日本語が第一語で英語が第二語の方は、脳出血や交通事故による脳障害が起こると、片方の言葉を忘れたり、書けなくなったり、しゃべれなくなります。これは、二つの言語が脳の中で違う神経回路で処理されているからです。これから 二つの症例を紹介します。
ケース1.
18才の男性高校生が、オートバイでゴミ収集トラック に激突。頭蓋骨骨折と左脳内出血で緊急手術で命は助かった。でも3ヶ月は意識無しでその後目覚める。失語症と右側の運動障害。英語は読み書きや話す事に問題なし。日本語が書けなくなり漢字をすべて忘れる。帰国子女枠で日本の大学受険を10校にするが、小論文をすべてひらがなで書き提出したのが原因で不合格。アメリカの大学に進学そして卒業。
ケース2.
59才男性で40年アメリカ在住で日本の大手家電メーカーで働くが2009年にリストラで失業。健康保険なし。1ヶ月前に突然たおれて、救急車で近くの病院に。CTで左脳内出血(高血圧による)がみられ、緊急手術。軽い 右側の麻痺と失語症。日本語がたどたどしく会話途中で英語にかわる。英語の理解と会話は問題無し。日本語も回復中。
以上が私の見た患者さんのケーススタデイです。これらによってバイリンガルの人が 違う神経回路で二つの言語を処理することが、私もわかりました。下記に川崎病院の國塩先生の記事をコピーしました。
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言語障害(失語症)
脳神経外科 部長 國塩勝三(川崎病院)
ある朝、突然言葉がうまくしゃべれなくなり、家族からは呂律が回っていないと指摘されて外来に歩いて来られるような患者さんも時々おられます。初対面の診察時には、呂律が回っていないといわれても高齢者であれば多少はありうるだろうと思いつつ、CTやMRI検査を行うこともあります。意外に、そのような場合(構音障害)でも小さな脳梗塞などが診断されることがあります。
また、言葉がうまく出ない、言っていることがわからない、さらには字が書けないなどのいわゆる失語症で発症する脳卒中もあります。その多くは、他の神経症状として右片麻痺や右半身の感覚障害がみられ、その随伴症状として言語障害がみられます。
それは、右利きの人のほとんど、また左利きの人では7割程度が、左大脳半球に言語の働きを司る領域(言語中枢)があるからです。左半球の障害では、解剖学的に神経線維が脳幹の延髄で交叉しているため、対側である右側の運動障害をおこします。
失語症もいろいろです。なかでも、話すことが障害されたものを「ブローカ失語」(運動性失語)といい、大脳の左前頭葉の「ブローカ野」と呼ばれる運動性言語中枢の障害によりおこるといわれています。滑らかに話せるものの言い誤りが多く、聞いて理解することも難しいものを「ウェルニッケ失語」(感覚性失語)といいます。これは、左側頭葉の「ウェルニッケ中枢」と呼ばれる感覚性言語中枢が障害されるために起きます。
さらに、左大脳半球の広範な障害では、言語理解ができなくなり、言葉をほとんど発することができない「全失語」といわれる状態となります。一般の方は、失語症といってもピンとこないでしょうが、例えば我々がいきなりまったく言葉がわからない異国の地で生活するような状況に置かれたようなものでしょうか? 日本語が全く別の言語になってしまい周囲とコミュニケーションが取れなくなる訳ですから、それによる精神的影響は大きいと思われます。
興味深い珍しい失語症例を紹介いたします。患者Kさんは幼いころ中国から日本に移住し、以後は日本語中心の生活で、その後日本女性と結婚し子供とともに日本で生活していました。ある日、Kさんは脳卒中を発症して、50年来しゃべっていた日本語が全くしゃべれなくなりました。
家族もおかしなことを言い出したということで、何を言っているのか理解できないようでした。入院中に中国人留学生に一緒にきてもらったところ中国語をちゃんと話しているとのことでした。家族は日本人であり、中国語ができないということが今後の問題ではあります。ということより、バイリンガルの方が結婚される場合は、将来的にパートナーも両方の言語が理解できるのが好ましいということになります。
このようにバイリンガルの方の失語症には、一方の言語だけが障害され、他方の言葉は保たれるという非常に興味深い現象がみられます。多くは第2言語が失われますが、その逆のケースもあるようです。バイリンガルでは母国語と第2言語は、脳内で異なった神経回路で処理がなされているのです。
突然、言語障害が起こった場合、脳梗塞などの脳卒中による可能性が高いため、早期の治療が重要です。
脳梗塞であれば発症3時間以内にtPAの薬を投与できれば回復率も高いので早急に病院にかかるようにしてください。その場合、検査なども必要ですから大体2時間以内に病院にかからないと間に合いません。翌朝までは待てません。
失語症は、脳出血や脳梗塞などの脳卒中によるもののみならず頭部外傷による脳挫傷や脳腫瘍によってもおこります。言語障害のみならず高次機能障害も一緒におこっていることも多いようです。
脳腫瘍において、特に神経膠腫といわれるもので言語野近傍に発生した腫瘍の手術では、術後失語症を合併させないようにするため、覚醒のまま手術を行う方法(覚醒下開頭術)が最近行われています。開頭時に話をしてもらいながら露出した脳を電気刺激することによって言語領域を確認し、その領域を避けて腫瘍を摘出します。言語領域は個体差が大きく教科書通りではないためこのような確認が必要なのです。
失語症自体は手術では治せません。言語療法といわれるリハビリ治療になります。リハビリ科医および言語聴覚士という専門職がコミュニケーションに障害をもつ患者さんの機能の獲得・回復・維持を長期に支援していくことになります。
(岡山日日新聞 平成21年8月31日(月)掲載)
コメント
コメント一覧
でも、バイリンガル同士でも、仲良く同じ脳がやられるとは限らないし。
女の子が右脳にEngish左脳にJapanese
男の子も右脳にEngish左脳にJapanese
女の子が右脳をやられて、次に男の子が左脳がやられたら。。。やっぱり「赤の他人」になってしまうかしらん。
*** By おめめで会話・ゆめみ ***
あ。そだ。
キッスで会話という手が残されているわ。
そうですね。言葉が通じなくても最後はスキンシップやキスですね。でも何十年も覚えた言葉をあっというまに、無くしてしまう。ほんとうに怖いです。
>女の子が右脳をやられて、次に男の子が左脳がやられたら。。。やっぱり「赤の他人」になってしまうかしらん。
言葉は忘れても、恋人や家族は分かるみたいです。だだ自分の思っていることが、言葉で表現できないみたいです。ではまた。
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