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2008.07.31 17:09 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  海外留学  |  仕事 / 職場  |  DAICHAN  | 推薦数 : 2

がん患者への告知の難しさ。

 高田さん(仮名)は、40歳半ばの アメリカにある日本の現地企業の副社長でもうすぐ帰国されて、あるプロジェクトリダーになる予定だった。ヨセミテ国立公園に帰国前にハイキングに家族と最後のアメリカでの休暇後、高熱、咳と息切れに悩まれて、私の診療所にこられた。家族皆の主治医としてこの数年お世話をしていた。バリバリのやり手でその会社の仕事を毎日夜遅くまで身を粉にしてこなされていた。奥さまは、小学生のお兄ちゃんと妹の送り迎えをまるでシングルマザーのようにされていた。

 抗生剤と気管支拡張剤を使い、急性気管支炎、肺炎として治療をしたが、いつまでも顔色が悪く何かおかしい。胸部Xレイを撮ってみると、何か不明な影が、気管支を取り囲んでいる。CTを造影剤を使いとってみる。7cm X 9cmの大きな腫瘍がある。ガンでない事を望みながら、友人の呼吸器内科の医師に頼み、精密検査を依頼する。ニードルバイオプシー(針による生検)をするとその結果は、残念ながら、悪性腫瘍のスモールセルタイプの肺がん。すでに、肺動脈、肺静脈の両方を圧迫している。ほっておけば2−3ヶ月しかもたない。放射線治療はあまり効果はない。出来るだけはやく、治療しないといけない。化学治療を抗がん剤で始めないと。

 そのことを家族をよび、子供たちに待合室でテレビをみてもらい、本人と奥様に診察室に。「たいへん残念ですが、肺がんです。出来るだけ早く治療を受けてください。」と私が言うと、奥様が急に泣きながら、「もっと早くタバコをやめてもらっていたら。ーー」それ以上何も言われない。

 「希望を捨てず、治療をしましょう、子供さんのためにも。」と私は励ました。会社と相談して、日本で治療する事に。彼の実家は、関東で私の知りあいの医師はいない。不幸中の幸いに、彼の大学の体育会先輩が、慶応医学部の病理学の教授だという。私は、早速連絡してみるが、いつもすれ違いだった。秘書の方が、気を使ってくださり、「教授のほうから電話してもらいます。」私の携帯の番号を教えた。

 慶応義塾大学医学部病理学科教授のS先生から電話がかかってきたのは、朝の6時。今までの経過を説明した。ロスの町医者の私のようなものに、先生は心良く言われた。「わかりました。早速入院してもらい、治療をしてもらいましょう。大切な後輩ですから。」力強い味方ができた。これでまかせられると私は思った。

 

 子供たちの最後の言葉の「今までいろいろとありがとうございました。」が今でも忘れられない。まだ子供たちは知らない。がんの告知は主治医の私にも辛い。今は、1日でも長く生きてもらい子供たちと有意義な時間をすごしてもらいたい。手術は出来ないので、完治の可能性は少ない。たぶん五年の生存率は5%。奇跡が起こる事を願っている。

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コメント

コメント一覧

奇跡
起こるから存在するんですよね、この言葉。
私も祈っています。
先生
告知という辛いお仕事ご苦労さまでした。
written by ぐー / 2008.07.31 23:08
ぐーさん
わたしも奇跡が起きることを願っています。がんの告知は、いつも辛いです。 ではまた。
written by DAICHAN / 2008.08.02 06:21
こんにちは。
告知は、患者さんや家族にが一番つらいのだけど、伝える、その爆風をうける、医療者にとっても、なかなか応えることですよね。ゆっくり休んでくださいね。お疲れさまでした。
written by green leaves / 2008.08.03 13:16
green leaves先生
先生の記事を見ました。専門医でも、泣かれる事があるのですね。もっと、クールに患者さんを専門医は、診られるのかと思っていました。私のユダヤ系のガン専門医が、いつも患者さんと距離を置き、クールに見えるものですから。人それぞれですね。先生もお体に気をつけて、治療にあたってください。もし、私でお役に立つ事ができるなら、いつでも、先生の患者さんの協力をします。ではまた。
written by DAICHAN / 2008.08.04 23:44

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