内科医として、「シューベルト歌い」として
〜クリニック開業と本格歌手活動開始〜 あげつまクリニック 院長 揚妻広隆
私は、トヨタ記念病院循環器科に約15年間勤務させていただき、2005年2月15日から豊田市今町にてあげつまクリニック(内科・循環器科)を開業させていただきました。
クリニックの特徴ですが、トヨタ記念病院で循環器科部長をさせていただきながら病院電子化の医師の中心メンバーとして電子カルテ導入・地域医療連携システムの充実などを担当させて頂きました経験を生かし、当院でも診療所向け電子カルテを導入、尿検査、心電図・肺機能などの生理検査、XP(CR)・心エコーなどのDICOMの画像参照システムなどと連携し、ペーパーレス、フイルムレスの運用を行っています。ホルター心電図は最新の小型2台を含め3台導入し、自院で解析いたしておりますので、迅速な対応が可能です。ぜひご利用ください。また待ち時間対策として、プラズマディスプレイによる待ち時間案内も導入しています。
こうした面では現代的なシステムになっていますが、クリニック建築は有機的な建築を取り入れ、木をふんだんに使ったり、トルマリンの粉を混ぜた珪藻土を壁に用いたり、自然素材の床を使うことで、できるだけ安らいで頂ける様に配慮しています。また診療内容に於いても患者さまを単なる肉体の病気としてとらえず、肉体、精神の両面から見つめていこうと考え、『共感・納得・安心の医療』をモットーとして、職員一丸となって患者さまに接しております。ドイツの思想家であるシュタイナーに端を発した統合医学の一つであるアントロポゾフィー医学(人智学医学)が診療理念の核になりうると考え、私自身の医師として患者さまに対する姿勢のよりどころにしたいとも思い、3年前から始まったGWの7日間、長野飯綱高原にて行われる泊り込みの研修(アントロポゾフィー国際医学ゼミナール)への参加を続けております。あと2年、合計5年間の研修参加と指導教官について症例報告を行うことにより、この医学の国際免許が取得出来るのですが、それを目標にがんばっております。当院では、すでに芸術療法の一つ、オイリュトミー療法を実施しております。療法士は2名の海外での資格を持った先生と1名の資格取得の為に研修されている先生、合わせて3名にお越しいただいております。
クリニックは2階建てになっており、2階はカンファレンスや芸術療法を行う小さな会議室(環の部屋)と、大人数の芸術療法や講演会の為のやや大きな会議室(星の部屋)があり、2階全体の愛称を「フォーラム宙(Sora)」と名付けました。星の部屋では「あげつまクリニックオープンフォーラム」と銘打って、クリニック主催の芸術療法をテーマとした講演会を開催しました。昨年8月の第一回は、オランダの絵画療法士の講演会に60名余りの参加をいただきました。本年3月には第二回(オイリュトミー療法)を開催、9月には第三回(音楽療法)を行う予定です。星の部屋には友人に貸していただいたグランドピアノが置いてあり、オープンフォーラムでは、ティータイムを挟んで私の歌(日本の歌、武満徹の歌、シューベルトを組み合わせた聞き慣れた歌)のコンサートも行い、ゆったりとした時間を過ごして頂いています。
私のライフワークはシューベルトの歌を歌うことです。高校・大学時代の合唱団の指揮者経験をへて、大学時代から各地のコンサートに出演。13年ほど前から本格的な音楽活動を行い、年に3−4回のコンサート出演(主に合唱団の宗教曲のソリスト)を行ってきました。高校時代に「30歳までに『冬の旅』全曲演奏会をおこなう」というのが夢でした。残念ながら15年以上オーバしてしまいましたが、昨年から念願のシューベルト演奏会「シューベルティアーデ」を、スイス在住でピアニスト/オイリュトミー療法士である浅田豊さんと始めました。浅田さんはアントロポゾフィー国際医学ゼミナールに通訳として、ピアニストとしていらっしゃっており、私はゼミ参加者として出会いました。今年参加3年目となるこの統合医学ゼミナールは、GW1週間ぶっ続けで行われますが、毎夜一日の終わりの歌(もちろんシューベルト!)を浅田さんのピアノで歌い締めくくりました。
昨年10月には、横浜シュタイナー学園と当院「星の部屋」にて2回のシューベルティアーデを行い、多くの方々にお越しいただきました。曲目は、楽に寄せて、野ばら、リタナイ、アヴェマリアを含めた16曲余りとピアノ曲です。これを機会に録音システムも充実し、コンサートのライブCDを作成いたしました。(ご希望の方は制作実費等で有料になりますのと、受注生産になりお時間をいただきますが、お分けできますのであげつまクリニックまでお問合わせください)本年も11月末から12月に3回のシューベルティアーデを横浜(11/25)、当院(12/3)、そして池袋明日館(12/8夜)にて行う予定です。曲は「冬の旅」から数曲、単品数曲、浅田さんのピアノ曲、そしてメインにノヴァーリスの詩につけた6曲を予定しています。
歌を歌うことは、私の人間性の一部であり、医師としての私とも切っても切れないものです。歌を歌っているとき、私の魂は解放されます。そしてその歌に感動した自分の魂が、歌声にその気持ちを込めて響かせ、聴いていただく方の心に響いたとき、音楽の感動がおこるのではないでしょうか。シューベルトの歌は、バッハやモーツアルトより、より大衆的と思われている面がありますが、人の心の豊かな動きをその元の詩をはるかに超えた歌にしてしまったシューベルト。その歌は、どれも歌うほどに奥深く、感動します。「冬の旅」もすばらしいですが今年歌いますノヴァーリスは詩自体が既に、敬虔な気品をもち、すばらしいのですが、それに触発されたか他のシューベルト曲にない特別な魅力を持った歌うたです。
開業させていただいて幸せに思えるのは、こうした音楽活動が趣味としてではなく私の仕事、人生の一部として位置づけて活動していけることです。この空間を私(の歌)と共有していただければ幸せです。どうぞ、医師会の皆様もぜひ、お越しいただくことをお待ちいたしております。
9/24(日)第三回あげつまクリニックオープンフォーラム
『音楽療法講演会』とライアーコンサート(あげつまクリニック)
11/25(土)シューベルティアーデ2006 in 横浜 (横浜・綱島、アウディオペーデ)
12/3(日)シューベルティアーデ2006 in Forum Sora (あげつまクリニック)
12/8(金)アトリエルピナス コンサート (東京・池袋、明日館)(変更可能性あり)
12/28(木)ライアーによるクリスマスコンサート(あげつまクリニック)
2006年8月6日日曜日
今年もヒロシマの日が訪れた。私たち戦後の団塊の世代のさらに後の世代にとって、戦争は風化していると考えられる向きもあろうが、私の中高校時代は平和に対する自然な希求の気持ちがあった。教育の環境?まだまともだったジャーナリズムの影響?よくは分からないが、戦争を体験しているはずの今の政治家の世代が平和を踏みにじろうとする言動を繰り返していることを考えると.実際の体験のみが大切なのではないと思う。ヒロシマの語り部のように実際に体験したことを、後世に伝える為に勇気をふるい語る姿は尊い。戦争の時代に惨い思い、つらく悲しい思いを受けた人たちの体験談を聴いたり本を読む際に、いかに想像力を働かせて共感できるか、それが大切だと思われる。
想像力は、身近な家族、友人から始まり、隣国の人々の思いにも働かせなくてはならない。靖国問題は国内問題だから国外から文句を言うなという理論は非常に危険で、かつ貧困だ。そして隣国からの訴えに対する無関心な反応は、今まで見たこともない反応で、心が寒くなる。現首相はこうした対応を先の衆議院選挙前にも行い、反対勢力は大粛正された。周りの人々への無関心、自分の考えを認めないものへの冷たい対応、これらは平和を求める心とは反するものだ。
大学時代、私が指揮した年の定期演奏会では、ヒロシマの原爆を扱った合唱曲、『炎の歌』を演奏した。今日久しぶりにヒロシマの黙祷の画面を映しながら、コンサートのレコードを聴いた。決して上手ではない演奏だが、心に響いた。医療を一緒に行っていく仲間が、人の命を大切にするという考えから、2年前には障害者の共同作業所の問題、前の年には教育問題を取り上げ(この年は私が創作委員長)、いずれも創作曲を作り演奏した。そして3年目、平和を取り上げ炎の歌を演奏。戦争、原爆投下が人の命、生活にどれほどの消せない傷を負わせるか。学生運動が下火になった後で大学生になった世代の私たちでも、平和への思いにおいてはまったく食い違うことはなかった。なぜ現在、こうした思いが日本人の間で共有できないのか。
炎の歌の『花』を聴く。ヒロシマの原爆慰霊碑には『安らかに眠ってください、過ちは二度といたしませんから』という意味の言葉が刻まれている。この歌では、過ちは繰り返さない、その為に、日本の国民を戦争に導き、また導こうとしている人々に今の日本をゆだねることは出来ない、だから、死んだお母さんに、安らかに『眠らないでください』と訴える。その怒りの強さと、祈りの深さ、そして平和への思いの強さに、改めて感動した。
私たちの子供たちに、日本の平和を今後も引き継いでいく責任が我々親世代にはある。現在、世界の各地で戦争が起こり、決して平和な世界ではなく、そうした世界の戦争や犠牲の上に成り立っているにしても、この日本で半世紀以上戦争に巻き込まれない日本を維持できたのは、平和憲法によるところが大きい。すでに、『君が代』を式典で歌わない(立たない)教師は処分されるのが当然となり、教育基本法においても『愛国心』を強要され、教育の場で子供の心のうちまで評価され、言論の上では自由のない時代に入ろうとしている。そして、世界の平和を求める人々の希望になっている平和憲法まで変えられようとしているいま、私たちに何が出来るだろう。
武満徹の『死んだ男の残したものは』、歌い続けていきたい。そして、人の心への共感をいっそう大切にしていこうと思う。
ヒロシマの犠牲者の方々、その家族の方々に、合掌。
2006年8月6日日曜日
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