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2006.12.14 23:35 |  診療  |  研究  |  その他(医療関連)  |  夕霧  | 推薦数 : 0

ベッテルハイムを批判しなければ

また更新が滞ってしまった。
まあ、色々なことがいつものように生じていて、なかなか目まぐるしい。
ちょっと必要があって、ベッテルハイムの本を読んでいるのだけど、彼は沢山本を書いているし、僕の勤務する大学には以前ベッテルハイムのファンの先生がいたらしく、ほとんどの著作が図書館にあった。
な んでベッテルハイムを今頃読み直しているかというと、ベッテルハイムについてある出版物に記述することを依頼されたからなんだけど、もちろん僕はベッテル ハイムの信奉者ではなく、アンチ・ベッテルハイムだけど、そういう人に依頼がくることをある意味面白いと思ったからだ。
もう一つの大きな理由は 「本当のTEACCH」(学研)に記載されている、故ショプラー先生にインタビューしたときに、ベッテルハイムに関して多くの時間を割いて説明してくれ た。早稲田のカンファに来日されたときも、ベッテルハイムの批判にかなりの時間を割いて説明された。なんだが、少し違和感を持ったのですね。何故なら、 ベッテルハイムというのは僕の世代の児童精神科医、特に発達障害を専門にする児童精神科医にとっては、完全に過去の人で、今頃、問題にすることもないよう な気もしたのです。
ショプラー先生はシカゴ大学でベッテルハイムに一時師事され、その後袂をわかってTEACCHを創立された。当時(1950年 代から60年代)はベッテルハイムの全盛期ではあったでしょうが、その後70年代以降の自閉症研究の流れのなかでベッテルハイムの自閉症観は完全に否定さ れた(ようにみえた)。
どうしてショプラー先生が、21世紀になってもベッテルハイム否定に、ある種の情熱をかけられたかのか、ヒントを知りたいと思ったこともあってベッテルハイムの著作を読んでいるわけです。
とりあえず、今まで本があるのは知っていたけど読んでなかった「フロイトのウィーン」
[原書名:FREUD'S VIENNA AND OTHER ESSAYS〈Bettelheim, Bruno〉みすず書房 (1992)
森泉弘次訳)を読んでみました。それから、有名な「うつろな砦」なんかも目を通しなおした。
色 々なことが浮かんできました。ショプラー先生にインタビューしたとき、TEACCHの基本理念の話を情熱をこめてされ、「理論より現実の子どもの観察から 出発する」という理念の「理論」とは「フロイトの理論」とうことを説明されていました。「フロイトのウィーン」ではベッテルハイムが教育分析(精神分析家 になるために自分自身が分析家から教育を受けること)を受けているクリニックの待合室で初めて自閉症(らしき)子どもに出会って、その子どもとの「会話」 に衝撃をうけたことが子どもに関心をもったキッカケらしきこと(この「会話」はいかにもといった「深読み」にしか見えないけど)、ユダヤ人だった彼は強制 収用所で過酷な扱いを受けるのだけど、自閉症の親のアメリカ人の手配(らしい)で収容所から開放され、アメリカ亡命をし、シカゴ大学にわたり、そこで自閉 症(らしき)の子どもの大学付属の養護学校をつくり校長になる。若き日のショプラー先生は、このシカゴ大学でベッテルハイムに出会い、そして袂をわかち、 ベッテルハイム批判の急先鋒になるわけだ。ベッテルハイムは自説が否定される時代になっても「フロイトの理論」を援用して自閉症の「治療」をし、最後には 自殺してしまった。
僕は割りに歴史好きで、色々マニアックな興味が出てきて、ついつい古い本を読んでしまうんですが、わずか数百字の依頼原稿のために、何冊も古い本を読んだりするのは効率が悪いですね。
ベッテルハイムは色々な意味で興味深いし、母語がドイツ語の人が(カナー、アスペルガー、ベッテルハイム、ショプラー)自閉症の歴史を作ったということも、かなり興味深いです。アスペルガー以外はユダヤ系でアメリカに移住することで活躍した人たちです。
ド イツ語圏に残ってドイツ語で論文を書いたのはユダヤ人でなかったアスペルガーだけで、彼が注目されるためにはウイングの81年論文を待たねばならなかった し、カナーもベッテルハイムも何故か読んでいたに違いないアスペルガーの論文を引用したことは(多分)ないということも色々と考えさせられることです。 ショプラー先生は95年に留学していたときに話をする機会を作ってくれたのだけど、そこで「アスペルガーの原著をどう思うか?」と聞いたときに「もちろん ドイツ語で読んだけど・・・・」と仰って、あまり重視されてなかったようでした。

このあたりの話は「TEACCHの今」http://www.ypdc.net/study/seminar/sp_070321.html
でも話ましょうかね。
長くなったので、続きはまた。

 

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