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今日は記念すべきカロリンスカ病院への初出勤です。カロリンスカ病院には本院とも言えるSolnaと、少し郊外にあるHuddingeと2つあるのですが、こちらはSolna。
朝8時に教授と面会。
長身のなかなか素敵なPW教授です。奥様は基礎の教授だったのですが、最近別れてしまったとか。
すぐに白衣に着替えて、まずは病棟へ。術後の問題患者さんがいるらしくて、ベッドサイドへ回診。
午前中は教授外来につくことになりました。ポリクリに毛が生えたようなものでしょうか。今日は初日なので、起こったことをつらつらと書いてみますが、一般の方にはわかりにくいかもしれませんね。
8時半から12時まで、15分あるいは30分の間隔で合計11人の患者さんの予約が入っています。その全てが前立腺癌の患者さんです。PW教授は前立腺癌のロボット手術を得意としており、手術日は週3日、一日あたり2-3人のロボット手術をするのだそうです。ヨーロッパでは最大の患者数を誇っています。
ということで、外来の患者さんは、他院で前立腺癌と診断されロボット手術希望で受診する患者さんとロボット手術術後の患者さんでした。
私の少ない経験で知る限り、スウエーデンの病院では、医師が待合室まで足を運び、患者さんを呼びます。そして自己紹介をして握手をします。私も今日は「日本から来た同僚」と各患者さんに紹介されました。
スウエーデンにおける前立腺癌の年間あたりの新患数はおよそ10000人です。男性に発症する癌としては最も高い頻度となり、これは世界的にみても高水準です。診断は直腸または会陰から前立腺に針を刺して組織を採取してすることで行われます。腫瘍の悪性度、進展度、本人の年齢などを考慮して治療方針が決定されます。今日は3人のロボット手術希望の患者さんが受診し、前立腺のサイズなどの情報がなくても広く適応としているような印象でした。
カロリンスカにおけるロボット手術後の経過は、2日目に退院、1週間後にカテーテル抜去(ただしこれはナースがやるようです。)。3ヵ月後にPSAを測定したのち受診。このPSAに異常がなく、かつ合併症もなければ(最小限であれば)更に6ヶ月後に受診。日本に比べるとかなりラフです。ロボット手術の患者さんの92-3%は全く尿失禁を認めず、90%に勃起機能が見られるということで、かなり良い成績です。今日受診した術後3ヶ月の患者さんは、グリソンスコア3+4、pT2で、術前のPSAは4.0ng/ml、3ヶ月後は0.05未満。術後1週間以内でまだカテーテルが挿入された状態で勃起を認めたとのこと。4ヶ月後にPSAに異常がなければ、それで受診は終了なのだそうです。日本では考えられません。CTも骨シンチも術前術後通してなし。MRIなど論外。
数人目、68歳男性。AIKの帽子を被って登場。2年前にロボット手術。グリソンスコアは4+5と悪いにも関わらず、病理ではpT2。しかし、本年2月にPSA0.22、9月に0.41とダブリングタイム約半年で上昇開始。もともと病理が悪いので、内分泌治療をいつから始めるかを相談。治療の内容、副作用などを説明して、患者さんとしては次の半年後の受診まで待ちたいということでした。因みに彼はバイアグラ100mg内服中。さすがに体の大きなスウエーデン人は違います。
次は娘が医者だという70代の男性。排尿時痛と頻尿を訴えています。最近PSAが上昇傾向にあるので、以前も内服していたEulexin(Flutamid)を500mg 2xで内服再開という話になりました。かなりものわかりの悪いおじさんで、いろいろな薬をそこらじゅうに並べて、関係のないことを言っている。前のEulexinを指差して、「これは古いから駄目でしょ。」と言うのに対し教授は「大丈夫だからそれを飲みなさい。」とかなり不機嫌。医者に嫌われる患者さんってどこにでもいるんですね。結局、膀胱鏡をしたら外尿道口狭窄があって、メスで切開して終了。
次は、なんとリトアニアからの受診。ストックホルム在住というお嬢さんが通訳として同伴。英語、リトアニア語、スウエーデン語が飛び交う。68歳、PSAは4点台、生検で8本中1本にグリソンスコア2+2の癌。直腸診では、左葉のごく一部が硬い感じ。カロリンスカの病理で病理診断をやりなおした結果、待機療法かロボット手術ということになった。ロボット手術の待ち時間はおよそ2ヶ月。
術後半年で通常の受診はウプサラでしているという患者さん。ウプサラでのPSAは異常なし。EDに対してはCavajectを使用しているが、10mgでは不十分なので20mgに増量。ウプサラとストックホルムは自治体が異なるので、やりとりが面倒だということでした。
PW教授のロボット手術の症例の中で最悪な合併症を持つ患者さん受診。奥さんを伴って入室。「2つの耳より4つの耳だからね!」と説明している。術後6ヶ月。ほぼ全失禁。オペ記録を見ると、出血多く、感染があり、、「こういうのは悪いんだよね。」という解説。幸いPSAは0.05未満。6ヶ月後にこの状態であれば、多少改善しても完全に良くなることはないからということで、失禁専門の先生を受診することとなった。
本日の初診でT1cで紹介された患者さん。やはりロボット手術希望。教授が席を外した隙に、「彼は上手なの?」と聞いてきた。私は、「私は日本から来たのだけれど、ヨーロッパではナンバー1で日本でも有名でしたよ。」と言ってあげたら、「何て幸運なんだろう!」と喜んでいました。
前立腺癌の手術後の合併症を尋ねる際に、必ず、potens(勃起機能)と、incontinece(尿失禁)について聞きます。「排尿はどーう?」というのに、「vattenkast」という言葉を使っていて、、直訳すると、「水を投げる」ことになるんですよね。どうして???
こんな具合の外来でしたが、日本と違うことも数多く、、。
教授外来といえば日本では一人付き添いの医師がつくのは珍しいことではありません。それに、医師がいなくても看護師さんは必ずつきます。それが、ここではひとりぼっち。でも、1人あたり最低15分は時間が割かれているので、ある程度ゆったりしています。診察室には診察台と手洗いの台、コンピュータのおかれた机があるだけです。カルテは全て電子カルテ、しかも、診察後にdictatorで音声を記録(経過、検査結果、治療、今後の予定など)し、あとで秘書さんが打ち込むシステムになっています。その際、プライオリテイーが3段階で付けられます。これはすごいと思いました。そして、処方箋はe-receptと呼ばれ全てオンラインです。医師がコンピューターで処方をすると、患者さんはどの薬局に行っても身分証明書を提示すればパーソナルナンバーで処方薬を購入することができるのです。これもすごい。それなのに、医療コストの計算には伝票が使われ、診察後医師がチェックしなければならないのです。
患者さんの診察については、、検査は最小限で、日本の大学病院での医療に慣れている私には、全くなじめない感覚です。医療経済上は効率よいのでしょうけれど、、。臨床上では両者は両極端のような気がします。日本は検査をやりすぎだし。以前にも書きましたが、私が3月まで勤めていた大学の教授は3時間で80人は診察します。今日は3時間で結局10人。ものすごい差ですね、、、。
今日は慣れないスウエーデン語での初めての職場、必要以上に疲れてしまいました。でもとりあえず会話はかなり理解できたし、まずまずのスタートと自己満足にひたることにします。これから大変な毎日が待っているはずなのですが、あまり考えたくありません、、、。
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