
未熟児の気管は、ほんとうに小さいんですよ。
私は、何事もなかったようにブレードを、口から抜き、ナースに
口の中の唾液を、吸引するようにお願いし、すばやくポケットから
眼鏡を取り出し、かけました。
「先生、どうしたんですか。いつもは一発で挿菅するのに。」
まったく、年には勝てませんね。
老眼、老眼なんですよ。まったく 忘れていました。
いつまでも若いつもりでいたいんですけど。
付け足し
今年の2月に試しに受けた 104回の医師国家試験の試験場で 右隣にすわっていた現役東大生に
「どうやって国試の勉強したの?」
と聞いてみましたら
イヤーノートの話が出て、私が
「イヤーノートは、老眼にやさしくないから、にがてだ」
と言いましたら、笑われてしいました!!
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去年の1月に 娘が夜中に階段から落っこちて、親指を痛めたというので、仕事中でしたが、許可をもらってうちに帰り、親指がかなり腫れていたため、娘をERに連れてきました。
うちのERではトリアージの段階で軽症と判断されると、廊下のいすに座らされます。お部屋のベッドは重症患者や切り傷の縫合などの医療処置の必要な患者のためだけに使用されます。
娘は当然のことながら、軽症とみなされ、その日一緒に働いていたDr.Kに詰め所のカウンター越しに親指の診察を受けただけ。診察時間はおそらくたったの2分。レントゲンはとってもらいましたが、骨折していなかったので、捻挫ということで、スプリント(仮のギブス)をはめてもらって整形外科医への紹介と、痛み止めの処方箋をもらって帰りました。
その1週間後、私は医療費の請求のラブレターを受け取りました。
病院からの請求はなんと2,514.55ドル(25万円)で、医師のサービス料として別に455ドル(4万5千円)です!!!
それとは別に放射線科の医者からのレントゲンの読み代の請求は来たかどうかは忘れましたが。
アメリカのERはものすごく高いでしょう!信じられます?
もし保険がなかったらこれをまともに払うんですよ。たった2分の診察のお礼に。
それだけ高いから救急医療も成り立つのかなあと思ってみたり...どうなんでしょうね。
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トリアージュナースのアンが、トリアージュからとても重症の赤ちゃんを自分の手で抱きかかえて コードブルー用のベッドに連れて来ました。
私は、ちょうど、コーヒーでも一杯と ラウンジの方へ歩いているところで、アンとその赤ん坊に出くわせました。
21:23
母親が、自分の車でやってきて、ERの受付のウィンドウにかけよる。
母親が、サインインするかしないかのうちに、非常事態を察したトリアージュナースのアンがエントランスのロックを解除。
21:24
赤ん坊が、コード用のベッドに。
21:25
いち早く、酸素が与えられ、モニターが装着され、 コードベッド担当のナースのトムと、トリアージュナースのアンが点滴のラインをスタートさせるかたわら 私は、この1歳の男の子の命の危機を察する。
顔面蒼白、瞳は一点に固定。体は硬直状態。
救われることにまだ正常な呼吸あり。
パルスは、125、 サチュレーションが98%であることを確認。
21:27
”Normal sailine bolus 400cc, wide open.Accu check,please!
CBC,CMP,Amylase,Lipase,Blood culture X 1,Also ISTAT now!”
(400ccの生理食塩水を、点滴ワイドオープン、血糖値を測ってください!CBC,CMP,アミラーゼ、リパーゼ、血液培養 1セット、それからISTAT 今すぐお願いします。)
21:28
ベッドサイドでは、看護師長が 母親に病歴を聞き出している。 どうやら、5日前に、下痢と嘔吐が始まり、それ以来もう3度もかかりつけの小児科医を訪れている。
今朝、便が黒くなったので、かかりつけの医師に電話をしたが 相手にしてもらえず、水分もほとんど一日とっていない状態だという。
21:30
重症の赤ん坊の点滴の確保は難しいのが常であるが トムと、アンのおかげで一発で確保!見事だ。
ERテックのケンが、叫ぶ。
「先生、血糖値が10、たったの10ですよ!!!」
(人間の血糖値は通常60以上で、10では生きていけません。 この赤ん坊を救うには糖を今すぐ注入する必要があります。)
「D10(10%のグルコース(糖)液)はある?」と私。
「D50(50%のグルコース液)なら、すぐここにありますよ。アンプルの半分だけ注入しては?」と、トム。
私は、赤ん坊の血管は細いのでD12.5(12.5%のグルコース液)が最大限点滴注入できる濃度なので、一瞬ためらいましたが、他に方法がありません。
「いいでしょう。D50のアンプルを半分お願いします。」
(コメディカルの意見やアイデアを聞くのも大切です。蘇生チーム、そうチームワークです!)
21:33
赤ん坊のレスポンスがある。硬直した体がみるみるうちにやわらかくなって、瞳がもはや固定していない。この赤ん坊、低血糖から痙攣をおこしていたのだった。
「おかあさん、ほら、あなたの赤ちゃんきっとよくなりますよ!」と、アン。
さて、いったいこの子、それからどうなったでしょうか。
意外な展開が待っているとは?
蘇生チームもびっくりのお話が続きます。
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15番のコード用のベッドに行きますと
な、なんとEMS(救急車)で運び込まれたストレッチャーの中から 産声が・・・
よく聞こえなかった「コード・・・」は、コードデリバリーだったんですね。
どうやらお若い経産婦さん 救急車の中でお産をされたようで・・・でも赤ちゃん 元気よく泣いていますが真っ青なんです。
コードデリバリーというと通常 ER内でのお産を意味することが多く、そういう時はまだ生まれるまでに余裕がありますから 赤ちゃん用のウォーマーを事前に暖めておいたり 蘇生用の器具も準備万端整っていて「さあ、いつでもどうぞ!」という感じなんですけれどね。
それにうちのERは他の科との連携がうまくとれますので コードデリバリーのアナウンスがあり次第 L & Dの病棟からはL&Dナースが、そしてNICU(新生児ICU)からはNICUナースがERへと駆けつけてくれていろいろと援助してくれます。
今回のコードデリバリーはもう生まれてしまっていてちょっとばかり例外的だったので こちらの準備がまだできていませんでした。
まずは、へその緒用のクランプは、パラメディック(救急隊員)が2箇所取り付けてくれていました。
とにかく濡れて寒い赤ん坊を早くウォーマーへ・・・ところが
「はさみ、はさみ、はさみはどこ?!」
へその緒をまずは切らなくっちゃ!
みんなそれぞれスクラブのポケットを探るんですけど、なんとだれもはさみを持っていません!いったいどうなってるの??
大急ぎでお産用のキットをひっくり返してはさみを見つけへその緒を切りました。まずは一安心!
今日の蘇生チーム、意外なところで壁にぶち当たります。
赤ん坊を冷たいウォーマーに乗せるわけにはいけませんから
” Bring me a warm blanket!! ”
急いでこの濡れて冷たい赤ん坊をこれまた冷たいウォーマーの上に、でも暖かいブランケット(温蔵庫の中の暖かい分厚いタオル)でくるんで羊水をふきとり刺激を与え続けて口の中を吸引しました。
もしあなたがシャワーを浴びてクーラーががんがんにきいているお部屋に出てくれば、スーッとものすごく寒い感じでぶるぶる、わかります?
この赤ん坊、お母さんの暖かい羊水の中から出てきて濡れたままお母さんの股の間でしばらく寒い思いをしていたわけなんですよ。
ところがベッドがじゃまでウォーマーのプラグがコンセントに届かない!
酸素もあげたいんだけどベッドがじゃまで壁の酸素の取り口にも届かない!
その間ほんの1,2分のことなんですがあせりまくってベッドを移動させてなんとかかんとかしているうちに 新生児室の蘇生チームが到着。
やっと暖かくなってピンクになった赤ん坊、4階の新生児室へと搬送されていきました。
とにもかくにも 母子ともに健康なようで ご出産、おめでとうございます!固定リンク | コメント (6) | トラックバック (0)
Delivery という単語なんですが、医療界に足を踏み入れる前まで、「配達」という意味しか知りませんでした。
医学生の時 産婦人科のローテーションで生まれて初めて Deliveryというのが分娩、出産という意味でもあることを知り 驚いたのです。ちなみに私はマイアミで医学教育を受けましたのですべて英語で習ったのです。
病院にあるお産のための病棟を L & D と呼びます。 Labor and Delivery の略称なんですね。
Laborというと 「つらい労働、苦しい仕事」という意味ですが「陣痛」という意味もあるんですよ。
つまり陣痛=つらい労働、配達=コウノトリが赤ちゃんを連れてくる、という感覚ですがそう考えると納得、納得。
夜中の2時を回った頃・・・
ピーピーピー!!
これはコードがあるという警報なんです。
ERのみんなは耳をすませました!
「コード・・・ER コード・・・ER 」
オペレーターの彼女、眠たいのかしら。声が小さくてよく聞こえませんよ~
しかたがないのでとにかくメインのERにあるコード用のベッドに行ってみると・・・
明日に続けます。
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こちらのERではいろいろなコードがあります。コードがあるたびにオペレーターが全館にアナウンスします。
「Code Blue ER, Code Blue ER 」
という感じ。
もちろん コードブルーが一番有名。
日本でもコードブルーというドラマが流行ったそうですね。
他にどんなものがあるかといえば
Code Red
Code Strong
Code Brain
Code Trauma
Code Delivery
などなど・・・
Code Redは、
火事。病院内で火事が起きたとき全館にアナウンスが・・・そういうときには Confinement というプロトコールに従ってあちこちのドアを閉めまくります。
Code Strongは、患者さんが、もしくはその家族が暴れたときにアナウンスされます。その時にはもちろん力持ちの筋肉マンがかけつけるわけ。ふつうは警備のおにいさんと病院につめているエルパソ警察の警察官が、そしてわたくしも・・・冗談です!
Code Brainは、
脳卒中の患者さんのためのもの。うちはStroke Centerなので脳卒中の症状でみえた患者さんにいち早くCTスキャンを撮って t-PA(tissue plasminogen activator)の治療の候補者かどうかを見極めるのです。神経内科の専門家がTele-Neurology というシステムで治療に参加してくださいます。テレビビデオになっているすごいシステムです!
Code Traumaは、
外傷の患者さんのためのもの。最近ではTrauma STATという言い方に変えてしまいましたが、外傷専門外科医がいち早く レスポンスします!ピストルで撃たれたとか、ナイフで刺されたとかそういうタイプの外傷ですね。うちはレベル2の外傷センターなんですよ。
そして、Code Deliveryですが・・・
明日に続けますね。
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日本の良い子達はもうすぐ夏休みですね!
アメリカでは早々と6月の初めからもう夏休みに入っています。そして8月23日に学校が始まります。
今日はどうも患者さんが続かず暇なのでコーヒーでも飲もうとERのラウンジに行きました。夏の間は患者さんがぐっと減りこういうことにしばしばなります。
ラウンジのテーブルの上には箱一杯のチョコとメモがテーブルにおいてありました。
「子供の学校の寄金を募っ ています」
とメモには書かれてありました。
私は1ドル紙幣と引き換えにチョコを一つつかみました。こうやって募金活動に参加してあげるんですよ。
そういえばこちらの学校はやたらとこういう寄金活動が多いと思います 。
毎年毎年学校のPTAから寄金活動に参加するよう要請されて子供たちはチョコレートやクッキーなどを売らなければなりません。日本のようにご近所との お付き合いが深くないアメリカで近所周りを子供にさせるのは危険なので、親の職場に持ってきて職場の人に寄付をお願いするのはとても賢いやり方だと感心しました。
アメリカの学校は日本に比べると貧乏なのかどうか知りませんが、毎年8月になると新学期の始まる前に学校指定の文房具を買い揃えることになってい ます。ノート、鉛筆、バインダー、クリネックス、はさみ、などなど買い物リストはそれはそれはなが~いもので、子供が何人もいようなものならたまったものではありません。
教科書だって借りるだけで、1年の終わりには返さなければなりませんよ。信じられます?日本は何かにつけて至れり尽くせりだと思いますよ。
チョコレートで思い出しましたが、いつも私は主人が米軍の軍医なので、軍のコミッサリーと言うスーパーで食品の買出しをしますが、毎年秋になると エルパソの米陸軍基地でたくさんの自衛隊員をみかけるようになります。
毎秋ミサイルの演習に日本からエルパソに来られるのが恒例になっているからなんです。
昨秋お買い物 に行った際、自衛隊さんが山のようにチョコレートやクッキーを買いこんでいるのをみかけ、どうするのかと聞くと、隊員たちの夜食だということ。 アメリカのチョコレートやクッキーはまずいのにととても気の毒に思いました。
日本のお菓子はやはり最高です。
日本の子供たちの安全な夏休みと健康を遠くからお祈りしています。
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