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医学も学んだバリトン歌手、しかもハイバリトンでリリコの性質・・・とまで聞いたら、ほとんど同じわたしとしては(思い上がり)聴かずにはいられようか。

いつも通常のピアノ伴奏をしてくれている村上さんが紹介してくれたゲルハーヘルのコンサート。実はこれを知る前から秋の浅田豊さんとのシューベルティアーデコンサートでの曲目として「白鳥の歌」のハイネの詩による6曲他20曲ほどを予定しているが、このコンサートで歌われる曲のはんぶんほどが私も歌う予定の曲だったこともあり、Netでどういう人か調べてみた。
 それではじめて冒頭のことを知ったわけだが、早速しらかわホールに連絡し、ほぼ会場真ん中の席を取ることにした。そのまえに、・・・この日は火曜日、当然ながら当院診療日で、6:45開演には間に合わない、この日内分泌外来できてくれている中山先生に代診を頼んだら快諾!!もちろん予約は5時までに押さえ、5時に出掛けることに。
 久久に行くまともなコンサート。18時開場時間にちょうど着き、(運良く目の前のPが空いていた)、事前にCDを買い(3大歌曲がそれぞれ1000円は安すぎる)開演を待つ。開演時にはほぼ9割以上の満席。間に20分の休憩を含み20時半には終演という、やや短いコンサートではあった。(わたしのコンサートが長すぎるかも知れない)
 最初にレルシュタープの詩による白鳥の歌前半、休憩をはさんで、小曲2曲の後、ハイネによる6曲、そして「鳩の使い」。アンコールはAbentrotこれは私も1昨年歌った曲だった。
 休憩時間と終わりがけには以前名古屋でいろんな宗教曲などで一緒に歌わせてもらった声楽家のK(テナー)さんやM(メゾ)さん、旧知のS(ソプラノ)さんにもお会いしうれしかった。また卒後研修し、すでになくなっている名古屋栄セントラル病院の当時の院長先生にもお会いした。
 さて・・・演奏の感想・・・7色の声を駆使し、破綻がない、非常にうまい演奏。ハイバリトンと言うより普通の音域に聞こえた・・・私が超ハイバリトンなのかもしれないが私よりはかなり低めのバリトン寄りの声。あまりリリコと言う感じはなかった。随所に師匠のディースカウを思わせる音色や表現があった。しかし、しばらく聴いていく内に少し違和感が、・・・メロディーが聞こえてこない、言葉や音色濃厚に表現しているために、かえってメロディーが何度も途中で止まる(非常に器用にレーズごとに声色を換えるのがかえって落ち着かない)。ピアニストも同様、スタインウエイだが、なぜか高音の輝きや精神性が伝わってこず、また歌手と息を合わせて弾く姿がオーバーアクションで気になる、ダイナミックもあるしルバートは上手、見事に歌と合っているが、これもあの気にいっている綺麗なはずのピアノの音が・・・聞こえてこない。シューベルトの音楽はこんなだったか?と頭の中を疑問符が浮かんだ。
 医師でもある歌手と言うので期待したが、そのことが十分に音楽には反映されていないのかも知れない。いや、そんなことではなく、もっと別のところで、シューベルトとの共感の仕方が違うのかも知れないと思うのだった。日本人とドイツ人の感じ方の違いもあるだろう。日本人だからか、私は過度の言葉の強調や音量の違いで表現する、いわば古いリートの歌い方には抵抗がある。全集ともなると、レコード時代からディースカウばかり聴いていたが、最近出たハイペリオン全集の歌手の歌の方がずっとしっくり来る曲もまれならずあった。ピアノもグレアムジョンソンの自然さが好ましい。シューベルトはその音楽で詩をその存在以上に高めている。詩を大切にするのは当然で、私は自国語でない以上常に勉強不足で本当に苦労しているが、それを強調しすぎるところには、シューベルトは遠くなってしまう気もする。私ができているわけでなく、聴衆としての感想である。ゲーテが決してシューベルトの歌を評価しなかったと言うのは示唆的だ。全くの私見だが、おそらくは自分の詩を全く別の次元にし(高め)てしまったのを、ゲーテの自尊心が許さなかったのではないかと思う。今回のコンサートのやや過剰な表現のシューベルトは、ひょっとしたらゲーテが聴いたら評価したかも知れない。しかし今回のシューベルトの歌を聴いたときの感覚(一種の喪失感)は、ほかのシューベルト好きの聴衆には感じられなかっただろうか?

私自身の目指したいシューベルトの音楽像、声に関して考えさせられ、非常にいい経験であった。また会場で買ったCDはむしろややおさえ気味の表現で好ましかった。実際のコンサートでは吟味して録音したCDとは違いもあったようだ。ゲルハーヘルのCDのシューベルト4枚、もっとじっくり聞いてみたい。

私は私で、自分の歌をもっと磨かなくては。私の感じるシューベルトをしっかり表現できる力をつけたい。

 

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